「メディア」を観る(1回目)
コクーンvs蜷川第3弾。
第一弾は初期蜷川さんの盟友であった清水作品の
未演出ものへの挑戦、第二弾は珍しい現代劇
翻訳作品を、若手を使っての群像劇に、そして
第三弾はやはり蜷川作品には欠かせない
ギリシャ悲劇、それも初演の平幹二朗バージョンは、
本場ギリシャ公演で記録に残るスタンディング
オベーションを
得た伝説を持つ「王女メディア」を、新演出、
新キャストによる再演!
もちろん目玉は前回は男性でしか演じることが
できないと蜷川さんが思った、強烈にパワフルな
メディア役に大竹しのぶさんという、当代一の
実力派女優を起用したこと。
1時間55分ノンストップ。
コクーンシートで観劇。
一階最前から3列目まではビニールシートが
配られていて、どうやら久しぶりに蜷川さん、
本水を使う気配んと思ったら開演したら
大変なことになっていて、
この3列の席の人は芝居鑑賞よりも、
防水のタイミングの察知が忙しくて気が気では
ないのではなかったでは?
前2回に比べると客層に年配者が多いのは、
もちろん、成宮くんや堤さんのような若いファンがいる
役者が出てないこともありますけれども、前回の
「王女メディア」を見た人がいるからか、
ギリシャ悲劇なら見る、という人がいたから
なのか・・・?
ともあれ数名ですが立見が出た程度ながら、
それが余りに勿体無いほどの素晴らしい出来でした
舞台は一面水に満たされ、蓮の大きな花
(もちろん葉っぱ付き)側面は全て石壁様。
正面中ほどの高さに大小の入り口を持つ石造りの
邸宅とそこから折り返しを持つ階段があり、
そこが水辺。
板が渡してあってその先は水。あとは
上手下手に入り口あり。今回はプールなので
舞台手前も水がこぼれないよう高くなっていて、
さすがに客席通路使用はなし。
かわりに舞台の中央手前が奥と同様、板敷きで
水辺から一段高くなった部分があって、独白とかは
主にここで。
(ラスト近く、親子三人でここに腰掛けたところは
可愛くてかわいそうで泣けました)
全体のイメージがバリ風
主な配役と衣装はこんな感じ。
メディア:大竹しのぶ(衣装:バリの女性風で、
胸から下だけの布のドレスにパツパツの
金髪ショートヘア。両腕に刺青)
イアソン(メディアの夫):生瀬勝久
衣装:男性陣はだいたい
「オイディプス」と同じ、ドレス状のものに、ダ
ブダブのパンツ、胸に卑弥呼風アクセサリーあり。
イアソンは藍色系だったかな)。
クレオン(コリントス王。英雄イアソンを娘聟に望む):
吉田綱太郎(紫系。スキンヘッドなので、
まるで渡辺謙in「ラスト・サムライ」みたい)
アイエデス(アテネ王。メディアの身元引受人):
笠原浩夫(白と青さわやか系)
報告者:横田栄司(黒一色。なぜか後ろの髪の毛が
三つ編み)
全員足元濡れるのでビルケンシュトック風サンダル。
そして子役の子供がまた泣かせます!
