出石へ弾丸小旅行
「金比羅歌舞伎」を見に、「八千代座」(熊本・国の重要
文化財)も随分昔に萬斎さんの狂言公演を見に伺い
ましたが、近畿圏最古の芝居小屋で、金比羅歌舞伎
同様、短期間ながら松竹が歌舞伎公演を打っている
出石(兵庫県豊岡市) の永楽館にも、せっかくなら一度は
歌舞伎を見たいとは思いつつ、果たせてませんでした。
何より、兵庫県内と言ってもなかなか遠いし、金丸座
同様、風情のある分、平場席は枡の座布団席で長時間の
正座は難儀そうで、公演チケットに手を出しかね、
また見学だけと言っても夏は暑そうだし、冬は寒そう
だし(笑)
ところが、映画「国宝」の大ヒットで、思わぬ影響が。
ロケ地の一つとして映画冒頭の「二人藤娘」などが撮影
された縁で、元々公演時以外で行われていた施設見学を
バージョンアップ。
撮影で使用された小道具などを部屋の設えごと再現、
さらに最近は羽織れる着物と、小道具の藤の花(枝)が
舞台袖に置かれて、自由に使っての「なりきり記念撮影」も
できるようにと、今ならではな楽しみ方もできる企画に
なって、ファンを中心に「聖地巡礼」で盛り上がって
いると言うニュース。
折角見学するなら、「国宝」展示をしているうち間の
方が(なりきり藤娘は勿論やる気はなかったですが)
楽しそうですし、「巡礼」に便乗すべし、と、突発
「秋の北兵庫弾丸ツアー」を敢行してきました(笑)
豊岡までは京都から所要約2時間くらいですが、
肝心の出石へはそこから更に路線バスで30分。
天気は予報通り、京都駅での曇りが途中から雨になり、
豊岡で降りると本降りに。
バスは市街地を抜けるまでは普通のコミュニティ
バスでしたが、バイパスっぽい信号の少ない道に
入ると、ガンガン飛ばして、出石バス停には定時に
到着。
(630円。因みに今時珍しい、ICカード非対応。出石の
バス待合室に数個だけ現金式コインロッカーあり)
現地は天気雨のような感じで、天橋立のような景勝地
観光だと残念、ですが、こちらは建物の中を拝見
するのが目的なので、寧ろ涼しくて(行った時は盛大に
残暑でした)助かりました
初めての場所はいくら地図を見ても距離感が掴め
ないのでよくわからないのですが、出石城(有子城)の
麓に慎ましく開けた城下町は、思っていたよりさらに
小さめで、私のように観光地は原則徒歩、の人間には
丁度良いサイズ感。
城跡の前の大きな駐車場は、近畿各地を中心に各地
からの車がたくさん並んでいて、回りには「出石そば」を
売りにするお店が何軒もありましたし、ほかにも
蕎麦関係の飲食店や、お土産物店が集まって賑わって
いましたので、出石に来る方たちの多くは「自家用車」で
「グループ」で「有名な出石そばのご賞味」がメイン、
永楽館見学は+αのようでした。
私のような永楽館「だけ」を目当ては多分少数派、
でした。
目的地の永楽館は、バス停からも駐車場からも程近い
場所。
劇場前には、映画の中に登場した役者、一座名での
幟が翻り、気分は映画の世界へ(笑)
入口すぐに映画の巨大ポスターやサイン色紙、原作本。
右手には終わったばかりだった今年の永楽館歌舞伎の
「憚乍(はばかりながら)口上」と着到番もありました。
場内は客席や通路は勿論、舞台や花道の上に上がるのも
可、また舞台の脇や裏側にある、化粧部屋や風呂、
更に「国宝」で使われた小道具を中心に、楽屋が再現
されていましたし、舞台下・奈落にある、回り舞台を
回す仕組みも見られました。
個人的に密かに楽しみにしていたのが、やはり歌舞伎
劇場ならではの花道
すっぽんのある七三あたりに立って、役者気分で
舞台や揚げ幕を見込んだり、気もちだけ見得を切って
みました(笑)
客席構造は金丸座と同じで、一階は平場の枡の座蒲団
席、二階は二三列、木製ベンチに座蒲団の置かれた
椅子席。
舞台の近くに座って、役者の汗や息づかいを生で
感じるのも醍醐味ですが、観るなら2階席が楽そう
(そもそも広くないので2階でも全然近い)
劇場なのに、建物自体も仕掛けを楽しめるアトラク
ションでしたし(笑)、映画のシーンを思い出しながら
妄想もできて、劇場だけで1時間余り、ずいぶん楽しま
せて頂きました。
劇場を出て、遠目で小さい割に気合の入った石垣が
気になっていたので出石(有子山)城跡へ。
坂本の穴太の石組を見たり、徳島城のかっこいい
石垣類を見てから最近、石垣はちょっと見過ごせません(笑)
下から眺めた分ではそんなでもなかったのですが、
近づくとそそりたつ城壁は、なかなかの迫力で、
最初は上まで、と思ったのですが、何しろ自然のままの
景観で、石段に手すりもなく、雨上がりもあって
斜めになったり狭い箇所もあり、最初の踊り場まで
登っただけで呆気なくリタイア。
後から調べたら、山頂まであと1時間は軽くかかる、
自然豊かなハイキングコースだったようで、寧ろ早々に
諦めて良かったです。
結局、蕎麦は勿論、お土産類にも手を出さず、乗って
来たのと同じバスで豊岡へ戻り、電車で大阪に出ました。
観劇ではなかったですが、映画のヒットのおかげで、
ただ見学するより格段に楽しめて良かったです。
因みに、ここで歌舞伎がかかる時は京都から直行バスも
出るそうですが、かなり時間もかかりそうですし、
日帰りは大変なので、前泊か後泊が妥当そうですが、
どこに泊まるのか(福知山?舞鶴?城崎?)?ちょっと本気で来年は考えようかしら



















