2026.06.16

「六月大歌舞伎」を観る

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今月の歌舞伎座は播摩屋&萬屋祭
昼の「金閣寺」も勿論期待通りでしたが、夜の「盟三五大切」は
2プロの見比べに妙あり、でした。

萬屋さん、と言うと昭和世代は映画スター、先代の
錦之助さんのイメージが強烈ですが、今回のメンバーを
見ると、コンスタントに映像に関わっているのは
獅童くんと隼人くんくらい。
しかし、今月の顔ぶれを見れば、歌舞伎を見ない人
にも知られた中村屋や成田屋、音羽屋などの皆さんに
知名度こそ及ばないものの、いま歌舞伎を上演すると
して、このメンバー抜きでは成立しないほどの「一大
勢力」

昼は古典の名作「祇園祭礼信仰記~金閣寺」
四月に「十種香」の八重垣姫をなさったばかりの時蔵
さんが、東京で初の雪姫。
このところ古典女形の大役が続く時蔵さん。
「彦山~」のお園以来(正確には「朧」のツナさま以来(笑))、
「たおやかだが、解決の糸口を掴むと知恵と行動力で
立ち向かう賢い姫」、が時蔵さんにはぴったりで(個人の
見解)、全く、天賦のイラストレーター力でネズミを
出現させれば、父親殺しの真犯人を周りに知らせる
事ができるとわかってスイッチが入った後の格好
いいこと(笑)
前半のもじもじが嘘のように、殺気だった野郎に
囲まれても一歩も引かない、ファイターでした。
それにしても女形さんて、美しい姿勢と着物の下で、
どれだけ重い着物と鬘を支えながら、ほぼ不自然な
身体(今回など半分は後手に縛られてる)を保つ努力をされているのやら
色々思い致してタメ息つきながら拝見してました
獅童くんの大膳
顔に釣り合う国崩しで、漸く獅童くんもこの手の役を
歌舞伎座本舞台で、と感慨でしたが、まだちょっと
着ぐるみの下から「そこらのあんちゃん」の下地が
見え隠れするのと、刀袋の紐の扱いが覚束ないのは、
さすがになんとかしてほしい(汗)
かっこよすぎる隼人くんの東吉は「義経か」と苦笑
してしまいましたが、歌昇くんの正清、種之助くんの
鬼藤太が安定、米吉くんの狩野之介が宝塚の男役か、な
美麗ぶり。
錦之助さんが珍しく慶寿院で尼とはいえ女性役でした
(そう言えば先般、衛星劇場でオンエアされていた、
仁左衛門さんの「助六」で、信二時代の錦之助さんが
並びの傾城をされていたのを見ました)
と、ここまで、全員三代目時蔵さんの直系のご子孫、
team「小川」
すごいことです

そうそう、狩野之介と雪姫、互いに縄目で近づけない、
にするなら、雪姫を縛るのは下手の桜の方が良さ
そうなのと(普通に動線が交わる)、東吉の樋を外して
滝から水を井戸に流す場面の、仕込まれた水流(ファイ
バー?)が巨大な流し素麺みたいに見えるのが気には
なりましたが、何よりこの舞台のMVPは、雪姫ちゃんが
裾と足でぐちゃぐちゃにしたまま、彼氏のところに
飛んで行ってしまったために不規則に残る、明らかに
滑りやすそうなカサカサの桜吹雪の床でとんぽを
切った四天さん。
プロですね

夜は「盟三五大切」の通し
突飛な設定に世界観の綯いまぜ、かっこいいヒー
ローが一切登場しない、リアルが作風の南北の特徴が
びちびち詰め込まれたこの演目を最初にしっかり
見たのは、勘三郎さん&橋之助さん(現・芝翫)が今月
同様、「北番」「南番」と称して、源五兵衛と三五郎を
交互に演じたコクーン歌舞伎
また、個人的には、この外題を聞くと思い出すのが
ドラマ「古畑任三郎」。
犯人の歌舞伎役者が、犯行後に直ぐ現場の劇場から
帰らなかった理由を古畑に問いただされて、「来月
演じる予定の『盟三五大切』の源五兵衛が犯行の後に
茶漬けを食べる設定。それがどんな気分になるか、
滅多にない機会だったから確かめてみたくてやった」
と役者魂、みたいな答えをするシーンが印象的でした
最近は三谷さんも歌舞伎や文楽を手掛けているので
不思議ではないですが、「古畑」の頃は現代劇の三谷さん、
と言うイメージしかなかったので、歌舞伎演目がらみの
ストーリーが意外だったのもあります

今回は、中村屋兄弟と音羽屋中堅メンバーがメイン。
勘九郎さんの中村勘三郎家も遡れば三代目時蔵の
弟さん(もう一人の兄弟が初代吉右衛門)なので、
当代勘九郎さんからすると祖父で繋がる血縁という
ことになりめすあ。

今回は、勘九郎くんと松也くんが、源五兵衛と三五郎を
交代で
演じる2プロ制
先に勘九郎さん源五兵衛版、後から松也くん源五兵衛を
みましたが、演出も印象も随分違いました

普段、善それも正統派キャラが多い勘九郎さんですが、
今回の源五兵衛は、感情をほとんど見せずに、マシーンと
化して次々殺しを重ねていく、なかなか背筋が冷える
仕様
それだけに先日の「伊勢音頭~」の時も思いましたが、
やはりラストの「討ち入りメンバーおめでとうございます」が
益々もやっ、とで、久しぶりに21時近くまでの長丁場を
見て劇場を出た東銀座で、どっと疲れがきました(笑)
殺した小万の首を袂に抱えて外に出る場面に、勘九郎版は
本水が使われ、血のりも使ったようで、雨で血のりが
流れ落ちて、花道に赤い跡がついていました。
二人の男性に翻弄される小万は七之助くん
いまこの役をできるのは多分七之助くんだけかも。
松也くんの三五郎は、魅力的だが、びびりがすぎて、
悪党と言うより、金目当ての軽いノリで、詐欺を
始めたら抜けられずズブズブという、最近のニュースで
聞くような事件話に近い雰囲気。
また、歌昇くんの六七八衛門の忠実な家来ぶり。
もともとこの役は、どなたがなさっても儲け役なの
ですが、歌昇くんは、昼の正清の目線バチバチの
殺気を消しさっての別人ぶりが凄い
彦三郎さんが、5月の「菊畑」に続いての老け役ですが、
吝嗇な大家にしてはイケボすぎ(笑)、幽霊を演じても
お声でバレバレ(笑)
お元気だったら片岡亀蔵さんのお役でしょうか

