2025.11.09

出石へ弾丸小旅行

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金丸座(香川・現存する日本最古の芝居小屋)には
「金比羅歌舞伎」を見に、「八千代座」(熊本・国の重要
文化財)も随分昔に萬斎さんの狂言公演を見に伺い
ましたが、近畿圏最古の芝居小屋で、金比羅歌舞伎
同様、短期間ながら松竹が歌舞伎公演を打っている
出石(兵庫県豊岡市) の永楽館にも、せっかくなら一度は
歌舞伎を見たいとは思いつつ、果たせてませんでした。
何より、兵庫県内と言ってもなかなか遠いし、金丸座
同様、風情のある分、平場席は枡の座布団席で長時間の
正座は難儀そうで、公演チケットに手を出しかね、
また見学だけと言っても夏は暑そうだし、冬は寒そう
だし(笑)

ところが、映画「国宝」の大ヒットで、思わぬ影響が。
ロケ地の一つとして映画冒頭の「二人藤娘」などが撮影
された縁で、元々公演時以外で行われていた施設見学を
バージョンアップ。
撮影で使用された小道具などを部屋の設えごと再現、
さらに最近は羽織れる着物と、小道具の藤の花(枝)が
舞台袖に置かれて、自由に使っての「なりきり記念撮影」も
できるようにと、今ならではな楽しみ方もできる企画に
なって、ファンを中心に「聖地巡礼」で盛り上がって
いると言うニュース。
折角見学するなら、「国宝」展示をしているうち間の
方が(なりきり藤娘は勿論やる気はなかったですが)
楽しそうですし、「巡礼」に便乗すべし、と、突発
「秋の北兵庫弾丸ツアー」を敢行してきました(笑)

豊岡までは京都から所要約2時間くらいですが、
肝心の出石へはそこから更に路線バスで30分。
天気は予報通り、京都駅での曇りが途中から雨になり、
豊岡で降りると本降りに。
バスは市街地を抜けるまでは普通のコミュニティ
バスでしたが、バイパスっぽい信号の少ない道に
入ると、ガンガン飛ばして、出石バス停には定時に
到着。
(630円。因みに今時珍しい、ICカード非対応。出石の
バス待合室に数個だけ現金式コインロッカーあり)

現地は天気雨のような感じで、天橋立のような景勝地
観光だと残念、ですが、こちらは建物の中を拝見
するのが目的なので、寧ろ涼しくて(行った時は盛大に
残暑でした)助かりました
初めての場所はいくら地図を見ても距離感が掴め
ないのでよくわからないのですが、出石城(有子城)の
麓に慎ましく開けた城下町は、思っていたよりさらに
小さめで、私のように観光地は原則徒歩、の人間には
丁度良いサイズ感。

城跡の前の大きな駐車場は、近畿各地を中心に各地
からの車がたくさん並んでいて、回りには「出石そば」を
売りにするお店が何軒もありましたし、ほかにも
蕎麦関係の飲食店や、お土産物店が集まって賑わって
いましたので、出石に来る方たちの多くは「自家用車」で
「グループ」で「有名な出石そばのご賞味」がメイン、
永楽館見学は+αのようでした。
私のような永楽館「だけ」を目当ては多分少数派、
でした。

目的地の永楽館は、バス停からも駐車場からも程近い
場所。
劇場前には、映画の中に登場した役者、一座名での
幟が翻り、気分は映画の世界へ(笑)
入口すぐに映画の巨大ポスターやサイン色紙、原作本。
右手には終わったばかりだった今年の永楽館歌舞伎の
「憚乍(はばかりながら)口上」と着到番もありました。

場内は客席や通路は勿論、舞台や花道の上に上がるのも
可、また舞台の脇や裏側にある、化粧部屋や風呂、
更に「国宝」で使われた小道具を中心に、楽屋が再現
されていましたし、舞台下・奈落にある、回り舞台を
回す仕組みも見られました。
個人的に密かに楽しみにしていたのが、やはり歌舞伎
劇場ならではの花道
すっぽんのある七三あたりに立って、役者気分で
舞台や揚げ幕を見込んだり、気もちだけ見得を切って
みました(笑)
客席構造は金丸座と同じで、一階は平場の枡の座蒲団
席、二階は二三列、木製ベンチに座蒲団の置かれた
椅子席。
舞台の近くに座って、役者の汗や息づかいを生で
感じるのも醍醐味ですが、観るなら2階席が楽そう
(そもそも広くないので2階でも全然近い)

劇場なのに、建物自体も仕掛けを楽しめるアトラク
ションでしたし(笑)、映画のシーンを思い出しながら
妄想もできて、劇場だけで1時間余り、ずいぶん楽しま
せて頂きました。

劇場を出て、遠目で小さい割に気合の入った石垣が
気になっていたので出石(有子山)城跡へ。
坂本の穴太の石組を見たり、徳島城のかっこいい
石垣類を見てから最近、石垣はちょっと見過ごせません(笑)
下から眺めた分ではそんなでもなかったのですが、
近づくとそそりたつ城壁は、なかなかの迫力で、
最初は上まで、と思ったのですが、何しろ自然のままの
景観で、石段に手すりもなく、雨上がりもあって
斜めになったり狭い箇所もあり、最初の踊り場まで
登っただけで呆気なくリタイア。
後から調べたら、山頂まであと1時間は軽くかかる、
自然豊かなハイキングコースだったようで、寧ろ早々に
諦めて良かったです。

