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2007.07.16

「NINAGAWA十二夜」を観る(1回目)

12ya
日本の伝統芸能のうち、笑いの演劇・狂言のフィールドに活躍する萬斎
さんが現代劇の役者と共に作り上げた悲劇(とご自身は言っていたけど
見てると<喜悲劇>だと感じましたが)「リチャード三世」の翻案「国盗人」を
見た翌日に、今度はシェイクスピアの演出において突出した成果を
見せ続けている演出家・蜷川さんが歌舞伎の世界に「留学」して
作り上げた、「十二夜」の翻案「NINAGAWA十二夜」を歌舞伎座に見る
なんていう、本当にすごいことが東京では起きているんですね。

という訳で、ようやく?「三茶の薔薇戦争」が終わりましたので、歌舞伎座に
初演の衝撃がすごかった「NINAGAWA十二夜」を見に行きました。
心配した台風も、午後早い時間帯には影響が少なくなっていました。

配役的には実につかみどころの難しい、なだけに初演の松緑さんの、
あまりに思い切りの良い壊れっぷりに、「大丈夫?」とこちらが心配したほど
だった、安藤英竹が翫雀さんに変わったことが一番でしたが、それよりも
全体が初演に比べて思い切りよく「歌舞伎」にシフトしていたことに、この
2年の蓄積を感じました。

構成上は初演にあった大詰の第一場「奈良街道宿場外れの場」が省略
されただけで、大きな演出の変化は見た目なかったのですが(嵐のシーンは
舟の動き方が大きくなって、菊之助の早変わりの回数が増えていた)、
全体に初演でまだるこしかった、冗長なセリフが内容を変えることなく
きれいに整理されたこと、全部セリフで処理しようとしていた事を一部
義太夫をはさむことで変化をつけ、テンポを上げた事などで25分ほど
上演時間が短くなっていました。

菊之助自身があちこちでしゃべっていましたが、獅子丸に身をやつした
琵琶姫がつい女言葉になったり、動きだけが女になったりという「行き来」が
本当に自由になっていて、思わず
『こんなに女言葉(女しぐさ)なんだから気がつけよ、左大臣!!』と
何度、織笛一筋の左大臣に心の中で突っ込みを入れたことか・・・
もともと上手い菊之助さんですが、今回も何よりのみもの、でした。
誰しも菊之助が次にどの姿で出てくるのかなと期待しているのを感じました。

この演出の中でやられた!上手いなと毎度思うのは、大詰めになるともう
獅子丸と主膳之助の出入りが激しくなって客席も早変わりに慣れているのを
逆に利用して、一番最後の最後、坊大夫の一件が片付くまで一言も離さず、
じ~~~っと立っているところから、琵琶姫(吹き替え。ちょっとオーバー
アクション過ぎ)との再会まで菊之助が主膳之助を演じるのを延々と見せて
おいて、次のシーン、割とすぐに舞台奥から先頭で織笛姫の手を取って
主膳之助が出てくるので、うっかり菊之助だと思うと、実は後から左大臣に
手を取られて出てくる、つい前は吹き替えがやっていた琵琶姫が、実は
菊之助という大きな「はずし」が来るところ。
浜に打ち上げられたシーン以来出てきてない菊之助の奇麗な女形を
見せる、というのがポイントかも知れませんけれど、琵琶姫が話し始めるので
びっくり!となるところがすごいですね。

今回新たに私が感心したのは、初演ではどちらかというと、途中はいじめ
られる坊大夫のエピソードが結構大きい印象だったのですが、今回は
それよりも初演では割と影が薄かった、錦之助演じる(初演ではまだ
信二郎でしたね)大篠左大臣の存在がきっちり描かれて、そのおかげで
メインの物語である

大篠→織笛→獅子丸(琵琶姫)→大篠

という関係が、見事に浮かび上がった気がしたことです。
プログラムのインタビューで錦之助さんも書いてましたが線の細い貴公子
から、影のある骨太の、で自分の関心事以外は全然気がつかない
もどかしい人になっていて、そこでの獅子丸の関係が印象付けられ、
積極的で理知的な織笛との対比ともども、全体を支える軸になったように
思います。