(松也くん源五兵衛くん版追記)
数日おいてから、松也ぬん源五兵衛版を拝見しましたが、
二人の役者が役を入れ換えた、と言う以上に仕上がりが
違いすぎてびっくりしました
とにかく一番の違いは源五兵衛のスタイル。
小万と三五郎に騙されたと知った源五兵衛、勘九郎版は
五人切り以降、上記の通り、殺し場で感情を全く
見せない殺人マシーンだった一方、松也版は怒りを
隠さないので、三五郎と小万が隙をついて逃げたと
知った時、殺した伊之助の死体を飛び越えて飛んで
いくし、小万の首を抱いて歩く仕草も、勘九郎版は、
たもとから包んだ着物?の端がだらりと垂れたまま
でしたが、松也版は、それをいとおしそうに抱いていて、
明らかに人の感情が滲みました

演出でも、例えば除幕の舟の場面、雲が晴れて源五兵衛の
舟が見えた瞬間、勘九郎版は既に二人の気配を感じた
のか、源五兵衛は既に屋形船の屋根の外に立っていた
一方、松也版は、見えても本人はおらず、すだれを
上げて漸く、「小万」と声をかける
意外に松也版の方がより怖い
五人切りでも、勘九郎版では三五郎と小万はどさくさに
紛れて玄関から逃げていましたが、松也版は正面の
丸窓から一旦裏に逃げてから逃走。
小万を殺しての源五兵衛の引っ込みも、勘九郎版が
「コクーン風」派手な本水に対して、松也版は本水を
使わず、古典的な雨音だけ。
そのため勘九郎版では場面転換は雨の後処理のため
一度幕を引かれましたが、松也版では回り舞台で
すっきり、「愛染院」へ。
また、源五兵衛の身代わりを申し出て引かれていく
六七八衛門に、せめてもと手拭いで頭を覆ってやるのも、
勘九郎版が家の外で、行きかけた六七八衛門を引き
留めましたが、松也版は出ていく前の室内で頬かむりを
してやっていて、 こんなタイミングでさえ、思いやりを
感じました

無表情の勘九郎版の方が、スプラッター的に怖いの
ですが、たまたま松也版を観た日に、大向こうさんが
いなかったからなのか、お客さんが物語に引き込ま
れすぎたのか、五人切り以降、場面転換は勿論のこと、
見得でもどんどん拍手がわかなくなりました。
勘九郎版はそれでも大家の幽霊ごっこは勿論のこと、
小万の首が茶漬けを食べるシーンは悲鳴なり笑い声が
しましたし、見得で拍手もありましたが、松也版は
キマっても拍手パラパラ、笑いもパラパラで、完全に
舞台の雰囲気に呑まれ、幕が下りると客席から「ふぅ~」と
言う詰めていた息、あるいは溜め息が漏れていて、
何やら歌舞伎、よりも、実録ものを観た感じがしました

実は勘九郎版のあと、幕切れの後味の悪さと終演時間の
遅さに、松也版は、五人切りで帰ろうかと思っていた
のですが、結局、違いが面白く、最後まで見ました。
比べてこその面白味がありました

とは言うものの、個人的には南北、と言うからには、
怪しげな、江戸の光の届きにくい裏町の、ひやりと
する湿気や手触りのようなものがやはりほしいの
ですが、まだみなさんお若いからでしょうが、まだ
そのあたりがさっぱり薄め。
濃度と湿気と、体温が籠ってもわり、とくるような
再演を待ちます
勿論、いつかは、時蔵さんの小万も見たい(笑)

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2026.06.11

宇治に小旅行

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松竹座に「御名残五月大歌舞伎」を見に行くタイミングで、
GWからちょっとずらしての初夏旅行に行ってきました

宇治橋には、東詰には狂言の演目名にもなっている
「通圓茶屋、「宇治十帖」に因んだ紫式部の石像も
ありましたが、この後、大阪で見た文楽「生写朝顔話」の
冒頭の出会い、蛍狩のシーンの舞台にもなっていて、
昔から名所だったのを実感しました

まずは、去年秋の紅葉のライトアップイベントを予約
しておきながら、時間が間に合わずやむなく行き
そびれた平等院
そんなわけで今回は平等院ファーストで、駅から直接
平等院へ行ったのですが、帰ってきたあと、先日
「ブラタモリ」が特集していたのを見たら、平等院に
行くには、先に宇治上神社から川を越えて行けば
良かったらしいと知って、全く勿体無い事をしたなと
思いました。
平等院自体は、確かずいぶん以前に一度伺った事が
ありましたが、当たり前のように、周辺はずいぶん
印象が違いましたが、それでもこれが平安時代から
変わらず建っているのは、やはりなかなか凄い事

「ブラタモリ」によれば、頼兼おじいちゃんも道長
パパも62歳で死んだため、自分もその年で死ぬかも、と
言う年になるのが、末法二年目が重なったと言う、
頼道さんの個人的不安が、極楽地上具現化プロジェクト、
平等院に繋がったそうですが、平安も令和も、人間
不安になると何かにすがりたい。
できる人はお金で解決できるのでは、と言う方向に
動くものなんですね。
頼道さんは桁外れお金持ちだったらしいので、現世に
極楽作れましたが、庶民のわたしくらいだと、せい
ぜい御守りをいつもより奮発するとか、高いサプリを
ポチッとしてしまうとかしかできませんけど

平等院からは、躑躅の名所と聞いていた、三室戸寺
まで軽くハイキング
山の中腹あたりだと地図で認識はしていて、確かに
軽い傾斜を上りましたが、寺域は情報に違わず見事な
花の盛りに間に合い、歩いた甲斐がありました

