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2006.09.05

「敦」(再演)を見る<1回目+ ポストトーク>

随分早い再演だなあというのが正直な印象。

初演から丸1年経たないうちに、もう再演なった「敦」。
NHK-BSでもオンエアされ、DVDも発売されていてまだまだ初演の
記憶が新しく、また配役も変更なしとなれば、見どころは
一にかかって演出の変更点ということに集約されてしまいます。
逆に言うと再演を見る難しさは、変更されているところは全て
「更に良くなっている」のでなければ納得しづらい、また
まっさらな気持では見られなくて比較してしまうことですね。

そして全体として感じたのは、劇的に盛り上げることで
生まれる具体性と、抽象性を上げることで生まれる洗練の
どこで折り合いをつけるかというのは結構難しいのかなあと
いう事でした。

例えば冒頭の場面。三日月型の舞台に長さが人の身長ほどの
長方体の箱が置かれ、上に敦の写真があるだけで、写真は
自然に遺影に、箱が棺に見えていたのですが、今回はあえて
そこに榊に囲まれた位牌(ポストトークによると敦は神道
なので、霊爾<レイジ>というそうです)が置かれ、さら
にモーツアルトのレクイエムが流れて、一層「死」が強調
されていました。
確かにテーマは判りやすくはなったけれど、説明過多にも思えました。
それに個人的には、亀井さんと藤原さんが開演前の緊張の中で
座につき、その生音が聞こえてくると思ったらいきなり
モーツアルトが聞こえてきたのがなんだか妙というか、
勿体無いというか、あとがずっと(ラスト以外)和の音なので、
違和感がありました(しかも、初演の時は2つの演目の間に
二人のセッションがあったのも今回なくなっていましたし)

また「名人伝」のラストもそう。
確かに思いきり舞台を回し、派手目の演出にしたことで盛り
上がり感は増しましたが、一方で最小限の動きで表現
することに長けている狂言役者にそこまでやらせなくても、
ある程度は観客がその余白をイマジネーションで埋められる
のでは?という感じがしました。

ポストトークで萬斎さんも「狂言ではNGとしている現代的な
演技を敦たち役の狂言役者たちに演じさせる事に戸惑いも
あった」と言う趣旨の発言をされていたので、そのあたりは
葛藤もあったのかも知れません。

何よりも初演の、狂言の手法を取り入れた抽象性の高い演技と、
複数の敦による群読によって生まれた、聞かせる芝居、
視点の複数化がもたらす多重構造が、評価を得たのかも
知れないと思っていたので、今回の劇的志向の変更はちょっと
意外でした。

2回目見たら少し変わるかも知れませんが、今回は若干
戸惑った観劇でした。

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コメント

かのこさま
今回の「敦」、内容が練れていたように感じたのは、私が未熟なせいかもしれませんが、(もしかすると、前回のを殆ど忘れているかも…)結構よかったかなぁと思っていました。特に万作さんが凄いと思いました。私が見たのは3日で、観世能楽堂に引き続いて見たので、万作さん以外の人に、またしてもお目にかかる、というか、みなさまご苦労様という感じでした。
今回は、相当近日まで、チラシが出ていたので、完売ではないのかな?とも思っていましたが、3日はとりあえず満席だったと思います。
マスミ

投稿: マスミ | 2006.09.05 19:14

かのこさま
私も今回の「敦」は随分饒舌になってしまったものとかなり残念に思った一人です。敦の写真に文字がかぶるくらいの説明はあっても良いのかなと思いましたが、霊爾と榊は無彩色の美しい舞台には不似合い。たったあれだけ色ですが舞台の緊張感を壊してしまったようで残念。一番気になったのは赤い照明の多用です。前回は山月記のうさぎの場面だけに使われ、素晴らしく印象的だったのに多用が裏目にでて散漫になってしまいました。

実は個人的に変えて欲しいなと思っていたは「うさぎ」。赤い部分が私にはどうして滴る血に見えなくて、もっと細く長く(蜷川さんの紐状の血が好み)ならないかしらと思っていたのに変更なし。

それに李徴を演じる万作師はすっかり現代劇の役者さんになってしまって、そういう演出意図だったのでしょうがなんだかもったいないような気すらいたしました。能のイメージが薄まってしまい、(あのシマウマもなんだか)素晴らしいだけの現代劇。名人伝の最後のぐるぐるは???地球壊滅のイメージなどとおっしゃっていたようにも思いますが、バタバタし過ぎ。あそこからエピローグの絶対零度、漆黒の宇宙、静謐な空気へ気持ちを持って行くのはかなり辛い。最後の語りでも直接観客を意識して語りかけて欲しくなかった、あれでは俯瞰で見ていた気分が台無し。

比較してしまうのはいけないと思いつつ、あまりに残念だったので。萬斎さんへ伝えられるものならば、もっと観客の想像力を信じて欲しい!

マスミさま
なんだか正反対のコメントになってしまったようですみません。十分に素晴らしい舞台なのはわかっているのですが。

投稿: 松風 | 2006.09.05 22:23

松風さま
感想は、色々なものがあるから面白いのだと思います。自由に意見が交換できて、こういう場所はとてもいいと思います。萬斎さんにも率直に伝えるとすごくいいと思います。
また、いろいろなことを教えてください。
マスミ

投稿: マスミ | 2006.09.05 22:52

松風さま
お久しぶりです!
同じ、私のつたない感想を200%フォローして
いただき、毎回本当にありがとうございます。
確かにライティングの多用とか、いろいろ見ながら
「そこまでやっちゃうかなあ」と思いましたが
細かいところは松風さまのおっしゃるとおりだと
思います。

初演はその斬新さにびっくりしましたが
今回はちょっと微妙ですねえ。

投稿: かのこ | 2006.09.06 09:01

マスミさま
え~~、万作さんはハシゴだったんですか。
すごい体力。

投稿: かのこ | 2006.09.06 09:02

かのこさま
ごめん、私の説明不足。万作さんだけは、観世に出ていませんでした。たしかに、あのお年だし、あれだけの「敦」での活躍振りですものね。それでも万之介さんは、ハシゴでしたよ。「敦」では、万作さんほどの跳んだりはねたりは、ありませんでしたが、大したもんですよね。
明日の9日の夜、宝生能楽堂で、万作さん、万之介さん以外がまたまた活躍します。萬斎さん、一人狂言の「見物佐衛門」です。みなさん、凄いですよね。お疲れの様子や如何に…、見て来ます。
マスミ

投稿: マスミ | 2006.09.07 23:33

マスミさま
いや~、それにほぼ全部行っていらっしゃる
マスミさまもすごいです(^o^)丿

投稿: かのこ | 2006.09.08 07:50

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