結局、蕎麦は勿論、お土産類にも手を出さず、乗って
来たのと同じバスで豊岡へ戻り、電車で大阪に出ました。

観劇ではなかったですが、映画のヒットのおかげで、
ただ見学するより格段に楽しめて良かったです。
因みに、ここで歌舞伎がかかる時は京都から直行バスも
出るそうですが、かなり時間もかかりそうですし、
日帰りは大変なので、前泊か後泊が妥当そうですが、
どこに泊まるのか(福知山?舞鶴?城崎?)?ちょっと本気で来年は考えようかしら

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2025.11.04

爽秋文楽公演(第三部)を観る

2510bunraku

国立文楽劇場
いつもは公演のない時期の文楽劇場公演。
案の定、万博がらみだったそうで、実際、インバウンド
らしいお客様が多数で、日本人が逆に目立つほどでした。
私が観た部は「重の井子別れ」と「日高川」
他の部は「心中天網島」と「曽根崎心中」。
「重の井」は名乗り会えない親子別れもの、「心中もの」は
「ロミジュリ」や「マイヤーリンク」も心中、と言えば
そうで、心情がある程度理解できれば海外の方でも
多分OKでしょうが、「日高川」は、本来なら日本の
古典芸能における「道成寺もの」のバックグラウンドの
理解も必要な気がしますが、お姫様の顔変化ビジュアルが
派手(ガブになるのはなかなかインパクト)なのが
ポイントかも

「重の井子別れ」
正式な外題は「恋女房染分手綱」
今では今回のように「重の井子別れ」ばかりが上演さ
れますから、今更、言い替える必要もないのですが、
物語の全体像としては定番のお家騒動&仇討ちもの、
のカテゴリで、写楽の最も有名な第一期の大首絵
シリーズは、この作品の登場人物が(と役者)モデル。
一応、この場の主人公・重の井も描かれていますが、
特徴ありすぎる目鼻立ちばかり目立つ、時代劇に
出てくる世話好きの大家さんみたいに描かれた自分を、
「美人」で有名だったと言う、モデルの半四郎さんが
ご覧になっていたら、どんな気持ちだったやら(汗)
(因みに同じシリーズで派手な衣装のいかにも「成田屋」に
描かれた竹村定之進は、重の井の父親。モデルは勿論、
市川鰕蔵)
丁度、先日の「べらぼう」で、蔦重が、女性をリアルと
言ってカリカチュアライズして描いた歌麿に、「ここまでリアルにしてほしい訳じゃない」
って言ってた、まさにその感じで、なので私は現時点
「べらぼう」における「写楽」は、歌麿の別ジャンル用
筆名、有名人の「裏アカ」説を採ると見てます。
因みにこの芝居がヒットしたのは、この写楽の大首絵
シリーズがバズったおかげでもあるそうですが、
現在は文楽でも「子別れ」だけ、なので、江戸兵衛
(写楽では懐手の有名なポーズの人)や、対する、
ひょろひょろでビビりながら刀を半分抜きかける
奴一平とかを舞台で見たことがなく、最近NHKの情報
番組見るまで、浮世絵の題材がこれだと気が付かなかった
くらいです(遅い)
「日高川」も文楽では「あ、またか」な大定番ですが、
歌舞伎では舞踊で時々しかかからない、と、今回、
私にはどちらも「文楽じゃないとを、な理由に納得」の
鑑賞体験になりました

「重の井子別れ」は、「先代萩」「熊谷陣屋」などと同じく、
親と(幼)子の別れを描く作品として馴染みありますが、
歌舞伎で見た記憶が多分ありません。
今回文楽で見て察したその理由は、実質この場の
キーマン・三吉と言う役が、歌舞伎ではかなりキャス
ティングが難しいからでないかな、と。
ある殿様の家で殿様の令嬢が嫁入りする事になり、
集めたフリーの馬子の中に偶々いた少年が、禁止の
社内恋愛で産んで、仕事のために手放した実子・
三吉と気がつく重の井
ませていて、馬子の一人親方で(つまり自営)稼いで
いると自慢し、未成年なので現行だと法律違反ですが、
意気がって煙管をスパスパする設定は、人形なら
ともかく人間がやるとちょっと、でしよう。
(昔なら「PTAが飛んで来る」(笑))
何より、重要な台詞は殆ど三吉くんが喋り倒すので、
歌舞伎の子役では手に余り、と言って、成人の役者
では子どもならではの無垢さと残酷さのバランスが
難しい
その点、文楽は人形だし、語りは皆さん声色?使い
分けのプロなので、年齢に左右されないので、できる
と言う差、とみました。
重の井は息子に気がつくも、別れて自活してる息子
(の仕事)の事を周囲に知られて、令嬢の名誉に傷が
つくと、塩対応
一方、事実を聞かされた三吉くんは生活がかかっても
いるので
「ママの口添えでなんとか僕の待遇改善とりなして」と
堂々言えたりする強心臓
しかし結局、三吉は「大人の事情」を飲み込んで泣き
ながら馬子歌を歌って去るところが、太夫の聴かせ
どころ。
「先代萩」「熊谷陣屋」のように目の前で死なれる訳では
ないので、「そこまでしなくてもっ」にはならない
ですが、嫁入りを「嫌」と言え、また、双六くらいで
機嫌よく「行くわ~」と前言を翻す、自由のあるわが
ままお嬢様のために、実子を突き放すってどうなの、
とは思いながら、勘十郎さんの遣う重の井の、ややも
するとダダ漏れになる愛情をひたかくす仕草に泣け
ました。
こう言うのを究極のライフワークバランスと言うの
でしょうか、
因みに物語は、最終的に嫌疑は晴れてめでたしめでたしに
なるそうですが、ここまで全体像が見えにくい芝居も
珍しいかも。