次に行くことがあれば、絶対、宇治上神社に行き、
此岸から彼岸は行こうと思います
やはり紅葉ライトアップリベンジするかな

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2026.06.09

瀧夜叉姫とツナさまを同じ日に観る贅沢(笑)

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」、5月に衛星劇場で
オンエアされた「幸四郎ライ」版に続いて、先週末に
WOWOWで「松也ライ」版がオンエアされて、結局、
どちらも時蔵さんツナさまがんばれーになってる訳
ですが(笑)、松也ライ版オンエアと同じ日に、Eテレの
「芸能きわみ堂」で、舞踊「将門」特集。
舞踊なら見ないか~と思ったら、瀧夜叉姫を時蔵さん
でのスタジオ収録のオリジナル版、高木秀樹さん
解説つきとあり、慌てて録画して拝見。
またまた瀧夜叉姫の良きこと(笑)
ツナさまとビジュアルまるで違うけれども、強い姫
ぶりに惚れ惚れ。
結局、時蔵さんならなんでも良いだけだな(笑)

一方、歌舞伎座ではつい4月の「十種香」の八重垣姫で
奇跡的美しさ炸裂だったのに、今月は「金閣寺」の雪姫と、
このところ古典女形の大役も続く時蔵さん。
「知恵で立ち向かう賢い姫」は時蔵さんの得意とする
ところ、と認識していて、全く、周り殺気だった野郎に
囲まれても一歩も引かない雪姫でした

しかし、八重垣姫でも思いましたが、美しい姿勢と
着物の下で、どれだけ重い着物と鬘を支えながら、
ほぼ不自然な身体(今回など半分は後手に縛られてる)を
保つ努力をされているのやら
色々思い致してタメ息つきながら拝見してました

そしてジブリ作品なんと分かんないし、と、ぶう
ぶう言いながらも、結局、来月も時蔵さんエボシの
ために「もののけ」チケットも取ってしまいました(笑)

萬屋&播摩屋勢揃いの、歌舞伎座6月の感想はまた
別項にて、ですが、「金閣寺」の米吉さんの珍しい
立役が、まるで宝塚の男役のようだったのは、時蔵
さん雪姫と並んで特筆もの

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国立劇場文楽公演「生写朝顔話」「伊勢音頭恋寝刃」を観る

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5月の文楽は北千住シアター1010
国立劇場がノマドワーカーしているお陰で?、北千住
にもここ1~2年行く機会が増え、最近漸く、場所、
アクセス、そして前後のお楽しみも判ってきました

今回は1、2部が、いつもは「大井川の段」しかやらない
ものだと思っていた(笑)「生写朝顔話」の通し、そして
3部が「伊勢音頭~」のハイライト「古市油屋の段」

3部は玉男さんの貢でしたが、個人的には玉男さんは
色男や心中に走る商家のぼんぼんより、やはり百戦
錬磨の武将や、歴史上の苦悩する英雄の方がお似合いで、
刀を振り回すだけではちょっと物足りないか(笑) 
文楽では「青江下坂」は名刀だけど表立って妖刀設定が
なく、貢が意思を持って振り回している感じがする
のも一因かもで、散々殺しておいて、「お家再興成って
めでたしめでたし」はちょっとだけ後味が良くない。
「盟三五大切」の源五兵衛が実は赤穂義士の不破で、
言うラストとちょっと似た感じ
歌舞伎だと、他にも万野のキャラクターとか、お鹿も
含めて工夫があるので違和感が薄まっているのかも
ですし、やはり歌舞伎や役者と言う人間が演じるのが
一番の嫌さ回避ポイントなのかも

さて「生写朝顔話」
全体像が見えて判ったのは、これ、昭和の典型的な、
かなり甘口の「すれ違い」メロドラマの源流で、かつ、
いまなら「聖地巡礼」になりそうな、東西の名所を
織り込んだロードムービーでした。
例えば冒頭の出会いの場面は、つい先日、私も偶然
行ったばかりの京都の宇治川。
ほかに明石、浜松、島田に大井川と、何故かみな
川や海の近くですが、おそらくは江戸時代の観客も
宇治橋や島田宿に行った時には「ここなのね~」と
偲んだり、船に乗ってなりきったりしたかも(笑)

運命の一目惚れ、取り交わす象徴的アイテム、無理
矢理の別離、音信不通、誤解、ぎりぎりのすれ違い、
病気あるいは金銭的困窮による落魄、善意の第三者の
手助け、奇跡の再会、困難を乗り越えての恋の成就、
めでたしめでたし(笑) のてんこ盛り。
かつ、主人公が最後まで生きていて、犠牲者が最小限
なのは文楽には珍しいかも(笑)

スマホで24時間繋がれる令和の今となっては、すれ
違い自体が滅多には起こらない訳で、最早、ファン
タジーの世界線にしかなりませんが、駅の伝言板に
「先に行ってる」とかがせいぜいで、有楽町と日比谷の
同じ番号の出口で、延々と相手の来ないのをイライラ
して待ち、待ち合わせを諦めて結果現地で合流した
相方と大喧嘩した記憶のある(笑)昭和の人間には、
まだ感覚はぎりぎり理解可能(笑)

しかし意外にも、和生さんの遣う阿曽次郎は存在感が
薄くて、ちょっと残念。
ヒロイン深雪と深雪に献身的につくす乳母・浅香は
日程前半後半で、簑二郎さんと勘彌さんが交替で
遣われていましたが、勘彌さんの浅香が激しい動き
でも崩れず、自分が話していない時も反応したり、
動作をしていてナチュラルでした
(「菅原~」の時の八重の長刀遣いも良かったし!)

