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2008.08.24

「トウキョウソナタ」を見る

試写会で一足早く拝見。

今年、カンヌ映画祭の「ある視点部門」で審査員賞をとったという
黒沢清監督の作品。
家族をテーマの映画というのは今年多いなあと思っていたら、ちょうど
23日の朝日新聞夕刊(東京本社版)に、これと「ぐるりのこと」と
「歩いても歩いても」の3作品をまとめて評している記事が出ていました。

そしてなんだか最近流行?の「とうきょう」というキーワード。
監督はどんなアイコンとしてこの言葉をタイトルに選んだのかも興味深く
見ました。

映画はリストラを打ち明けられない父(香川照之)、家族への心配りが
報われない母(小泉今日子)、小学校の先生と対立、近くの美人の
先生が教えているピアノ教室に通いたいが父親の理不尽な反対に
あっている次男。そしてほとんど家族と生活時間帯が合わないので
何を考えているのかと思っていたら、突然日本人も応募できるシステム
(これはフィクション)のアメリカ軍に応募してしまい、ほぼ強引に
出発してしまった長男という、一つ屋根の下にいながらまったくそれぞれが
孤独という4人家族がある希望を見出すまでを描いたもの。
<以下公開前ですがネタばれしています。ご注意ください>

前半は行き詰る室内劇で、これはすごいことになりそうと思ったら
突然後半、自宅に強盗が入り、成り行き上一緒に車で外出し海まで
突っ走って一晩を過ごすことになってしまうあたりから話はどんどん
ファンタジーというか妄想系の方向へ。
で結局、家族はそれぞれの思いを抱えながら自宅へ戻ってきて
次男の思わぬ才能に、あたらしい希望を見出して終わるという
結末には結構びっくり。

前半のリアルさがものすごく共感できたので、後半の強引な展開には
ちょっと鼻白見ました。
確かに長男が戦場に行ったのと同じくらいの衝撃が家族それぞれを
襲うというのは理屈としてわかるのですが
さらにこの次男のもたらした「希望」というのも、通常考えるとすごくお金の
かかる世界の話なのに、リストラされてあまり多くの収入を得ているように
見えない父親のこの家族でこの息子の才能のためにお金を払い続ける
ことができるのか、その辺の整合性がいま一つ。
なによりその希望だけでぐだぐだになったこの家族が修復されるとは
ちょっと思えないのですけれども。

そういえば「ぐるりのこと」も行き詰った妻を救ったのが、普通の人間には
まずあり得ない「お寺の天井画を描く」という仕事だったので、これは
全然普遍性がないと思ったりもしたのですが、これはもっとそれより
ぶっ飛んでしまった感じ。
ラストに流れる、ドビュッシーの「月の光」がきれいではありましたが
そんなきれいごとで済ましてしまっていいのかなあとも。

役者さんでは小泉さんが強烈。特に一晩明けた朝焼けの中に立つ
表情は岩下志麻さんをちょっと思わせる、無表情の中に強烈な意志を
感じさせるものでした。
香川さん、そして「リストラ仲間」?役の津田寛治さん、ピアノ教師役の
井川遥さんなども予想通りのうまさ。ただしそれ以上でなかったのが
ちょっと残念。
注目は次男役を演じていた井之脇海くん。
ドラマ「四つの嘘」で寺島さん演じる満希子の息子役で出演していますが
不機嫌そうな表情の中に、繊細さと意志を感じる素敵な子役です。
父親に平手打ちをくらうシーンでその拍子に椅子の角に頭をぶつけて
いそうでしたし、階段落ちもあって大変そうでした。

ひょっとしてこの間のできごとは全部家族それぞれの妄想であって
実際には何も起こらないで翌日がやってきたのかもと思ったりもした
不思議な映画でした。

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