「日高川」はいつもながら、情念で清姫ちゃんの顔が
いつ「ガブ」になるのかだけを「来るぞ来るぞ」ってなる
感じですが(笑)、何回見ても気がつけば「なってる」
のが人形遣いさんのすごいところ
これだって、人間ではさすがに一瞬で顔は変わらない
ので、文楽ならでは。

ならでは、を存分楽しませて頂きました

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2025.10.29

半世紀後の「親子」

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先日、新聞の折込広告束から出てきたのがこれ。
MONCLERの企業広告ですが、よく見るとにこやかに
笑う写真のお二人は、なんと天下の名優、アル・
パチーノとロバート・デ・ニーロ

二人をメジャーにした「ゴッドファーザー」シリーズ
では、役柄では親子でも、ロバート・デ・ニーロは
ヴィトーの若い頃、アル・パチーノはその息子・
マイケルが成人してからなので、同じ画面で共演は
していません
(青年マイケルが登場する場面に老年期を迎えた「ゴッド
ファーザー」ヴィトーを演じていたのは勿論、マーロン・
ブランド)

二人が同じ画面に登場する映画は「ヒート」が有名
ですが、この映画、二人が酒場でテーブルを挟んで
向かい合って座るシーンなのですが、横から映したり
して二人の顔が揃ってフレームインしているカットが
なく、一方を映す時はもう1人の背中ごしに真正面
から捉えて、相対するもう1人は横顔すら映って
ないため、公開時に「別撮りなのでは?」と噂になった
のを覚えています。
(普通に一緒に撮ったらしいんですが)
と言う事で、共に傘寿を越えたこの二人の、肩を
組んでのツーショット、全く、「尊い」としう言葉が
これほど相応しいツーショットはなかなかありません。

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「錦秋十月歌舞伎~義経千本桜」(第三部Bプロ)

Tadanobu

Bプロ第3部。
「義経千本桜」の中でも単独上演機会の多い
「川連法眼館」
1部Aプロを観た時に、3階下手席が3部「狐忠信」の宙乗り
用の鳥屋(ゴール)が出来て随分席数が少なくなって
いたのですが、Bプロ2部に伺った時には鳥屋が撤去
されて席に戻っていたので、右近くんが宙乗りを
しない事と、今回、AB両プロ交互にしない(できない)
理由を理解しました
Aプロメンバーは下旬に立川公演もありましたしね
個人的にはラストに宙乗りすれば盛り上がる、は
安易に過ぎると思っているのですが、最近は宙乗りは
しないまでも、「欄間抜け」や下手の「橋?」から秒での
床下から狐になっての登場 とかは、役者さんのお家に
拘わらずよくなさるので、今回の左近くんのように、
典型的な音羽屋型に安心感と共に、ちょっと物足り
ない気がしたのも事実。
このあたりの匙加減がなかなか難しいかもですが、
やはり躍りの上手い役者さんは動きが滑らかで、
「狐」でした。

今回は丁寧に法眼が屋敷に戻り、妻の飛鳥に偽手紙を
見せるところからなのも有り難い。
静は今回、Bプロのヒロイン独り占め(笑)の米吉くん。
個人的には「すし屋」のお里の方が、のびのびお似合い
でしたが、本当に今年の三大名作上演では、この
世代の抜擢と継承・育成が命題だった気がしています。
義経は梅玉さん。
先月、新国立での「忠臣蔵」二段目九段目の本蔵されて
ましたが、今月は昼夜AB合わせてもこの一役(AB共)の
贅沢!
亀井・駿河もで、第一部ABで知盛をしている巳之助
くんと隼人くんがお揃いで登場。
因みに、見てませんが、團子忠信のAプロでは右近
くんが、「もう一足」の「清元栄寿太夫」として、の出演
していたらしいです

松竹130年記念の歌舞伎座での三大名作一挙上演は、
インバウンド需要に加え、他社〔東宝)映画「国宝」と
言う盛大な援護射撃もあって、大盛況だったかとは
思いますが、本当の正念場はこの「特需」後。
場当たり的な新作も一時的な効果はあっても、寧ろ
固定客にはそっぽを向かれる。
国立劇場が担っていたはずの学生団体も劇場レスでは
難しいのか、最近は歌舞伎座でも良く見かけます。
未来の観客育成も良いことですが、いま見たい観客の
チケットが減る事を理解しているのかどうか。
団体受けるなら日程貸切にして「団体専用回」作って
事前解説付けるとかの方が良いのでは?と思いました。
(三大名作の方が、観賞教室として学校の理解も得やす
かったとは思いますが)

11月は江戸の昔なら何イチ注力の顔見世の月に三谷
歌舞伎、12月は京都は定番の顔見世、歌舞伎座は超
歌舞伎、1月は東京四座(歌舞伎座、新橋、浅草、
(新)国立)に加え、大阪松竹座と五座公演。
どうしても脇が薄くなりデメリットはありますが、
浅草は勿論、若手やお弟子さんたちに役が廻りやすい
ので、そう言う楽しみもありますが、さて、どれを
見に行きましょうか。

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2025.10.25

大竹しのぶさん「リア」は、キャサリン・ハンターさんの「THE BEE」を思い出す

Lear

初めてのTHEATER MILANO-Za
思っていたより小ぶりで、雰囲気はコクーンにかなり
近い。
シューボックス型で、2階席でも舞台は近い。
サイド席は4階?まであり、ちゃんと椅子が舞台に
向いてましたが、聞けば座面が高く、足を床につける
のが難しいタイプらしいので、今後こちらで何かしら
観るとしても余程の事がなければ選択肢にはならない
かも(自分用覚え)
普通の座席は列で配置が互い違いになっていましたし、
足元も広く、座り心地もコクーンを思い出しました