何よりは勘十郎さん。
物語一番の三枚目キャラ、萩の祐仙を全身を使って
自由自在に操り、客席は笑いが絶えず。
もともと、人形と一緒に宙乗りし、狐と一体化して
空を飛ぶ勘十郎さんに、不可能はなさそうですが、
舞台で遣う用に拵えたお人形を一度だけ触らせて
いただいた事がありますが、支えるだけでもなかなかな
重みのある人形を複雑に操作し、しかも三人息を
合わせて見せる、それを忘れる程の 自由自在さは凄い
見事な操演と、芝居の中での祐仙の小者ぶりのギャップが
なんとも、でしたが、この手の正統派メロドラマは、
主人公カップル(死語か)より、二人を取り巻く敵役や
かき回すキャラクターの個性がポイントですし、
「大井川~」だけでは絶対に登場しないキャラクター
なので、楽しませて頂きました。
何より、「大井川の段」に至る、波瀾万丈?が理解
できたのが収穫で、これで以降「大井川~」だけの
「見取り」で見るときも、ちょっとだけ経緯がワカる気が
一番わかった事は、ここまで主人公2人の行動力が
空回りするのと、運の悪さが重なると、なかなか
共感しにくい、と言うこと。
経緯わからず、深雪にラストに起きる奇跡だけを
良かったねーと思う方が良いのかも(笑)

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2026.06.04

シェイクスピア強化月間?(3)「リチャード三世」を観る

Richard3

PARCO劇場

ラトクリフ。
森新太郎さん×吉田羊さんによる、シェイクスピア
シリーズ「リチャード三世」で、私が一番印象に残った
のが、意外にも愛希れいかさんが演じたこの人物。
そもそもバッキンガム、リッチモンド、マーガレット、
アンと言った名前のある人物から、市長、枢機卿、
市民など、肩書きだけで語られる人物まで、矢鱈と
登場人物の多い「リチャ三」なため、ラトクリフ、と
言っても基本的には「誰?」です(笑)が、ティレル、
ケイツビーと並んで、リチャードの手先となって
汚れ仕事をしたり、ただの使いっ走りになったりと、
まあまあ報われない役割の人物で、だいたいのカン
パニーではその他大勢、文楽で言えば、一人遣いの
ツメ人形の役。
それをアンも演じる役者さんが演じるのもなかなか
珍しいのですが、今回印象に残った理由は、幕切れ
直前に、無防備な状態のラトクリはが、リチャードに
呆気なく殺されるシーンがあったため。
そもそもそんな場面あったかしら?レベルだったので、
見終わってから直ぐに、松岡先生訳版の戯曲を確認
したら、確かに結構最後の方5幕3場まで名前は出てくる
ものの、259ページを最後に突然登場しなくなる。
しかし、リチャードが殺した、とまでは指定がなく、
おそらくは森さんが読みといた上での演出。
確かに「死」を見せる事により使い捨てられた感じが
強くなりましたし、この時点で既にリチャード自身
敗戦の自覚はあったはずで、巻き込んできた部下に
永遠の任務終了を与えたか、自殺の一部なのかもとか、
考察していました。

蜷川さんもト書き、セリフには忠実が有名な方でしたが、
書いていないことは自由、と、様々な工夫をされて
いたのを思い出しました

シェイクスピアの戯曲はそもそもセリフが多く、
従って情報が多い。
日本では演出家が狙い、あるいは尺の都合などで、
無くても前後の整合性のつくもの、あるいはカット
した登場人物に関するもの、日本人観客に馴染みの
薄い、例えば宗教的、あるいは歴史的人物に言及する
セリフをカットしていくと、大体毎回同じ箇所が
カットされるのですが、時々、耳馴染みのないセリフが
語られるので、終わってから戯曲で確認すると、
当然のようにちゃんとある、と言う事が結構あります
先月のさいたま芸劇での「リア」でも、山西さん演じる
グロスター伯(リチャード三世もそう呼ばれるので
ややこしいが)が、ゴネリル、リーガンとその夫たちに、
目を潰される直前の場面で、彼らに
「私の賓客であることをお忘れなく、非道なことは
お止めください」
と言うセリフ、え、こんなセリフ言ってたかなぁ、
と思って、やはり後から松岡先生訳を見たら、ちゃんと
ある(当たり前)
ただこのセリフ、耳で聞いたときは、実はリーガンや
その夫のコーンウォールに対して、
「(あなたたちは)私の居城に滞在する客なのだから、
客としての品格節度を持ってほしい」
と諫言しているのかと勘違いしていて、
「あれ、姉さんたちは招待客だったか?」
と思ってしまい、後から
「(リアは)私の客なのだから、(他人の客に)手荒な
真似をするな」
と言っている事に気がつきました
全く主語抜きで文章が成り立ってしまう日本語、
トラップ多めです

さて、改めて森新×羊さんのリチャード三世です

インタビューを読むと、もともと三部作構想で、
今回が「完結編」だそう。
ブルータスの正義感が身を滅ぼしていく「ジュリアス・
シーザー」は、陰謀だらけの政治家たちを女性キャストで
演じることで、政治家=男性、がアンコンシャス
バイアスであることと、政治権力闘争が社会に普遍的な
ことと判る、画期的な「大発明」のお芝居で、これは
期待、次は、政治家の家庭問題、主人公は単なる
マザコンか!をあぶり出す(笑)「コリオレイナス」が
良いなぁ、と期待しましたが、何故か大定番にして
難易度Maxの「ハムレット(Q)」(笑) に。
羊さんの明瞭なセリフは素敵でしたが、何処か物
足りなく終わり、今回は「リチャード三世」。
今度こそ羊さんならではが見られるか?、を期待して
伺いました。

しかし「ジュリアス~」のブルータスとは真逆の、
ただでさえダークキャラのリチャードに、身体的
表現をつけて、ノーブルな顔立ちの羊さんがやるのは、
「美人なのにエグい」には見えましたが、個人的には
寧ろすべてやらずに、セリフだけで「美人」がどこまで
「悪党」になりきれるのチャレンジの方、の方がより
エキサイティングだった気はしました

この舞台でおもしろい試みだったは、幼い王子たちの
役を役者が演じるのでなく、旧・こどものための
シェイクスピアシリーズのように、人形で登場させ、
人形遣いの専門スタッフでなく、メインキャストを
演じる役者さんたちが人形を操り、セリフも言って
いたこと。
「リチャ三」における王子たちは、身内でありながら、
リチャード自身の王権の最大の脅威だが、そんな中
例えば3幕1場で王子たちが、
「雑草は良く伸びる」
とリチャードに対する皮肉ともとれるセリフを言ったり、
リチャードの背中に乗ろうとするシーンがあり、
小柄な大人の俳優さんがなさってさえ、リチャードの
背中に乗る、は難易度高く、確かに人形が合理的でした

