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2007.06.30

「国盗人」を観る(2)本公演1回目)

1幕が85分(ポストトークで80分って言ってましたけど、やっぱり85分
だった気がします)、2幕はプレビューと同じ70分と若干発表のタイム
スケジュールが短くなっています。
感覚としても1幕の特に前半がスピーディになった感じがします。
(セリフ削ったようには感じられなかったので、テンポが良くなったかな)
個人的に杏と悪三郎のかけあいのあたり、プレビューの時は「寒いぞ」
って感じだったんですが、ポポポポン!っと行きましたしね。
萬斎さんが楽しそうに悪人やってる雰囲気が伝わっていましたし。

そうそう、冒頭見ていて突然プレビュー時に勘違いしていたことに
気が付きました。
芝居が始まるやいなや、いきなりリチャードの有名な独白『われらの
不満の冬も・・・』に乗せて兄たちや王妃の連れ子たちがあっさり死んで
いき、楽しみにしていた今井さん演じるクラレンスも一言もセリフなく
あっけなく死んでしまったので、おいおい、文庫本72ページを語りだけで
やっちゃってあと3時間近くどうするんだ?と思っていたら、結局その話を
もう一度最初からちゃんと?セリフ付きでやったので、逆に「じゃあ
あれは何だったんだろう?」と、ひょっとしたらここまでの(何しろ、「リチャ3」は
三部作「ヘンリー6世」の続編なので、)「薔薇戦争」の概略をでも説明した
のかなあ、にしては「兄」とか言ってたし、衣装も一緒だし紛らわしいと
思って、ここにもそう書いたのですが、今回同じ場面を見ながら突然
気が付きました。(おそっ!と言われそうですが)
どうやら、これって、ちょうど「ハムレット」の劇中劇が最初にあらすじを
見せておいてそれから全部を見せる、というのをやっていたのと同じで、
最初に見せたのはこれからのあらすじだったんですね。ややこしいので
ご親切に、だったのに、全然判らなくて焦ったというか恥をかいたというか・・・・

1幕の前半は乗って楽に見られるようになったものの、半ば、王妃と左大臣、
王妃の連れ子や王子たちがずるずる出てくるあたりがまたちょっと
「んんん」って感じだったんですが、(何しろ2幕の最初の楽しさをすでに
知っていたためになおさら)古典言葉と現代語のちょうど中間あたりを
狙っている感じの大森さん、今井さんがプレビューではやや遠慮勝ち
だったのが、積極的に萬斎さんはじめ狂言チームに絡んできているな、
と実感しました。

2幕は急速に盛り上がるところが実に面白い。プレビューと違って
「市民が反応しない」ところで拍手が出て「拍手は聞こえたけどね~」と
逆に悪三郎新王が突っ込むなど、客席も変わってきていますが
(だから本当はここは<敢えて反応しない>のが正しいのかも)

そうそう、この日、リチャード新王の握るマイクに金色の派手派手
ラッピングがされていました。この分だと直に左右のプロセミアムの2階の
高さあたりに、「三番叟」や「翁」で使った<電光字幕機>が出てきて、
蜷川さんの舞台みたいに歌詞が流れて、しまいには客全員いあの歌を
歌わせる、なんて計画とか起きてしまうかも・・・・

「リチャード三世」におけるモチーフでもある「馬」セリフの埋め込み方
(正確にはその聞かせ方)や、音楽や効果音の使い方が無駄がなく
なったなども思いましたが、何より、『この芝居ってこんなに呪いの
シーンが多かったっけ?』とつくづく思いました。これ、
和風でやってるから、たとえば「源氏物語」の六条御息所のような
恨みのシーンや、あるいは「陰陽師」の世界などと親和性があって
違和感なく見ていますが、今さらこれを普通に西洋風しつらえでやったら
近代的な合理性を体現する感じとの間で違和感を感じそう。

・・・で、あわてて河合さんの訳本の該当部分をザザっと当たったら、
長いどころが、4人の女性の登場するあたりなど、全部ちゃんとやったら
くどくてくどくてうんざりしそう、読むだけでも眠気が襲ってページを飛ばし
そうになるほどで、「国盗人」はこれでもずいぶん短くなっているだわと
再確認したのでした。(しかもほぼ白石さんのモノローグで処理するので
余計すっきり。あの髪形と体が別っていうのはいいアイディアです)