で、「リア王」です
最近、上演が多い気がするのは、現代の超高齢化社会と
リンクする現代性が見直されているのかも
ここ1~2年に限って私が観ただけでも、段田さん版
(PARCO劇場24年)、木場さん版(KAAT24年)。
また今回は、Bunkamuraがここしばらく続けている、
海外演出家を招いてのDISCOVER WORLD THEATER
シリーズのひとつで、また、NINAGAWA MEMORIALと
銘打っての、蜷川さんトリビュート公演。
シェイクスピアなのは勿論、大竹さんに勝村さん、
横田さんに山崎さん、青山さんに宮沢さん、そして
松田くんと、蜷川さん舞台でお馴染みだったメンバーが
勢揃い。
蜷川さん舞台にはお馴染みだった客席登退場はあり
ませんでしたが、本水(雨&嵐)はもれなく、でした(笑)。

大竹さんがリア役がトピックだったので、他のキャストも
最近の海外のトレンド?で男女逆転かと思ったら、
全部がそう、ではなかったです
因みに今回ケント伯の横田さん、去年文学座の「オセロ」
以来のシェイクスピアですが、蜷川さんによる最後の
「リア」平幹さん版では使者などをなさっていて、
また今回グロスターの山崎さんは蜷川さんの平幹さん
版では道化でした
宮沢さんがスタイリッシュな服で超強気のゴネリル。
介護放棄の親不孝者ですが、カッコいいレベルに
無慈悲でヒドいヤツ(誉めてる)
この芝居の数少ない良心、夫のオルバニー公役の
大場さんも激渋かっこ良いのに、ゴネリルに圧されっ
ぱなしで、やっと終幕で一矢な状況(笑)
また、ストーリーを動かす悪役として活躍するエドマ
ンドは、成田くんの線の細さもあり、ゴネリル&
リーガン(安藤玉恵さん、こちらもパワフル)の親不孝
姉妹と、リーガンに負けず劣らず(マウント取りあい、
とパンフレットにコメントあり)の松田くんのコーン
ウォル伯爵の迫力で、何だか姉妹の回し者、あるいは
手先みたいになってしまったのはちょっとお気の毒
でした。
というか、異母「兄」エドガーとエドマンド役は、
平幹版では高橋洋くんと池内博之さん、段田さん版が
小池徹平さんと玉置玲央さん、木場さん版では土井
ケイトさんと章平さん、と静&動と言う対照的な
キャラ配役が常道のところ、鈴鹿くんと草食系男子
キャラが若干被ったのも惜しいかも

難易度高い道化は、勝村さん。
「コリオレイナス」のオーフィディアスで唐沢コリオ
レイナスと渡り合い、「シンベリン」では掴み所のない
クロートン、果てはマーロウの「ファウストの悲劇」
では、メフィストフェレスとして萬斎さんファウストと
舞台でタンゴまで踊る、と、もう蜷川さん芝居で「
困った時」の「難役」に、屡々キャスティングされていた
「最終兵器」(笑)ぶりが今回も炸裂。
意味があるのかないのか判らない存在感を発揮して
独特でした

そして何より大竹さんリア
名優に否やはないのですが、どの芝居でも常にやや
癖強め。
歯を喰い縛ってずっとずっと強いテンションで相手を
圧倒するタイプの台詞回しで場を支配する独特の
お芝居は、ちょっと他の役者さんとの違いが大きいのと、
圧に疲れてしまいがちですが、何しろ今回は「煙たが
られて」「手に負えない」「ぎゃんぎゃんと言う事を
聞かない」「頑固オヤジ」(しかも国家権力握っていた)役
ですから、寧ろ違和感上等、異物感こそ望むところ。
どんどん追い詰められるのも容赦なく、致し方ないと
思わせて納得。
個人的には小柄な大竹さんが、それほど似合うように
誂えられたとは思えないグレー系のスーツを着て登場
した途端に、キャサリン・ハンターさんが演じた、
野田秀樹さんの『THE BEE』の井戸を思い出しました
(確か、キャサリンさんもリアなさっているはず)
そう言えば、ラストでリアがコーディリアの遺体に
「この道化が」と言う戯曲の台詞がカットされずに
使われていました
この台詞がある事と、2キャラが同時に舞台に登場
しない事から、シェイクスピアが書き下ろした時は、
道化とコーディリアを同じ役者が演じたとも言われて
いるそうですが、今回、他に沢山の台詞や場面が
カットされた中で、2役の趣向でなくこの台詞が
残っていたのには演出家の解釈や何かしら意味が
ありそうですが、今のところ思い当たれていたません。
ともあれ、400年前の戯曲で既に介護問題、ファ
ミリー企業の事業継承トラブルがここまでリアルに
描かれている事は、まるで現代社会への予言のよう
です。

劇場を出れば、真ん前が西武新宿駅で、ふいに改装前の
新宿コマ劇場を思い出しました。
(休ビルではミラノ座、は、同じビルにあった映画館の
名前でした)

建物の前には池?があって若者がしょっちゅう大騒ぎ
してましたが、新宿コマ劇場自体は長らくベテラン
歌手の歌謡ショーのような公演がメインだったのが、
解体前あたりに、新感線が公演した時期に舞台に
あまり出ない江口洋介さんをゲストに迎えた「五右衛門
ロック」を観た記憶があります。
コマ劇場名物?の中央のゴージャスな廻り舞台に
乗った江口さんが、ギターを弾いていた不思議な光景と、
やたらに低かった三階のロビーの天井を覚えています。

