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2004.10.24

「楡の木陰の欲望」を観る

寺島しのぶさん、そして私にとっては
つかさんの「幕末純情伝」などでの印象が強い
山本亨さん、萬斎版「ハムレット」で
ローゼンクランツを見た大川浩樹さん出演という
こと、また先だって告知のあった、大竹しのぶさん
吉田鋼太郎さん出演の「喪服の似合うエレクトラ」
と同じオニール脚本ということで、内容は
良く知らずにでかける。

THEATER1010(シアターセンジュ)

ゴールドラッシュ期のアメリカ、三人の息子のうち
兄二人(山本亨、大川浩樹)は西を目指して農場を
捨てて行った後、父親(中島しゅう)が若い後妻アビー
(寺島しのぶ)を連れて帰宅してくる。
兄二人とは母が違う末の弟エバン(パク・ソヒ)とアビーが
愛し合うようになり、許されざる子供が生まれ
エバンの異母弟として育てられる。
しかしエバンは父親からアビーがその子に
農場相続させるためにエバンを利用して子供を
産んだのだと言ったと聞かされて誤解し、
エバンとアビーはは激しく争う。
アビーはエバンの愛情を失うのを恐れてわが子を
殺してしまう。
それを知ったエバンはアビーに対する愛を確認して
二人で縛につく、という、かなりアブナイ内容。

寺島さん、「近松心中~」に近い、愛だけに生きる女を
だいたい想像どおりの熱演。
中島さんの夫も対抗しうる熱演。
それに比べるとアビーに愛されるエバン役の
パク・ソヒさんのセリフ術が弱く、なぜ子供を殺して
しまうほどアビーに愛されるのかを納得させる
魅力が今一つない(そもそも農夫に見えないし)

全体にはかなり頑張っている感じがするのだが
役者の資質に若干ばらつきがあって勿体無い。
山本さん、大川さん、出のインパクトが大きいので
ラスト、何らかのカタチでまた出てくるのかと思ったら
結局最初のシーンだけの出演だったのは
なんだか拍子抜け(まあオニールの脚本がそうなら
仕方ないですね)

それとこの舞台、最大の問題と敢えて言わせて
もらいますが、朝倉摂さん(同劇場の芸術監督!)
のデザインによる、丸ごと一軒の2階建ての家を
再現したセットが観客の集中力を欠く羽目に
陥らせているのです。

リアルなサイズで2階建てセットを建てることで
映画的な、つまりリアルな芝居ができるように
なったことは、この脚本には合っているだそうですが
(プログラムの対談より)、2階部分が当然役者の背丈
よりさらに高い位置に床があるため、1桁列で
見ていた私には、ほとんど2階での芝居は声ばかりで
役者の動きが見えず。
また、2階の2部屋の間に壁があるのが、見事に
まったく透けない本当の壁になっているので
壁の手前の人物の演技は見えても、壁の向こうに
いる役者の動きがまったく見えない、という大ストレス。
(下手寄りの席だった私は2階上手の
 アビーの寝室での動きはまったく見えず、また
 床面が高いので、2階の様子が手前のごく一部しか
 見えないままでした)

これを見切れ、とは言えないでしょう。
これは明らかに観客が見ることを拒絶していると
しか思えません。
これでは多分1階ですとかなり後ろから、
2階席がベストポジションということになります。

演出家は映画の演出も手がけるようですが
リアルの意味を勘違いしているのでは?
映画ならこういうセットを作ってもカメラが移動するので
ちゃんと見られますが、舞台の観客はモニターで
観劇しているのではありません。
観客に苦痛を与えるのなら、演出のリアリズムなんて
意味がありません

どうしても2階、そして壁を作るなら、2階を1階よりも
奥に作る、壁に透ける素材を作る。
でなければ、全観客がすべての芝居を見ることが
できる位置まで座席を取っ払い、全員がちゃんと
見えるようにする。
少なくともセット自体をあと数メートル奥に下げる。
どれかしてくれないと、まったくこの観客無視の
セットのおかげで首が非常に疲れました
(疲れても見れないところだらけでしたが)
この劇場の事を良く知らない、外部の美術が担当した
のであればまだしも、同劇場のことを熟知している
芸術監督がやった、というのが尚更歯がゆい。

それにしても「神よ」「万能の神よ」と繰り返される
のを聞くと翻訳物ってやっぱり根本のところで
日本人が100%理解できないところがあるだろうなあと
実感。

ううむ、地震のことを差し引いてもちょっと
不満の残る出来映えでした。
(期待が大きすぎたのかな・・・)

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コメント

舞台装置がディズニーランドと思ったのは私だけ?楡の木からはチップ&デールが家の裏からはカントリー・ベアーが出てきそうで…。まったりとした昼下がり、ゆる~~い空気の中でこのエバンにはミッキーの帽子が似合うかななんて想像してしまいました。残念。

投稿: 松風 | 2004.10.27 22:36

松風さま、なるほどディズニーランド、言い得て妙かも。ただし、私が見た回が回なだけに、あの楡の枝が頭上からいつ落ちてくるか、揺れる度にドキドキ、どちらかというとUSJの体感型恐怖系アトラクションのようでした。ともあれ装置やセットばかりに目が行くのもどんなものでしょう、って感じですよね(あれ、去年の萬斎版「ハムレット」もその手の批評が飛び交って今したっけ・・・)

投稿: かのこ | 2004.10.28 00:21

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