また、タイトルにもなっているテーマ「悪」と「悪人」については、前回隣の
トラムの「THE BEE」と似たモチーフだなあとその偶然に共通点を見出した
のですが、今回さらにそれに「夢」というモチーフが見えてきて(今井さんの
演じる役はご自身がインタビューで答えているように「夢」で繋がっている)
これがまた「THE BEE」のプログラムで、野田さんが自作を「悪夢を見たと
思って」と書いているので(これは前に書きましたが)ことほど左様に
私の中で勝手に「国盗人」と「THE BEE」が有機的につながっている
感じがより一層強くなりました。
(何しろ残虐な行為がエスカレートするあたいなどまさしく「THE BEE」
と共通ですし・・・)

でもやっぱり声の質の問題として、フラットな声で相手に語り、セリフを
語るにおいては、理知門役の今井さんの声は説得力があります。
特に決戦前夜の理知門と悪三郎が、似たようなセリフを繰り返す
あたりとラストの締め、すっと雰囲気で立っている姿だけでも素敵な
感じですが、声と自信にあふれ、背筋をピンっと伸ばした理知門の
姿は新時代を感じさせるイメージですね。個人的には烏帽子の今井さんの
方が好きですけど・・

ま、あとは繰り返すようですが、あの凝った衣装がやっぱり気になる・・・
一番はあの悪三郎の上着の裾の、まるでこぶとり爺さんのとった
こぶをぶら下げたみたいな、ひょうたん型のカッティング、(どうも「月見
座頭」の銀の瓢のようです)あれだけはかっこ良くない気がしますが。
今さらしょうがないんですよね、きっと・・・・

でもさすがにプレビューよりは数段面白くなっていました。

カーテンコールは段差の大きい、舞台の階を上がる白石さんを
萬斎さんが手を取ってエスコートしたり、3回目?のカテコでは、
正面から二人だけが登場、「オイディプス」を連想させる、ご挨拶を
されていました。

ところで敵の進軍情報ばかりが届くのにいらだったリチャードが
「もっとましな知らせを持ってこい」と叫ぶシーンがあって、「あれ、
これって最近何かの芝居で聞いたな~」と思ったのですが、思い出し
ました、去年内野さんが出演していた舞台「メタル・マクベス」でした。
ダンカン王にあたるレスポール王(上條恒彦さん)が、駆け込む使者に
酔っ払いながら叫ぶセリフがこれと全く同じなのです。
あれ?と再び思って松岡先生の「マクベス」訳本を見たら元の本には
そんなセリフなし。ひょっとすると上條さんか、いのうえさんか、あるいは
松岡さん自身が、同じ状況の(「マクベス」の場合、ダンカン王は
優勢なんですが)「リチャード三世」のセリフを<貸した>のかしら、
などと思ってしまいました。

ポストトークは別項。

そういえば、途中で舞台から客席に何か四角いものを撒いていますが
あれは何???

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コメント

かのこさま

あの四角いカードのようなもの、何だったんでしょう。あとで劇場の方が回収してしまったので、気になって気になって。

これからのあらすじ…、そうだったんです。あのひゅるひゅるという笛の音と共に一人ずつ消えていくあたりですよね、私もやっと気がつきました。そうなるとそのあとが随分と分かりやすくなったように感じました。

こぶとり爺さん、私的にはカブトムシ。お経のシーンでは、蝉という説も。知人はいわゆる○○ホイホイのCMを連想したとか、何とかなりませんかね。

投稿: 松風 | 2007.06.30 08:28

松風様
入れ替わりにそちらへおじゃましていたところです(^^)/
カブトムシ、そして蝉、そして・・・
しかし、あの読経の間、左右の人たちがぴくりともしない
のがすごいと思って。てっきり「瓜盗人」の案山子みたいな
作りものだと思っていたので、いきなり立ち上がったので
かなり驚きました。
そうそう、あの撒くものはどうやら何か粗品系という
情報も。私はあれが届く範囲で拝見する機会がないので
確かめる方法はないのですが・・・・

投稿: かのこ | 2007.06.30 10:30

かのこさま 
本当に入れ替わりでございました。
粗品系ですか???手が届かないだけに気になります。

ポストトークの別項楽しみにしております。

投稿: 松風 | 2007.06.30 17:57

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