さて、最近、新しい劇場に行く度に、ロビーのレイ
アウトとかなんか変、と文句ばかり言ってる気が
しますが(笑)、こちらも何だか不思議な具合でした。
入場にはエスカレーターしか手段がないのは仕方ない
として、一階席のロビーは広いのにエスカレーターの
着いたところの通路が細い上に、そこにも客席扉が
面していて、人がつい溜まる構造。
扉があるのは仕方ないにしても、入場時は使わない
ようにするとかしないと、他扉利用客が先に進めない。
また退場時に規制(分散)退場を休憩時間から呼び
掛けるのは良いのだけれど、肝心の導線がぐちゃ
ぐちゃ。
エスカレーター、エレベーター、階段とはっきり何の
列と言わずに出していくので、前の人についていったら
化粧室列、戻ろうとしても通路が狭くていったい
何のための規制退場なんだか(苦笑)
時差つけて出すだけでなく、その先の案内が必要
因みに客席後ろから出た場合。向かって右手先は階段、
正面がエレベーター、左が化粧室とエスカレーターと
構造的には分かりやすい。
スタッフが開演前と休憩終わりに声がけする時の
手持ち掲示に追加しておけばよいのに。
なお、公式サイトにコインロッカーや荷物預かりなしと
ありましたが、さすがにキャリー類は受付で預かって
ましたし、目視だけですが下層階にロッカーがあり
ました

しかし、この劇場はやはりマチネ専用かな

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2025.10.18

「錦秋十月歌舞伎~義経千本桜」(第二部Bプロ)を観る

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Bプロ第2部。
前月のように、仁左衛門さんの休演が行ったら発表
されてやしないかとか、ちょっとはらはらしながら
伺いました。
周りにも同じようなお客様がいらして、「本当に先月は
ねぇ」とか「拝見したいけど、ご無理されても」とかの
お話声が、入場待ち列やロビーで聞こえて来ました。
気持ちは全くその通り。

演目は「木の実・小金吾討死・すし屋」
「すし屋」だけだと、権太が連れてくる「若葉の内侍」と
「六代君」の正体を、権太の両親妹だけ知らず、権太の
目論見を観客が事前に知れて、弥左衛門のひと太刀に
ため息が起きる、と言う劇構造が成立しないからか、
仁左衛門さんの時は必ず「木の実」から。

今回は権太妻・小せんに孝太郎さん、若葉の内侍が
門之助さん、小金吾が左近くん。
思えば先月、左近くんは苅屋姫で仁左衛門さんの丞相と
涙のお別れを演じていたのが、今月は呆気なく騙されて
悪態をつきまくる役なのが、何だか不思議。

孝太郎さんと仁左衛門さんの、庶民の夫婦の息のあった
やりとりは、さすが長年共演されている強みでしたし、
左近くんは今月も担うミッション(お仕えする主人の
奥方と幼児を無事に逃がす)の大きさとご自身のチャ
レンジが重なって、大立ち回りでちょっとふらっと
してましたが、大熱演。
前日まで「すし屋」のお里、Bプロ1部でも「鳥居前」の
静御前をされてもいて、ちょっと声が「若衆」より女子に
なりがちなのと、化粧が後半立ち回りの時にもう少し
色気が出るのだと良いなぁと思いましたが、もう完全
女形範疇の人で、それは凄い。
勿論、歌六さん弥左衛門、梅花さんお米、米吉さん妹・
お里、萬壽さん維盛、芝翫さん梶原と、役者も揃って、
安定の一幕でした

また今回特筆すべきは、六代君に陽喜くん、善太郎に
夏幹くんと、獅童くんの二人のお子さんが揃って、
この古典大作の子役に出演されている事。
今回、Aプロ「大物浦」に巳之助くんのお子さんが
初お目見えで出演しているように、ご子息の出演には
たいていパパも同じ演目、少なくとも同じ公演に同座
しているのが殆どの中、今月、獅童パパは歌舞伎座に
出演せず、お子さん二人だけ、はかなり珍しい。
パパが「時代もの」に余り出演がない (色々な事情で)
のも事実なので(汗)、それだけにお子さんたちだけでも、
今後も古典への出演が続くと良いなと思います。
何よりその二人のお芝居がとても良かった。

歌舞伎では子役には現代劇のような台詞を上手く言う
事は求められてなく、棒読みでも、とにかくはっきり
台詞が届くことと、劇中の行儀あたりがポイントですが、
二人とも動きはぎこちないところはありつつも、
台詞のタイミングがとても良かったですし、小金吾を
残して若葉の内侍と去る時に、歩きながら小金吾に
視線を残す六代君がとても良かったです

そして勿論、仁左衛門さん。
前半の、球や小さい息子に注ぐ愛情の深さや、憎み
きれない悪党ぶりからの、鮮やかな「戻り」。
莨入れから出した笛を吹くと、合図で維盛親子3人が
(内侍と六代君は、小せんと善太郎の着ていたものを
着ているだけに、権太の悲しみはいかばかりか)
登場しますが、この笛も元は善太郎が持っていた
もの。
この繋がりも「木の実」やるからこそ伝わるところ。
沁みました

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2025.10.17

「錦秋十月歌舞伎~義経千本桜」(第一部Aプロ)を観る

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歌舞伎座の垂幕は、行った月には都度撮影していますが、
いつもは「[○]月×△歌舞伎」なのに、演目の外題だけ、の
今月のはちょっと珍しいパターン。