何よりも、情報がやたらと多いこの芝居を、比較的
少人数で演じるこのカンパニーをサポートするためか、
場面ごとに、舞台上方に、ちょうど文楽劇場のように
字幕が出たこと。
しかも「忠臣蔵」の六段目「勘平切腹」や、「菅原~」の
「桜丸切腹」のように、予め起きる事を「ネタバレ」
するようなリードでした
まあ、沙翁作品、とりわけ「リチャ三」にネタバレも
ないんですけど(笑)、そもそも登場人物が多く、
人間(血縁)関係が煩雑な芝居なのを、そこまではっきり
見た目を変えないで複数人が何役もしたために、
複雑さが結局解消されなかった(少なくとも私には)
対策だったのか?
更にその字幕のためなのか、元からその高さでやると
決めていて字幕がそこに出たのか不明ですが、舞台幕が
オープニングではリチャードの下半身しか見えない
高さから始まり、リチャードが八分くらいまで押し
上げて進行し、ラストでやっと全部上がりました
意図はちょっと不明。
いつも明確なところが大好きな森さんの演出にしては
ちょっとモヤっと、でした、
結局、三部作は残念ながら最初の「ジュリアス~」が
一番羊さんがなさった意味があったな、というのが
個人的結論でした
(シルビア・グラブさん、松本紀保さんと並びも凄かった
ですけど)

因みにこちらの舞台で、初めて新しいパルコステージの
チケットシステムを利用しましたが、申込サイトと
電子チケット表示用サイトが違うのが凄く煩雑。
色々事情もありそうですが、個人的にはシンプルに
紙チケットが出せるか、電子チケットでも同じサイト
内で完結できるのが気が楽です
(たまに劇場入口の電波が悪くてイライラしたりしますし)

と言う訳で、5月の「シェイクスピア強化月間」?は、
やはり、Theシェイクスピア俳優、鋼太郎さんに
舞台を思う存分、のたうち回らせた(笑)長塚さん演出
「リア」が一番印象的でした

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2026.05.30

シェイクスピア強化月間(笑)その2「ハムレット」を観る

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日生劇場
デヴィット・ルヴォーさん演出で、「ハムレット」を
染五郎くん、オフィーリアを當間あみさんと言う
情報だけで、チケット購入していて、あとの配役は
全部当日知りました(笑)

開演前だけ撮影許可が出ていたので、舞台上のスク
リーン(始まってから可動式と判明)にモノクロームの
波の映像が流されていたのを撮影しましたが、何しろ
日生劇場。
個人的にはベストポジションと思っている2階後方
席からだと、天井や壁の唯一無二の独特の曲線と
ラインが照明に当たって構成されるキラキラな輝きが、
舞台映像の無機質な色の対比で格段にお洒落でした

それにしても初のストプレに「ハムレット」を選び、
これだけのセリフを滑舌だけでなく、きちんと届け
きる染五郎くん、すごすぎる。
先年、千之助くんが「ハムレット」をなさった時も
思いましたが、歌舞伎役者が、叩き込まれ、子ども
時代から舞台で鍛えられまくった、セリフ術をはじめと
するさまざまな演劇技術と、それを普遍化するポテン
シャルは凄まじいの一言。
とにかくあの沙翁の罰ゲームみたいなセリフを覚えて
いるだけでなく、表現し、伝える能力、更に今回の
染五郎くんで言うと、特に踊りから来ているのだと
思いますが、手の表現が綺麗
顔が小さいのかも知れませんが(笑)、手が大きくて
指先までの美しさが際立ちました 。
通例、ハムレットは、燃え尽きるばかり、声が枯れん
ばかりになるか、眉間に皺の、哲学者のように悩み
どうみても行動力欠如、のパターンが多いですが、
染五郎くんのは、独白も、更に俯瞰して物語るような
客観性、冷静さが感じられ、独特でした

クローディアスの石黒さんは、初めて舞台を拝見
しましたが、明らかに「政治家」な一方、ガードルード
には骨抜きと言うのが唯一の弱点なのが判りやすい(笑)
ガードルードは元宝塚の柚光香さん
「イケメン(個人の感想です)パパを捨てて、こんな醜い
(個人の感想です)クローディアスに走るなんて安易な
選択をしやがってっ!」
とハムレットにボコボコに責められるので、意思の
弱い女性として描かれがちですが、柚光さんのガード
ルードは、
「じゃあどうすればよかったのよ!」
と逆ギレする
(ちゃんと台詞にあるんですけどね笑)
しかし考えてみれば、クローディアスがいつから
ガードルードを狙っていたのか(笑)
恐らくはガードルードの実家にも、デンマーク国の
統治に関わる政治的パワーか財産があってのこと
とも思え、また、ガードルードにしても、クロー
ディアスと再婚しなければ、ただの前国王妃、として
宮廷内のパワーを失う。
それを考えると、クローディアスとの再婚にはそれなりに
メリットがあっただろうし、彼女が王妃なら、その
次を、愛する息子ハムレットに受け継ぎやすいと言う、
彼女なりの愛情があったかも
となれば、息子の「言い種」を聞けば、それはないでしょ
と逆ギレするのも意外に納得。
そしてパンフレットのインタビューにありましたが、
最後の最後、毒入りの杯を煽ってしまってからながら
漸くクローディアスの発言に「NO」を言うのをみれば、
彼女なりに息子を愛してたんでしょうね