他のキャストも初演の歌舞伎(古典)とシェイクスピア(翻訳劇)と蜷川演出
(現代劇)の振れ具合の難しさに戸惑っていたようにも思えたのですが、
評価を得たこともあったでしょうし、この前博多座での公演を経ていることも
あってか、生き生きと楽しげにこの不思議ワールドを楽しんでいるように
見えました。
手堅い菊五郎さん、相変わらず滅多にない女形の相当長いモノローグを
それも立ったまま、手の動きだけでものの見事に見せてしまう時蔵さん、
(今回、麻阿に「任せたわ!!!」っと上手に速攻走り去るのがすごい
すばやくてびっくりしたりしましたが)、少し前よりセリフは減ったようですが
相変わらず動きもセリフも多いのを楽しげに演じている左團次さんと
初演キャストに、やや初演よりは抑えめながら厄介な役を上手に演じて
いらした翫雀さんがうまく絡んでいました。

さらに家に帰って「風林火山」の録画を見たら凄い形相で「板垣~~っ
~~」とどず黒い顔で唸っていた(笑)人と同一人物とは思えない、
麻阿演じる亀治郎さんの表現力と身体能力にはつくづく笑い転げました。
つまみ食いはする、棒を手に素振りのマネをする舞台の端から端まで
一気に走る、腹這いになったままそろそろと移動しようとするなど、もう
爆笑シーン続発。

いや、やはりこれは本当に日本でしか見られないシェイクスピア。
どこかで読んだ言葉ですが、「女形というシステムが日本にあるのを
知ってシェイクスピアが書いたのでは?」などとつい思ってしまいそうに
なる、菊之助という役者の演じる男女(+1)の見事さにつきます。

これを見た後に蜷川さんがさいたまで演出した、現代劇の役者さんに
よるバージョンを見た時に、一番最初に思ったのが、
「ヴァイオラとセバスチャン全然似てないじゃん」
(別の役者だから当たり前)

本当に楽しい4時間でした。

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コメント

かのこ様
『三茶』通いが終ったんですね。
好きなものは何度でも観たくなりますものね~
よーくわかります(^_-)-☆

そして間髪入れずに歌舞伎座ですね。
かのこ様の観劇レポを読んでたら、私も行きたくなっちゃいました~
でもスケジュール的に無理です。
『お気に召すまま』観劇予定日を一日まわせばいいんですけどね。
それが、出来ないんです~(^_^;)
コクーンが私を呼んでいる。

投稿: emi | 2007.07.17 00:02

かのこ様。

ご覧になりましたか♪

麻阿・亀治郎さん。ホント笑えました。
そして私も同じく「十二夜」の翌々日に「板垣~~っ!!!」を観て
コレ・・・同じ人・・・(^-^;)と。

あと、ラストの“菊之助を探せ!”の場面は
やはり周りの客席からは‘あら?’‘えっ?’という声が聞こえてきました。
今回は奮発して前方の席を取ったので、そういったところは楽しめました。

もう一度行きますが、3階席なので今度は美術を楽しんできます。

投稿: 抹茶みるく | 2007.07.17 00:54

emiさま
アーデンの森の方はいかがですか?(^^)/
今月は悩みに悩んで、大好きな歌舞伎・蜷川さん、
そしてシェイクスピアの全部がそろっている歌舞伎座を
コクーンより優先しちゃいましたが・・・
まもなくの観劇が楽しみです~
(「十二夜」の菊之助さんと「お気に」の成宮くん
 いずれも女性役をやって男性に化ける役。両方
 ご覧になるときっと面白いですよ!(^^)!

投稿: かのこ | 2007.07.17 22:54

抹茶みるくさま
やっと「十二夜」見られました。
とにかく、初演よりぐっと引きしまったなあ~というのが
一番でした。
何より、左大臣さまが素敵になってて、錦之助さん私の
中でかなり株が上がりました~
私ももう一度見に行きます。
本当はもっと何度も見たいんですが我慢我慢。

投稿: かのこ | 2007.07.17 22:56

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