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2006.08.30

「りゅーとぴあ能楽堂 シェイクスピアシリーズ『オセロー』」を観る

梅若能楽学院会館。

この能楽堂は初めて足を運んだのですが、面している
山手通りが大工事中だった事もあり、東中野駅から行くのに
途中に目安になるものが全然なくて(能楽堂のサイトの
地図も結構アバウト)、角にこっそり出ていた看板が見える
まではかなり心配しながら歩いていました。ちょっと不親切・・・
また、能楽堂の席番表示は普通の劇場に比べて、慣れないと
判りづらいので、もうちょっと大き目の特製座席表を
掲出されていたら便利だったように思います。

さて、今回のプロダクションは、この配役だったら、
デズデモーナでもエミリアでも出来るのでは?と思える
植本潤さんが、狡猾な策士・イアーゴーを演じる、かなり
予想外の配役というのが一番のホネ。

どうなるかと思いきや・・・・

スキンヘッドに法衣のような衣装をまとい、おっそろしい早口で
冒頭シーンのロドリーゴーとのやりとりを進めていた植本さん
でしたが、途中1-2言セリフを繰り返したなと思ったら、いきなり
『もう一度やります』と言って、最初の立ち位置に戻り、
ロドリーゴー役の河内大和さんに「どうぞ」と手で合図を
し、なんと最初のセリフからやり直したのには本当に
びっくりしました。

いや、植本さんがあまりにいきなり、そして決然と潔く
返したので(確かにあまりの早口でこれで持つのか?と
不安ではあったのですが)そういうセリフだったっけ?と
思いそうになったくらいです。

というわけで、前半は実は植本さんが結構大量セリフを
機関銃のようにこなすだけで(何しろ前半、イアーゴーの
セリフは説明的な物が多い)余り言葉に意味が乗って聞こえず、
せっかく苦労して手に入れたチケットだったのに(詳細は
今月初め頃の拙ブログにある通り)失敗だったかなあと
思いましたが、イアーゴーが徐々にオセロの感情を意のままに
操り始め、嫉妬について語りだすあたり
からは、この
手の話しが全く600年以上経っても人間共通の「性(さが)」
だなあと見事に納得させられつつ、仕掛ける植本イアーゴー、
受ける谷田オセローの丁丁発止(ま、イアーゴーが一方的に
撃ちまくり、オセロー防戦一方って感じですが)の息詰まる
やりとりは見事でした。

それに比べると笑也さんのデズデモーナはセリフ自体が余り
ないこともあってちょっと目立ちませんが、「女」が前面に
出ないのが「幼さ」に見えたのは、なかなか興味深かったです。

でもまあこの芝居はほとんど植本さんのイアーゴーのために
ある、というか、植本さんの出来で芝居の出来がかなり
左右されるなという印象で、今回で言うと、前半はかなり
危なげ、後半にいくほど加速度がついて面白くなりました。
また植本さんのイアーゴーはビジュアルとしての谷田さんと
の対比もあって、「たくさんの殺しもしてきたが」という
セリフはあっても、
武勇というよりも、姦計と策略で
出世してきた男、というイメージがより強く、そこからの
連想で、私は宮城谷昌光や陳舜臣の中国歴史小説にしばしば
登場する権力に強い欲望を抱き、政治を混乱させる(だけ
ではないのだが)宦官に近いものを感じました(植本さんの
両性具有的な部分もかなり影響していますね)

他の役者さんについては、同じシリーズの「冬物語」で
圧倒的な美しさを見せた山賀晴代さんのエミリア(最後の
シーンが壮絶)が最も印象的でした。

独自の解釈による「バーバリーの亡霊」の具現化、ムーアと
いうオセローの属性を連想させる、アフリカ的な太鼓による
演奏など随所に栗田演出の工夫が見出されましたが、
個人的には、歌と踊りについては(能舞台で普段見ている
ものとあまりにかけ離れているせいかもしれませんが)、
ちょっとむず痒く、ノレなかったです。

そもそも今回に関しては能楽堂というハードウエアの特性を
うまく利用しきったなあという演出があまりなく、普通の小さい
劇場で演じても変わらないのではなんて思ったりもしました。

それにしても15分の休憩1回を挟んで3時間15分は結構
長丁場でしたねえ。ソワレで22時を過ぎると帰りがちょっと
心配になるのが珠に瑕でした

全体で言うともっとロングランを重ねたら、より面白くなり
そうな気がしました。

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