また、この芝居、台詞量からしてハムレットが一番
多く、ほぼ全ての登場人物と会話するし、どうしても
ハムレットだけ芝居になりがちですが(ただし、鋼太郎
さんがクローディアスをやった時だけは、クロー
ディアスの芝居になってた事はあるけど(笑))、今回は
ルヴォーさんの演出の賜物でしょう、ハムレット&
ホレイシオ、ロズ&ギル、クローディアス&ガードルード、
ポローニアス&レアティーズ&オフィーリア、と言った、
親子、友達、夫婦、と言った関係性が丁寧に描かれて
いたのも印象的でした
ただし、ハムレット親子3人のインパクトが強過ぎて(笑)
普通の上演ならもう少しクローズアップされる、
ロズギル、オズリックなどの「個性派脇役」の影が
若干薄かったかも
特に、三谷さん組のマルチプレイヤー、梶原善さんの
ポローニアス。
こずるさとか、言っている事を100%信じにくいが
世渡りが上手いみたいなキャラクターが似合うか方と
思っていますが、親子3人の存在感に負けて影が薄く、
またポローニアスは、笑いも含めてストーリー的に
重要なセリフをいくつも吐くのに、あまり良く聞こえず
残念でした。
當間さんは、翻弄されるか弱きヒロインにぴったり。
初舞台だそうですが、通る質の声は舞台に向いていそう

現・幸四郎さんも染五郎時代、かなり若い頃に「ハム
レット」を演じておられますが、何より高麗屋さんの
家系で翻訳物舞台、と言えば、やはり染五郎さんの
祖父、現・白鸚さん
ミュージカル「ラ・マンチャの男」は数回やりました、
レベルでなく、「勧進帳」と並んで長く持ち役にされ、
ブロードウェイ公演もされていて、歌舞伎(松竹)と
ミュージカル(東宝)、いわば演劇界の二刀流の大先達。
最近の染五郎くんの声や、化粧の顔を見ると、パパ
幸四郎さんと言うより明らかに白鸚さん似ですし、
幸四郎パパはどちらかと言うと、新感線など、ネオ
時代劇に血が騒ぐタイプのようなので、ひょっとすると、
今後二刀流の血は染五郎くんに行くのかも

そんな染五郎くんにはぜひ、いつか、「リチャード2世」を
演じて欲しい
「2」は、シェイクスピアにしては珍しく、全て韻文で
書かれていて、悲惨な物語なのに、セリフは美麗。
歌舞伎の義太夫ものと共通点のありそう。
死までひたすらbadチョイスを繰り返し、じわじわと
落ち目になり、最終的には王冠を失い、命を落とす
ダメダメなのに、「落ちて行く私よ」みたいセリフで
自分を微妙に他人事のように語るのをぜひ染五郎くんで
見たい(笑)

ともあれ、新しいハムレット役者を見出した素敵な
舞台でしたし、ルヴォーさん、衰え知らず、恐るべし
でした。

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2026.05.27

「風、薫る」先週から「復帰」(笑)

Kaze

序盤、Wヒロインのそれぞれエピソードを拾うために
話が散漫で、テンポが悪いしで、一度週間ダイジェスト
だけ流し見してましたが、ここにきて藤原季節くんに、
看護のバーンズ先生(昔、映画版「ハゲタカ」で鷲津
ファンドの秘書役されてた方!)、そして谷田歩さんと
気になる役者さんがご出演になり、また、看護学校に
入って、少しずつ話がまとまってきたので戻って?
きました

先週は何より、仲間由紀恵さん演じる千佳子さんが
メインでしたが、1つ大笑いしたのは、夫が見舞い
(機嫌取り?)に持ってきたのがカステラだった事。

NHKドラマで、仲間さんにカステラ、と言えば、
ドラマ「大奥」ファンには、ピンとくるはずの、あれ、
です(笑)

脚本の指定か、現場の演出か分かりませんが、病院に
そんな物騒な物を持ち込むなんて!(笑)
誰が気がつかなくても、仲間さんご自身は流石に
気がつかれたはず

確信犯ならこの朝ドラ、パンチ効きすぎです(笑)

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2026.05.26

シェイクスピア強化月間(笑)(1)彩の国さいたまシェイクスピアシリーズver,2「リア王」を観る

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今月は、首都圏でシェイクスピア祭
しかも、さいたまで「リア」、日生劇場で「ハムレット」、
PARCO劇場で「リチャ3」と、どれも上演頻度の高い
作品ばかり。
勿論?コンプリートしてきました(笑)

まずは、さいたまで、鋼太郎さんの「リア」。
「リア」自体もここ最近、首都圏では「祭」状態で、
PARCOで段田さん、横浜で木場さん、新宿Milano-zaで
大竹さん。
そろそろ鋼太郎さんもやるだろうな、とは思っていた
ので、満を持して大トリの登場、と言う感じでしょうか。
(夏には芝翫さん、秋には内野さんもなさる予定)

ただ、鋼太郎さんが芸術監督になってからの鋼太郎
さん演出版「さい芸シェイクスピア」シリーズは、
個人的には「ヘンリー五世」と、「ヘンリー八世」以外は
蜷川さん版の時のようにリピートする気になれない
作品(演出)が続いています

「~五世」については、生前、蜷川さんが演出された
「~四世」の続編的位置付けだったこともあり、鋼太郎
さんにも御大への遠慮?があったのか、蜷川さん
カラーが強かったですし、「ヘンリー八世」は、完全な
台詞による政治椅子取りゲームで、阿部さん演じる
ヘンリーを取り巻く、強面オヤジたちの権謀術数の
罵りあいが面白かったのは、ひょっとすると、その
内容から、鋼太郎さんお得意の叫び、剣を振り回し
走り回る劇画的演出に持ち込めなかった?怪我の功名?(笑)

しかし、それ以外は、鋼太郎さんご自身の劇団(演出)版
から傾向で、比較的テキレジ多め、ご自身が役者さんな
だけに「役者が乗れるシーンはモリモリ」演出。
勿論、蜷川さんも巨大血糊を落とす、とか、巨大福助
登場させるとか(笑)「開始3分で観客を引き込む」
目論見で、インパクト大な演出でしたが、鋼太郎さん
版は、演技過剰演出で、私の好みとかなりずれて
いました
何より、シェイクスピア役者・鋼太郎さんを見たい
観客としては、演出を兼ねるために、肝心の「役者」
鋼太郎さんへの「演技指導」が後回しになっている感じで、
鋼太郎さんの良さが最大限まで引き出されていない、
詰めの甘さや妥協がある気がしてましたので、今回も
演目発表時は、ご自身演出だと、2幕までこちらが
持たず途中退散か、と不安だったのですが、幸い?
今回は演出を長塚さんに託して、役者に専念されると
知り、ちょっと安心(期待)して伺い、結論から言えば、
期待通りの「シェイクスピア役者・吉田鋼太郎」を堪能
させて頂きました

