« 公共放送利用のメイキングビデオ? | トップページ | 「ガラスの仮面」ようやく公式サイト発表(5/17追記) »

2008.05.16

「わが魂は輝く水なり」を観る(3回目)

3回目は今公演で1回だけの2階席。
近くも眼福には違いないのですが、引きで全体を観ると美術や照明、空間の
使い方が良く判るので違う印象を受ける事が良くあります。
まあ時には近くでは判らない「泣きどころ」とか隠しきれなかった何かが見えて
しまったりして文字通り引いてしまったりもしますが…。

今回の正直な印象は、2幕だけが突出して良かった、と言うか2幕だけで、
それも実盛と巴の夢の違いが顕になるシーンと実盛と五郎の最後のシーンだけ
で、十分見に来たかいがあった!と言う事が一番でした。

巴と実盛が決別するシーンは、痛さがギシギシ伝わり、こちらまでドキドキ
してしまった感じが「THE BEE」に近かったですし、ラストの実盛役萬斎さんの
「老い」と自分との距離に戸惑いながら足掻きつつ、諦めるでもなく、前向きに
自分なりの結末を付ける覚悟を見せて、でも五郎の目を気にしながら顔に白を
塗るあたり、なんだか妙に可愛らしくて良い感じでした。

特に2階席だと、ラストの仰向けの実盛の顔にライトが当たるところ、実盛の
顔がすっかり見下せるので、無残な最期でありながら、満足げなその表情が
ばっちり、ぐっとクローズアップで見えて迫力でした。
萬斎さんが面白いと思うのは、すっかりやりたい通りだった筈の「国盗人」の
悪三郎よりも行動や表情が限られる老人役の今回とか、「オイディプス王」でも
目を潰した後の、いずれも制約のある中での芝居の方が「ならではだなぁ」と
感じる事。
普段能狂言と言う、動きに制約の多いフィールドに身を置いて、限られた中での
最大限の表現の仕方を常に意識せざるを得ない状況にある事が、威力を発揮
するのでしょうか。

また崖のセットの立体感と森のシーンの奥行きも2階3席からならではの見え方。
特にあの崖上の幅を見るとかなり狭くちょっと怖そうな…。斬りかかる六郎
くん、勇気ありますね。
そうそう維盛の帷幕に皆が集まるシーンの終わり、「義仲」軍が一面に火を
放ったと伝令が飛び込んでくるところ、伝令の入りが客席通路からだったのは、
実は今まで余り意識してなくて(これまでが本舞台にしか意識がなくて不注意な
だけだったか)、ちょっと新鮮でした。

逆にあれあれと感じた事もいくつか。
まずは高い崖セットごしに後ろの作業が見えたのがやや興ざめ。
いくら高さがあっても2階客席はもっと高いんですよね。
また維盛が六郎を問い質しているところに実盛と権頭が飛び込むところも
幕陰にスタンバイするのが見えてましたし。

何よりもやや引いて客観的に見ていると萬斎さん、菊之助さん、秋山さんが
絡まないいくつかのシーンに、舞台がむやみに広く、セリフが空を切る感じが
ありました。
何となく主役3人以外に割に「狂いっぷり」が足りないんですよ・・・。
特に義仲軍のメンバー、もっともっと「暗い目」が感じられないと、単にふぶき
だけがヒステリーになっているみたいだし。
蜷川さんにしては珍しく集団シーンに「雑踏力」が足りないので、1幕の盛り
上がりが不完全燃焼なのでは?
蜷川さん芝居で狂わないでどうする?です。

逆に長谷川くんの戦場の空気にどうしても馴染まない維盛くんキャラが毎回
密かな楽しみに。「妻から10日も便りが来ない〜」のセリフを言う位置が細かく
変わっていたりしてますし、判りやすくベタさが芝居にメリハリが付けていますし。
「カリギュラ」のクールなケレアで注目を集めた長谷川くんですが、今回の
維盛でまたその不思議な存在感にファンが増えそう。
「現代能楽集<AOI>」の時は不思議な新人俳優さんでしたが、注目して
いるうちにどんどん大きな役で出演されるようになって、なんだかちょっと
嬉しいです。


ともあれ日程も半ば。
後半、もっとパワー炸裂方向になればなぁと思った3回目でした。

|

« 公共放送利用のメイキングビデオ? | トップページ | 「ガラスの仮面」ようやく公式サイト発表(5/17追記) »

能&狂言」カテゴリの記事

舞台一般」カテゴリの記事

野村萬斎」カテゴリの記事

歌舞伎」カテゴリの記事

蜷川さんの舞台関連」カテゴリの記事

コメント

かのこ様
こんにちは。いつも楽しく拝見しています。
もともとは確か3年前の『NINAGAWA十二夜』で他の方々の感想を探してこちらのブログにたどり着いたのが最初です。以来、時々拝見していましたが、蜷川さんの舞台や美術など、私も見ているもの、興味のあるもの多くについてかのこ様がタイムリーかつ的確にコメントされているので、観劇前後にお邪魔するのが不可欠となりました。

で、『わが魂は輝く水なり』です。5日のマチネを最前列通路側で見ましたが、足元に六郎役の亀三郎さんが潜んだり、通路を菊之助さんが通ったり(本当にきれいでした。あの両性具有的な美しさは菊之助さんならではです)で、少し舞い上がっていたのと初回はストーリーを追うのに精一杯でした。明日、2回目を見に行きますので、かのこ様のコメントを心に留めて、細かいところまで見て楽しみたいと思います。

投稿: Mickey | 2008.05.17 23:40

Mickeyさま
ごぶさたしています。
あ~左ブロック最前列、最もうらやましい席ですね。
萬斎さんが唯一舞台下でセリフを言うところですし(^^)/
ぜひ2回目の感想、お聞かせください。
菊之助さんと萬斎さんの「無重力系親子」の不思議
ワールド、個人的にははまっています(^^ゞ

投稿: かのこ | 2008.05.18 09:28

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 公共放送利用のメイキングビデオ? | トップページ | 「ガラスの仮面」ようやく公式サイト発表(5/17追記) »