特に弟役の子。ずっと大竹さんの顔を見て
いるのが可愛い!!、
さすが実力派俳優を揃えただけのことはあり、
鋼太郎さんも、横田さんも、笠原さんもほとんど一回しか
登場しない役なのに、どれも印象的。
鋼太郎さんは、病でも得ている設定なのか、板で作られ
ラグが1枚とクッション一個しか乗ってない
(勿論脇の手すりなどない)ベンチを4人の従者に
持たせた上に寝て出てくるだけでも相当高さがあるし、
下は水で怖いと思うんですが、それが動いている
最中に立ち上がってしゃべるんですよねえ。
笠原さんは「スタジオライフ」役者だと聞いていたので、
もっと線が細い人かと思ったら、意外に背も高く、
芝居も大きくて面白い役柄でした
イアソンを最初生瀬さんがやる、と聞いて、
ギリシャ悲劇と生瀬さんのパブリックイメージが
全然重ならなくて
(何しろ、「ごくせん」見ていたらどうしても・・・)、
どうなるのか予想もつかなかったんですが、
できあがりは、ものすごく冷静知的、クールで、
男前とは言わないけど見た目誠実そうでいて、
実は自己顕示欲が強く、、不思議なイアソンでした。
でもやっぱり大竹さんの前では全て霞みました
パワフルだけどイアソンの前では女性の弱さも見せ、
子供の前では母性を掻き立てられ、クレオンに
対しては知性と色気を半分ずつ見せながら迫り、
同性のコロスの前では本音を撒き散らす、
とにかく触ると壊れそうな繊細さと爆発する
マグマを皮膚の下1mmあたりに潜ませている
感じが強烈でした。
それとメディアが子供殺しの決心を一度鈍らせた時の
独白のところが、ハムレットのクローディアス暗殺の
決意をする独白のところに言い回しとかがソックリ
だったのでちょっとびっくりしました。
もちろん「メディア」が先ですが。
最後に登場する竜車が下手にリアルすぎ、どう見ても
怪獣映画の特撮にしか見えず(って、本当にそういう
専門のところに頼んだらしい)笑いそうになったりとか
しましたが(ちなみに竜車は宙吊りではなくて
「骨寄せの岩藤」のラスト同様、クレーンでの
押し出しバージョン)
今年のコクーンでの演出作の中では随一、
そして今のところ今年見た芝居の中では最高だと
思います。
ラストは久々に舞台正面奥のの搬入口を開けて、
渋谷の夜の雑踏を見せる、なんて今更手法に目新しさは
ないですが、上手い役者さんによる「トークバトル」
芝居を堪能させていただきました。
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コメント
「…将門」も「キッチン」も、十分楽しめたのですが、期待していたものが大きすぎたのか何となく消化不良のような、物足りなさが残ってしまいました。でも「メディア」は違うようですね。かのこ様が手放しで素晴らしいとおっしゃるのは本当に希なこと。観劇予定はまだ先ですが、期待が膨らみます。
先日、BSでちらっと舞台稽古の様子が放送されていましたが、生き生きとした蓮の花に真紅の衣装、二人の子役とまるで昨年のオイディプスを反転させたようだと思ってしまいました。季節も劇場も同じ、二つの舞台を貫く何かがあるような…。なんて勝手に想像しています。
投稿: 松風 | 2005.05.11 00:10
松風様
そうですね、私も見ながら「オイディプス」
との共通点とか相違点をすごく感じました。
(コロスのセリフとか似ているのもありますし)
さらに、復讐を遂げねばというあたりは
「ハムレット」の独白とも共通点を感じたり。
実は私も「将門」も「キッチン」もそれなりには
面白かった(もしくは他の演出家ではあそこまで面白くなかったと)と思いましたが
やはり蜷川さんのものは少なくとも私は
シェイクスピアやギリシャ悲劇など、
壮大な世界観を背負うものが好みかも
と思いました。
ご覧になったら是非感想お聞かせくださいませ!
投稿: かのこ | 2005.05.12 08:25
かのこ様。こんばんは。
本日、『メディア』観てまいりました。
今でも水の心地よい音が響き、水に反射された照明が脳裏に焼き付いています。
前半近所から携帯が鳴ったり(怒)、
女性「眩しいですよ!」
↑よくぞ言ってくれた!
↓携帯でも開いていたのでしょうか・・・
男「チッ!(舌打ち)」
というやりとりが聞こえたり、いびきが聞こえたり、
「前の人が前のめりになってて見えない」と
係りの人に訴えてる人がいたり・・・
終了後、舞台のセットを携帯のカメラで写して注意されてる人がいたりと
「・・・・・。」という感じでしたが、
そんな事も(ほとんど)忘れるくらいに素晴らしい舞台でした。
やっぱり私も、シェイクスピアやギリシャ悲劇の方がしっくりきます。
あ~。
水の音って、いいですね・・・。
投稿: 抹茶みるく | 2005.05.25 22:26
私も本日いって参りました。
「メディア」かのこ様のおっしゃるとおりでした。
大竹しのぶさんが何とも素晴らしい。
一言一言のセリフがそのままストンストンと胸の中に入ってくる。耳で聞いて、頭がわかって、心に響いてなんていう過程が一切いらない。明晰でしかも豊かで、本当に驚きました。
吉田さんも生瀬さんも素晴らしいのだけれど、大竹さんの力はもう別次元のよう。申し訳ないけど、他の役者さんがセリフを言っている間も、それを聞いている大竹さんに視線がいってしまいました。なんだか一人芝居でも観てきたような印象です。後半入り込んでしまってもう涙ボロボロでした。
昨年の「オイ王」と様々な意味で響きあう舞台、蜷川さんの転換点を挟んだ素晴らしい舞台を拝見できて本当に幸せでした。
投稿: 松風 | 2005.05.25 23:17