5月の与野本町駅前は、バラが楽しみです。
シリーズの「ヘンリー6世」で、白薔薇(派)赤薔薇
(派)の対立が物語に登場するので、シェイクスピアを
上演する劇場のある駅にぴったり。
今年は丁度満開のタイミングでした

観劇日は、ちょうど蜷川さん10年目の命日。
もう10年、とは本当に早いものです

奥行きが特徴の舞台には書割もなく、プレイエリア
には土俵状に丸く土が盛られただけ。
途中、椅子やあばら家など最小限のアイテム以外は
なく、装置の助けがない分、役者のチカラが引き立つ
舞台でした

家庭内介護が社会問題として顕在化した令和の今と
なっては、ゴネリル&リーガンは意地悪姉妹、コー
ディリアがシンデレラ的な不幸な立ち位置、と言う
単純な構図ではない事が、400年経って改めて証明
された感じ。
確かに二人とも父親に対して冷酷だし、寒い野外に
放置するとか酷いとは思いますが、 おそらく姉妹は
これまでも、散々ワンマンなパパ社長のワガママに
随分我慢してきたはず。
しかし相続となれば話は別。
これまでの我慢が少しは報われるならまだしも、
リアパパ、
「本当ならコーディリアに全部相続させたいな~」な
本音をうっかり漏らしてしまい、流石にお姉様たちが
カチン、と来ても無理はない。
しかも、それぞれに家庭と統べる領地かある訳で、
いくら親が
「財産分与し(てやっ)たんだから」
と恩を売ってきたからと言って、
「今後は1ヶ月交替でそっち持ちで世話になるから。
あ、部下100人も連れていくから、よろ」
とか言われても、どうぞどうぞ、とは、流石に虫が良すぎ。
お姉ちゃんたちに物凄く同感してしまいました

更に彼女たちの逞しいのは、パパが駄目ならそれぞれの
夫、その夫も当てにならないと見限るとエドマンド、と
金と権力の匂いに非常に敏感なところで、次々と
サバイバルのためのフックを掛け替えますが、結局、
策士策に溺れ、相討ちと言うのは皮肉。
また、三姉妹それぞれの夫、エドマンドとエドガーの
兄弟、そして、エドマンドとエドガーの父親である
グロスター伯と、ケント伯と言う、リアの側近2人と
対比する何組かの人物たちが、みな等しく生き生きと
存在し、自身の思惑や決断、あるいは成行きで、
ラストに行きつくゴールが、まるでアミダくじの
ように分岐し、絡み合い、気がつけば果てしなく
離ればなれになってしまっている、人生ゲームの
ような群像劇であることが今回の発見でした

まあ「おいしい役」である筈のケント伯の山内さんの、
雰囲気はともかく、セリフお化け(鋼太郎さん、山西
さん、藤原くん)に囲まれると、どうしても声がくぐもり
セリフが聞き取りにくかったのは惜しまれましたし、
逆に、藤原くんのエドガーは、主人公レベルの力の
入りぶりで(笑)、役柄として難しいとは言え、もう
少しチカラを抜いて良かった気がする主役芝居。
リーガンの松岡さんは、先般「欲望~」でも篠井さん
演じる姉ブランチに振り回され、複雑な感情で関わる
妹ステラを魅力的に演じられましたが、今回も姉
ゴネリルとの共闘から、エドマンドを巡る対立など、
じわじわと見せる存在感が素敵でした。
身を偽ってリアを守護に徹するケント伯に対して、
息子の真意を見抜けず、不幸にズルズルと引き込まれる
グロスター伯は、子どもの真意を見抜けないお言う点
で、リアとの合わせ鏡ですが、新国立での「エンジェルス・
イン・アメリカ」でのロイ・コーン役が今でも印象的な
山西惇さんが、とにかく声が素晴らしく、賢臣ですら
身内に呆気なく足を掬われる、ままならなさが、
絶望的に素敵でした

そして、鋼太郎さんのリア
まさに正攻法のリアで、こう言う鋼太郎さんを見たかった!
THANK YOU、長塚さん!でした
叫ぶし、無茶苦茶に動き回るけど、勢いのままありったけ、
にならずに、叫ぶにも走り回るにもそれだけの理由や
動機が明確に見えたのが素晴らしかったです
長塚さんは自作品の演出もなさいますが、建て替え
前のPARCOでの、大竹さんと白石さんと言う二大
怪獣女優(誉めてます)ががっつり組んだ「ビューティー・
クイーン・オブ・リナーン」 とか、個人的には翻訳
戯曲の演出の名手、だと思っていて、今回も期待通り、
鋼太郎さんと言うモンスターをリミット一杯振り
切らせながら、国と言うマクロの視野と、家族と言う
ミクロの視点が見事にバランスよく両立された、
現代的な「リア」でした

次回は、11月「間違いの喜劇」
とにかく蜷川さん演出の小栗くん版と、萬斎さん出・
演出の「まちがいの狂言」が素晴らしすぎたので、
余り期待せずにおきます

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2026.05.23

大阪松竹座「御名残五月大歌舞伎」を観る

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現座最終公演
勿論、再開場を信じていますが、手を出すまい、と
思っていたのに、うかうか「閉店商法」に乗って(笑)、
緞帳柄手拭いと、席番プレート(勿論、レプリカ)を
買ってしまいました(汗) 
また、4月の舞台写真もあったので購入しましたが、
同じ松竹経営なのに、歌舞伎座と違って、筋書共々、
現金オンリーなのが、今や不便。
(因みに総合受付一部レジだけ、クレジット、バー
コード決済対応)
そもそも、東京では「筋書」「舞台写真」なのが、大阪に
来ると「番付」「プロマイド」と言い方が違うのも興味
深いところです