先月も2プロでしたが、概ね1日おき交互上演だった
のが、今月は前半がA、後半がBと完全に期間分けての
上演、しかも三部制。
因みに三部の開始が18時40分で終了が21時20分。
会社帰りの平日でも楽々開演時間に間に合う一方、
翌朝がちょっと大変です(汗)

まずはAプロ第1部を拝見。
演目は「渡海屋/大物浦」
銀平/知盛は隼人くん、義経の巳之助くんはBプロで
知盛。
巳之助くんご子息の緒兜(おと)くんが、安徳帝で
初お目見え。
しっかりしてる、と思ったら7歳だそうで、最近の
ご子息たちの初お目見えの中ではゆっくりめ、かも
ですが、泉下の三津五郎さんもさぞお喜びでしょう。
お柳/典侍局は今月もAB通し一役出演の孝太郎さん。
世話のお柳から時代の典侍への切り替えが見事で、
これに限らず、今年の孝太郎さんの歌舞伎座での古典
作品でのご活躍は、素晴らしいです。
入江丹蔵と相模五郎はABで入れ替わりで、Aは松緑
さん丹蔵、亀蔵さん五郎
魚づくしのセリフ以外見せ場がない脇役ですが、
このお二人がなさると、ここだけで見所になる完成度。
隼人くんは初役の知盛を今回、仁左衛門さんに教わった
そうですが、何より、姿の良さ。
衣装とりわけ後半のゴツい白装束に上背が負けない
のと、長い手足が数々の見得(特に横顔)を迫力と
美しさのあるものだったのがまず良く、ラストの
「碇知盛」の入水も大迫力でした。
(舞台裏の下の青い身なりの黒子さんたちが、背面
落ちしてくる知盛のサポートをされているのが見えて
しまうのは3階席の宿命で、これは致仕方ない)

確かにドラマの柔らかい「同心」役も、「火付盗賊改」も
お似合いの隼人くんですが、やはり萬屋さんは伝統的に
古典・時代のお役が合うお顔立ち。
いま萬屋さんのレパートリーには認識されていませんが
「勧進帳」とか見てみたいです。

弁慶は両プロ通して橋之助くん。
先月の「筆法伝授」の梅王に続いて、地味ながら堅実な
立役の役役が光ります。
時々、若い頃の橋之助時代の芝翫パパの気配が漂う
ので、近いうちに「夏祭」とかされないかなとも。
先月、ちょっと贅沢し過ぎた反省で、今月1部Bプロは
チケット買わなかったのですが、今となっては買って
おけば良かったのです。
タイミングあれば幕見かな

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来年の「こまつ座」、「国語事件殺人辞典」に筧さんがご出演

来年のこまつ座の公演ラインナップが発表されました。
私の注目は3月。
演目は「国語事件殺人辞典」
こちらの作品は初演が小沢昭一さんの立ち上げた
シャボン玉座への作品提供だったようで、こまつ座
での上演は初とか。
小沢昭一さんにシャボン玉座、時代を感じます。
て、そのキャストのトップクレジットに、なんと
筧利夫さんのお名前が!
筧さんと言えば、最近すっかりメディア露出が減り、
映画「室井~」二部作でお久しぶりに大スクリーンで
拝見した感じでしたし、ドラマも「直虎」あたりを
最後に時代劇にゲストとかがちらほらなくらいで、
先日のNHK前後編ドラマ「永遠についての証明」(後編)
での、「天才」に対して理解のない指導教授の、小心な
あまりの曲者ぶりは、視聴者をいらつかせるに充分
でしたが、私にはそれよりも筧さんのお久しぶりに
「おおっ」と思っていました。
更に舞台に至っては、蜷川さんの「じゃじゃ馬~」、
平幹さんと共演された「テイキングサイド」あたりを
最後に、ご出演も減り、つかこうへいさんと第三舞台で
一生分の台詞を言い尽くしてしまったのかと思って
ました(汗)

そこにいきなり「こまつ座」です。
これまでに井上ひさし作品にご出演された記憶は
全くありません。
しかし考えてみれば、つかこうへいさんの、稽古中も
変わり続けた口立ての早口での明朗な長台詞をものに
し(「飛龍伝」と「幕末純情伝」日替わりダブル上演とか
本当に凄かった)、第三舞台での身体性、どちらにも
共通する音楽の重要性は、いずれも井上作品にも
重要なもので、この組み合わせは意外でありつつ、
かなり納得かも
他に、旧「蜷川組」飯田さんに青山さん(青山さん、
一体おいくつ?)そしてネクストシアター出身の浦野
くんとお馴染みの顔ぶれが。
また演出は、以前、自由劇場で内田くんが出演された
「三人姉妹」を拝見した事のある大河内直子さん。
プロフィールを拝見すると、後期の蜷川さん舞台の
演出助手などをなさってから独立された方のようで、
演出助手時代に井上さんの「藪原検校」や「ムサシ」
にも関わられていたとの事。
久しぶりに筧さんの機関銃かつ滑舌完璧台詞を、
井上さん戯曲でお聞きできるかと思うと、年度末の
仕事量多い中でも何とか日程調整して伺いたいです。

それにしても、タイトルから既に一筋縄ではいかなさ
そうな気配がプンプン
文脈で考えたら「国語辞典殺人事件」ですが、まさか。
分厚い辞書を使った殺人事件?(笑)
まさか。
楽しみにします

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2025.10.14

「蔦重」連携5館展覧会を制覇する

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9月は「菅原伝授」仁左衛門さん菅丞相の追っかけに
忙しく(笑)、手(足?)が回らなかった美術館巡りですが、
今月は仕事も一息ついたので、気になっていた
都内
5美術館&博物館&資料館連携の「蔦重」関連展示、
題して「五館連携・蔦重手引草」を制覇することに
しました。

