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2007.07.01

「国盗人」を観る(3) Sept会員向け公演

世田谷パブリックシアター会員限定公演。
建物の名前にちなんだのか、人参色の法被を着たスタッフが
ロビーにあふれていました。

送付されたチケットには「トークやプレゼントなど企画」とあった
のですが、プレゼントの方は入口で配られたビニール袋に
半期スケジュールと一緒にパブリックシアターの特製絵葉書が
入っていて、どうやらこれ。しかしタイムスケジュールには
普通の上演時間しか書かれておらず、さて?と思いつつ着席。
恒例のように河合先生も客席に。

そうそう、毎回配られるアンケート用紙が今回ちょっと違ってて
一番上の所に四角く囲ってこんな文章が。

「今回、前売開始後に追加で前方の席を発売することとなり、
一部混乱を来たしましたことを心よりお詫びいたします。
創作における美術デザイン上の都合によりこのような経緯に
なりましたことを何卒ご理解賜りますようお願い申しあげます」

私はさっぱりそんなこと知らなかったし、幸か不幸か今回いわゆる
「前の方」の席が全くないので気にも留めなかったのですが、きっと
一部、『最前列だと思ったのに、どうして来てみたら前に席があるの?』
というようなクレームが、前方席の方のアンケートに出たのかも
知れませんね。

さて、本編。
プレビュー、前回とかなりグダグダ言っていましたが、今回は
1幕2幕ともすっきりと、気持ちが途切れないで最初から最後まで
ブラックな笑いと残虐さが面白いコンビネーションを感じながら
見ました。

とにかく周囲の役者さんが全開です。
大森さん、今まで見たことがないくらいのすっごいハイテンション。
最初、左大臣って全然個性が見えなかったのが、石田さんの
テンションにひっぱられたかのよう。
白石さんも政子の呪いの一番最後のところとか、杏が口説かれる
ところとか、萬斎さんとの息が合ってきてて、まさに緩急自在。
正直鬱陶しかった「4人の呪」のところも「呪わしい・・」で統一された
しゃべりだしのところといい、ダンサーたちとの息と言い、見ていて
4人を1人でやった効果というもものをものすごく納得しました。

例の「歌謡ショー」は、ついに三世王、階降りて来ちゃいました。
あの分だとマイクが許せば、直に通路まで歩きだしかねません(^'^)

ラストがちょっと変わっていて、現在に戻ったところで舞台を去る
白い服の女を、ブラインドの奥から呪いを持った人たちがもがく
ように見送ってみました。
今まではすっきり終わった~っという感じだったのが、あの人たちが
いる、というのはちょうど『to be continued』っぽい感じがしました。
つまり、今にも思いを持った人たちが息づいているぞ、という雰囲気が
漂うだけに、不気味さが加わった感じでした。

この分だとしかしまだまだ変える気ですよね。
確か「敦」の時に広忠さんが『休み明けに良く変わる』と言っていましたから
明日の休演をはさんだ火曜日はまた変わっているかも知れません。

終わってからアナウンスがあり、10分の休憩を挟んでパブリックシアター
会員制度10周年記念の式典、そしてやはり通知通り、萬斎さんの
スペシャルトークが行われること。
まず4人ほど、パブリックシアターらしい顔ぶれの関係者の挨拶があり
そのあと、着替えさっぱりした萬斎さんが手に面を3つ持って登場。
それまで舞台下で式典が行われていたこともあって、萬斎さんを
おいかけて椅子と机、水が出てきたのにはちょっと笑いました。

萬斎さんからは面や舞台についての裏話などさらっとあって
質疑応答。
ひとつはコスチュームについて。萬斎さん待ってましたという感じで
有名デザイナーとの衣装の打ち合わせの裏話をいろいろ話して
くださいました。ちなみに萬斎さんの衣装の素材はスキューバダイビング
用で、しかもこぶやら何やらのためにいろいろ巻いているので
暑くて大変、だそうです。

二つ目は「悪人リチャード」を演じる心持について。
これについては「悪人になるしかない」という、リチャードの必要悪の
部分についての理解、母親との関係、そしてやっぱり「悪事をやるのは
楽しい」とおっしゃってました。

最後は影法師について。
影は自分の意志で作れない、うまく仕掛けたはずの策略が途中から
なぜか上手くいかなくなり、運命のようなものに引きずられるというのと
リンクしている、という感じだそうです。ちなみにあれはリチャードの
影ではないのですね。何しろ最後はリッチモンドに影がついていって
しまうのです。これは最初から気がついてましたが、運命という理解は
なるほどでした。

一緒に行った友達(初見)は、とにかくあれだけしゃべり続ける萬斎
さんに驚き、白石さん、大森さん、石田さん、今井さんなどみな凄いと
言い、さらに一言
「それにしても日本って本当にシェイクスピアやるの、好きだわねえ」
でした。
確かに。
蜷川さんがやった「天保十二年のシェイクスピア」のテーマ曲の
『シェイクスピアがいなかったら』の歌詞を思いだしながら歌いつつ
帰り、家に帰ってDVDで確認してしまいました。

もしもシェイクスピアがいなかったら
文学博士になりそこねた英文学者がすいぶん出ただろう
(略)
もしもシェイクスピアがいなかったら
大入り袋の出しようがなくてプロデューサーたちがほとほと困ったろう
シェイクスピアは飯の種 あの方がいるかぎり飢えはしない
シェイクスピアは米の倉 あの方がいるかぎり死にはしない
シェイクスピアはノースペア あの方に身がわりはいないのさ
(略)
もしもシェイクスピアがいなかったら
バーンスタインはウェストサイドをとても作曲できなかっただろう
(略)
シェイクスピアは金の蔓 あの方がいるかぎり金には困らぬ
シェイクスピアは不動産 あの方がいるかぎりわれらは安泰
シェイクスピアはノースペア あの方がに身がわりはいないのさ
(略)


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コメント

かのこさま
やはり常人ではないんですね。なんで『シェークスピアがいなかったら』を歌えてしまえるんでしょうか???凄すぎます。それに記事の緻密なこと、ひたすら尊敬しております。

抽選にはもれたのですが、友の会貸し切り公演の魅力に抗しきれずで無理して行ってしまいました。でもその甲斐ありました。頭を抱えていた影法師問題に決着が付きましたし、衣装のありようも完成までの経過が想像出来てやはりと腑に落ちましたし、収穫大でございました。それにしても大森さんとても良かったです。今回の公演まで知らなかったのがもったいない。で、次は5日でございます。

投稿: 松風 | 2007.07.02 01:14

松風様
確かにさすが友の会会員らしい、的を外さない質問でしたね~

大森さん、萬斎さんの「ハムレット」でオズリック役で出演
されていましたよね~あの時も今回につながる派手メーク(^^)/
ご指摘の今井さんですが、あの謙虚さと合理性が今井さんかも。
特にラストの悪三郎とのしゃべり方に差をつけつつ、テンポを
萬斎さんと合せているあたり、さすが今井さん~と勝手に
心の中で拍手しております(^.^)
萬斎さんファンの中で、この公演を見て大森さん、今井さんが
気になり始める人が3人くらいはいるのでは・・・・?(^.^)

投稿: かのこ | 2007.07.02 22:02

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