昼の部は「壽式三番叟」「源平布引滝~義賢最期」、
夜の部は「盛綱陣屋」を拝見

昼の部「壽式三番叟」
能狂言を歌舞伎が「松羽目もの」として取り入れた演目、
とりわけ「翁」(千歳、三番叟付き)や単独の「三番叟」は、
元の形式を、能楽堂や萬斎さん公演でかなりの頻度で
拝見し、そちらが完全にスタンダードで染み込んで
しまっているからか、歌舞伎版を見ると、どうしても
抑制のなさ、厳かさを犠牲にしての派手さ、賑やかさが
何ともムズムズして、回避しているのですが、今回は
お名残だし、と珍しく拝見
しかし結局、端々までオリジナルとの違いばかりが
気になってしまいました。
千歳が女形なのは、まだしも、一番びっくりしたのが、
千歳が翁面の入った面箱を恭しく持参したので
、当然、
翁がかけて舞うもの、と思っていたら、結局
箱は
運ばれただけで、後見が下げて終了。
よく考えれば、歌舞伎役者さんが能面をかけて舞う
のはなさそうな事
であれば寧ろ、面箱出す必要あるかな?とか、更に
邪念出まくりで、やはり松羽目ものは回避、が私には
正解かも(冷汗)

「義賢最期」
孝夫時代の仁左衛門さんが復活された、ラストの
「戸板倒し」や「仏倒れ」などのアクロバティックな
幕切れの演出で、松嶋屋さんの代表的演目になった
「義賢」。
いまは直伝で愛之助さんで演じられますが、何度
見ても、見る方は一度でさえヒヤヒヤハラハラして
いるのに、一ヶ月間やり続ける役者さんの技術と言うか、
フィジカルと言うか、メンタルと言うか、ひたすら
尊敬しかありません。
とりわけ、花形役者を上に乗せて、最後の最後に戸板
から手を離す、捕り手役の方の責任感は大変そうですし、
義賢役者さんとの息が見事過ぎです。
ラストだけでも凄い、とワクワクする訳ですが、
この物語、実は周囲の登場人物の活躍も見逃せません。
と言うのも、歌舞伎座で上演中の「菊畑」が、平家の
追及をおそれて周囲を欺き続ける常盤御前の夫・
一條大蔵長成の「活躍」を描く、「一條大蔵譚」の
前段である事が、意外に知られていないのと同様に、
「義賢~」も「九郎助住家」で有名な「実盛物語」の前段に
あたる物語で、それを踏まえると面白さが倍増する
気がしています
「義賢~」で瀕死の義賢を励ますのが小万、義賢は
その小万に死守した白旗を託し、小万の父、九郎助が
義賢の奥方、葵御前を背負って逃げる。
「実盛物語」は、その九郎助の家で展開しますが、
義賢に託された白旗を死守した小万は、途中で腕を
切り落とされる(切った人物はのち判明する)、
その腕だけを先に九郎助が偶然回収し、さらに運び
込まれた瀕死の本人に添えられると一時的に小万が
甦る、と、まあ書くと奇想天外ホラー展開すぎですが(笑)、
話として矛盾なく繋がっているので、時には是非とも
続けて上演してもらいたいです

因みに、この「実盛物語」、平家方として葵御前の
(=義賢)子の確保に来たはずの実盛が、意外な行動に
出るのが眼目ですが、このエピソードが取り入れられ
たのが、清水邦夫さんの戯曲「わが魂は輝く水なり」。
清水さんの「盟友」蜷川さん演出で、萬斎さんが実盛を
演じてコクーンで上演された舞台には、菊之助時代の
(八)菊五郎さんが実盛の息子役で、また、亀三郎
時代の彦三郎さんの貴重な現代作家作品出演作でも
あることは、更に壮大な蛇足(笑)ですが、しかし、
これもまた、見てみたい作品です

「盛綱陣屋」
歌舞伎の時代ものには、「陣屋」とつくもの、身代わり
首の検分(首実検)が眼目のもの、兄弟で敵味方に
なるもの、そして源平が絡む物語が多いために「盛」が
つく登場人物が出てくるもの、がそれぞれ複数あり
ますが、「盛綱~」はなんと全部入り(笑)
盛綱は兄の高綱と敵味方で、子ども同士(従兄弟)も
戦い、高綱の子は、盛綱の人質。
高綱の首が運び込まれてきて、盛綱が検分することに
なる、果たして?
「先代萩」や「袖萩祭文」と並んで、できる子役が複数
いないとできないお芝居で、今回は種太郎くん&秀乃介
くんと言う、現時点最強(個人の感想)子役兄弟が登板
このお二人、最近では勘九郎さんがなさった
「一谷
嫩軍記~組打」の「遠見熊谷」と「遠見敦盛」役での、
種太郎くんの完璧な歌昇パパミニチュアぶりが印象的
で、これは歌昇くん熊谷も見たい、と逆向きに思い
ましたが(笑)今回もお二人絶対的安定

仁左衛門さんの実盛の目鼻は勿論、眉1つわずかな
口元にも意味があり、本当に素敵でしたし、隼人くんが
やはりイケメンで(笑)
壱太郎くん、娘役より、この手の、文楽で言えば
「老女形」役の方が、かつらなのか化粧なのか分かり
ませんが違和感がない気がしました

次の大阪での歌舞伎は「新歌舞伎座」と発表されました
歌舞伎座、と言いながら、歌舞伎を拝見したことのない
劇場
上本町に移転してから入った事もないので、どう
なりますか

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2026.05.21

映画「黒牢城」に、新悟くん!

カンヌ絡みで予告編を見ましたが、いま「豊臣兄弟!」で
竹中半兵衛を演じている菅田さんが、こちらでは黒田
官兵衛なんですね
「女城主直虎」の時は、若さ炸裂の井伊直政だった
菅田くんが、わずかの期間を経て、秀吉の二大知恵者
(軍師)を演じるようになるとは、何だか感慨深い

何より、予告編で一番びっくりしたのが、最後にチラリと
映った、神経質そうな面長の特徴ある髭の「殿様」
これって、と思った通りで、先日「銀河の一票」で彌十郎
パパ演じる鷹臣の若い頃役でチラっと登場したばかりの
新悟くんが、なんと信長役で、カンヌデビューとは!

元々、見る気でいた映画でしたが、楽しみが増えました

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