まずは「太田記念美術館」
原宿と言う立地もあり、以前、インバウンド客でとん
でもない混雑に巻き込まれた上に、マナー違反の客を
まるで注意しないスタッフの態度に辟易したので、
魅力的な展覧会も暫く敬遠していました。
今回も土日は回避しての平日午後。
それでも行列していたら諦める覚悟でいましたが
「その時に比べれば」そこまででもない、我慢の許容
範囲ギリギリ。
コロナとインバウンドの影響か、以前のようなスリッパ
履き替え、一階にあった畳敷きの和室に座って、
床の間飾りを拝見するようなしつらえでゆったり
見ると言う、こちらならではの、風流で贅沢な浮世絵
観賞法はなくなった一方で、支払いが相変わらず
キャッシュレス不可現金のみ、なのは、ちょっと
解せません。
展覧会タイトルは「蔦屋重三郎と版元列伝」。
浮世絵を作者やジャンル毎ではなく、蔦屋をはじめと
する鶴屋、須原屋(一統)、西村屋に加え、雛形屋、
奥村屋、和泉屋、など版元を切り口にそれぞれの作品
(商品か)を紹介する展示。
そこはやはり浮世絵専門館、所蔵品の量とバラエティが
凄い。
作品リストも丁寧で有難く、また他4館と違って、
蔦重がメイン展示でした
そう言えばこちらに限らず、最近の浮世絵展示には
「作品名」「作者」「製作年代」以外に、ほとんどに「版元」が
表示されるようになったのは、偏に「べらぼう」効果
でしょうか。
因みに五館それぞれで、一ノ関圭さん書き下ろしの
特製「蔦重と仲間たち」特製絵葉書きがもらえる仕組みに
なっていたのですが、太田さん割り当ての写楽は
前期展示で終了してました。残念
(作品撮影は一切禁止)

次は「五島美術館」
徳川美術館と並んで、「源氏物語絵巻」を所蔵して
いることで知られる老舗の私立美術館
庭園も綺麗なのと、今は大手町に引っ越した静嘉堂が
以前は岡本(二子玉川)にあったので、ハシゴするのが
楽しみでしたが、今回かなり久しぶり。
こちらのメインテーマは「武士の雅遊」で、「蔦重」は
「蔦屋重三郎~江戸には江戸の風が吹く」コーナー。
「べらぼう」でも描かれていますが、江戸の文芸界は、
お武家の(副業)作者を抜きにしては成立してない
故にきちんとした執筆に関する契約が長く定着し
なかったらしい?とどこかで見聞きしましたが、
いかに?。
今やすっかり有名になった(笑)春町、喜三二による、
真面目なんだかふざけているのか判らない黄表紙
などかが、素晴らしくよい保存状態で展示されて
いました。
考えてみれば、所蔵されていても。関心を持たれ
なければなかなか展示と言う「日の目」を見る事も
ないかも。
因みにこちらには「錦之裏」「仕懸文庫」「娼妓絹籭」と、
「べらぼう」最新回で蔦重が「身上半分」をくらった
京伝の「教訓三部作」全部がまさに、のタイミングで
展示されていました。
しかし、発禁になった筈のこれらが、きちんと所蔵
され保存されて受け継がれて、令和の今、ガラス
ケースで展示されている、その間の経緯は凄くドラマ
チックだろうし、火事や事変の多かった江戸から
今までを考えると奇跡的な事な気もします。
なお、五島さんは素敵な作品がたくさんありましたが、
配布の作品リストには、作品名と発行年代と所蔵者
しか記載がなく、作者はじめ細かい情報を展示の
説明からノートにメモするのがなかなか手間取り
ました。
こちらには「蔦重さ~ん(by京伝)」のハガキがあった
そうですが、こちらも早々に配布終了したとか。
地味な展示だと思ってましたが、「べらぼう」効果、
侮れず
(一部禁止表示のある作品以外は撮影可)

次は、個人的に大好きな「印刷博物館」
こちらは印刷物、と言うカテゴリーでの浮世絵の
所蔵ですが、量が半端なく、また珍しいもの、状態が
良いものが多いことは、以前の展覧会で把握して
いましたので、かなり期待して伺いました。
相変わらず広いスペースに丁寧な解説付き展示。
運営が凸版印刷さんなので、印刷方法や仕組みに
ついての解説も詳しく、模型などで理解が深まる
工夫がされているのがポイント。
今回も印刷技法と歴史と言う両面から「あれもこれも
蔦重!~お江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎」コーナー
展示でしたが、前後の印刷技法の発展展示が理解の
助けになりました。
こちらでは無事に?太田南畝さんの絵葉書を入手
そう言えば、印刷技術の紹介として、私は結構最近
まで使っていた「プリントゴッコ」が、ガラスケースに
入って「展示」されていて、苦笑しました。
ついでに別会場でのパッケージのコンテストの優秀
作品展示も拝見。
普段、何気なく見てさわっている商品パッケージや
配送時の梱包材の材料やデザインが、破損対策と
利便性と、コスト軽減や環境対策と両立させる工夫が
常にされているのが判りましたし、「物作りに絶えず
工夫を凝らす」姿勢が素晴らしいと感じました。
(原則撮影可)

区内最後が、押上の「たばこと塩の博物館」。
こちらは以前、渋谷の公園通りにあったのが10年
以前に、スカイツリーに程近い、業平の自社敷地内に
移転していたのですが、なかなか行くチャンスがなく、
春先に一度、隅田川にまつわる浮世絵展示があっで
伺っての今回が2回目。
何で煙草と塩がまとめて1つの博物館になっている
のかの理由をおそらく最近の方は想像もつかないかも
★塩と煙草は電話と共に「専売公社」で専売制で、
小学生の社会のテストには決まって「三公社五現業を
全て書きなさい」と言う問題が出たもの。
因みに五現業は「郵政」「林野」「印刷」「造幣」「アルコール」(笑))

話が逸れましたが、こちらの所蔵浮世絵も、印刷
博物館同様、テーマ性があって、メインは、勿論、
煙草や煙管など風俗が描かれたもの。
今回メイン展示は「けむりと人々のつながり~メソポ
タミアの記憶」で、「蔦重」関係は、別室サブ展示で、
テーマは「18世紀のおもちゃ絵と蔦屋重三郎版の
おもちゃ絵」コーナー展示
役者の着せ替え(役の)や、双六など。
館蔵品は少ない一方、テーマに沿ったものが内外の
美術館博物館から集められていました。
写真展示も多くて、五島や太田と並列で「5館連携」と
言うのはちょっとなぁとは思いましたが〔汗)、
資料リーフレットがオールカラーで、そこは五館
イチ気合が入っていました。
山東京伝さんの絵葉書をいただきました。
(他館作品がほとんどで撮影不可)

最後に残ったのが、一ヶ所だけ明らかに遠い立川の
「国文学研究資料館」
遠い上に、国立研究施設なため、土日祝は休み、
開館時館も短め、とハードルが高い(汗)
立川は都内で貴重な広いIKEAやららぽーと、勿論、
昭和記念公園があるので、全く知らない場所はあり
ませんが、モノレールでなら立川北から1駅2分ですが、
歩くと25分と言う、なっかなかなアクセス
しかし、万難を排して?伺ったら、入館は無料だし、
研究機関なので、資料も解説もたっぷり
展示の切り口は「本のサイズ」
他館で見てきても余り意識してなかったのですが、
江戸期の「本」はだいたいサイズが大中小に分類される
そうで、「大(おおほん)」が大体今のA4サイズで内容は
基本「ちゃんとした本」(笑)。
その半分のサイズが「中(ちゅうほん)」、「べらぼう」
お馴染みの黄表紙はこれ。
半紙二つ折りサイズが「半紙本」でさらに半分が「小本」
洒落本は小本だそう。
中身の硬軟が大きさに反映してるらしいのですが、
例の狂歌同人を百人一首風絵に仕立てた「狂歌百人一首」や、
北斎が狂歌に絵をつけた「潮干のつと」あたりのサイズが
大きいのは、入銀(クラファン?)だったからかも?とか、
「べらぼう」の俄知識で思ったりしました(笑)
こちらでは「うた」こと、歌麿さんの絵葉書をいただき
ました。
更にアンケートに答えたら、立派な装丁の資料集を頂きました
(撮影可)

美術館博物館巡りは好きですが、短期間に類似の
内容の展示を複数見ることは稀。
とにかく江戸の印刷文化の豊かさ、武家・町人の枠を
越えた交流、時代・政治との関連など、まさに「べらぼう」の
人々の生の声、息づかい。手触りが伝わるようでした。
しかし、何にしても、あの超絶細かい絵と、隙間を
埋め尽くす文字のものすごさ。
あれ、版画ですから、彫師さんは裏向きに彫って
いる訳で、いや、つくづく凄い。
すごいです。


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2025.10.13

ミュージカル『エリザベート』アーカイブ付きLIVE配信決定!

19年から数年ぶりに、東京だけでも、無理なら大阪
でもと、可能な限りの手段を尽くしていますが、
予算盛大にオーバーの2万円席を覚悟でエントリー
してもかすりもしません
昔から取りにくいチケットではあったけれど、ここ
までではなかったので、呆然としています。
やはり、「皿先行)に手を出すべきだったのか?〔嘆)

そんなタイミングで、配信の発表です。

★11月29日(土)12:00東京公演千穐楽
★2026年1月30日(金)17:00博多座公演
★2026年1月31日(土)12:00博多座公演(大千穐楽)
アーカイブ付き。

視聴料金は各回5,500円(税込)、プラスシステム
手数料330円(税込)
アーカイブ期間は1週間
全部見ても15.000円
劇場チケットのA席1枚ちょっと。
あとは当日券に賭けるしかありませんが、それも
期待薄
余程の奇跡が起きない限り、今回の「エリザ」は
もうこれで我慢するしかなさそうです

そう言えば、NHKのプロデューサーか脚本家の森下
さんは「エリザベート」のファンなのかと勘ぐって
ます。
よしながさんの「大奥」ドラマ化の時の家定さん役は
愛希れいかさんで、仕える大奥総取締・瀧山役が古川くん
で、今回の「べらぼう」で古川さん演じる山東京伝が
入れあげて年期明けに妻にした元遊女役が望海風斗さん
どちらも森下さん脚本で制作はNHKなのですが、
トート&エリザベートコンビです
(後者は最新25年版)
因みに愛希さん、「べらぼう」にも初回早々、壮絶に
死んだ遊女役で出演されてましたし、前半同様に
遊女役で出演されていた珠城りょうさんも宝塚時代に
トートなさってます。
何より、宝塚時代から退団後も長らくエリザベートを
演じ続けた花総まりさんが「べらぼう」に宝蓮院
(定信の実家、田安家の正室役)で出演されていると
言う「エリザ俳優」大渋滞
とても偶然とは思えません

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