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2009.02.17

「二月文楽公演(第3部)〜女殺油地獄」を観る

24日の「解体新書」ゲストの桐竹勘十郎さんが、主人公・与兵衛を遣う
ので楽しみに出かけ、期待通り文楽ならではの人形の動きを堪能
してきました
(私的には文楽じゃなくっちゃね!と思うのは、これと「本朝廿四孝」の
「奥庭狐火」)

開演18時半という歌舞伎、文楽としては遅い時間設定のおかげか
もちろん人気作品ということで、満員御礼の表示あり。

劇場に置いてあったB5に六つ折になった無料リーフレット「近松の描いた
大阪2/女殺油地獄」がとても良くできていて、作品理解の助けに
なりました。
当時の世相、株仲間の人間関係、大阪の地理関係もさることながら、
表紙に、与兵衛の悪行の数々が今風な解釈で列記されていてクスリと
させられました。
たとえば
※働かず放蕩三昧
※平気で親を足蹴にする
※高利貸しに手を染める
※金のために人を殺す
※凶器の刀は川に捨てて証拠隠滅
※ぬけぬけと法要に顔を出す

いや、本当に現代にもこう言う例が屡々事件としてニュースに登場しています。
近松が現代的な感覚で当時の世相をすくい取ったとも、人間悪をやるパターンは
300年経っても全然変わってないとも言えます。
イヤホンガイドで小山観翁さんが、主人公が善人でなく、善人も落ち度や甘さが
ある余りに現代的に設定のこの作品は、飲食しながら100%舞台に集中しないで
見ているのが普通だった江戸時代には、人間設定がこう複雑だと判りづらく、
初演から長く評判は今いちだったと言っていましたが、その意味が本当によく
わかります。今見ている私たちだって全く与兵衛には共感できません。
ただ上記のような「こんなやつ今でもいるよね」という部分で近松の着眼点と
心理劇として面白さを感じているのですから、勧善懲悪芝居が受けていた
当時ではなおさら難しかったでしょう。

勘十郎さんの与兵衛、本当にわがままな子供がそのまま図体だけ大きくなった
雰囲気で、算盤を枕のフテ寝とか、意見されるとちっとも聞かずにそっぽを
向いたり、酒飲んだり、喧嘩をしたりと虚勢張りまくり。
もちろん見せ場はラストの「豊島屋店先」
歌舞伎だと麩海苔を使った「油」ですが、人形の場合は何もない舞台の上を
人形が飛び、滑る、そのリアルを超えた無重力さがリアルさを表現する訳で、
この辺が文楽の実に不思議な魅力ですね。
(足遣いさんは大変)
殺人の場面、また持ち出した金が手につかず、店の外で何度も拾い直す
場面など、人形はひとつの表情のはずなのに本当に面白くみました。

先日NHKで放映された「山の巨人たち」放映前のインタビューで平さんが
「山の〜」の難解なセリフを自分なりに理解する一例として「文楽の人形が
人間以上に人間らしい動きをする」というのを引用されていたのですが、
そんなことも思い出しました。
文楽見始めてまだ短く、最初のうちは声は一人、人形と別々、更に人形
遣いが顔を出しているなど文楽特有のスタイルに慣れなかったですが、
徐々に面白くなりつつあります。
一つにはスター主義で、見せ場ばかりが繰り返し上演される歌舞伎と違って
比較的地味な場面も含めてストーリー重視の演目が多いのが、ドラマ好きな
私の嗜好に合っているのかも知れません。
24日のトーク、今から楽しみです。

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コメント

かのこさま
文楽の油の感想の内容、いつもながら素晴らしいもので、感服です。「山の巨人~」の項も、まったく同感です!二部での勘十郎さんの落ち着いた雰囲気から、打って変った感じの与兵衛でしたから、「なるほど、このときのために静かにしていたのか…。」なんて思っちゃいました。勘十郎さんは、義経千本桜でも、その動きは素晴らしかったので、今回も「さすがだなぁ」と思いつつ、あまりのすってんころりん振りに、げらげらと笑ってしまったくらいでした。本当に、文楽ならでは、です。3月10日に、スペース・ゼロでも文楽がありますね。勘十郎さんは出ませんが。
24日の解体新書、私は外れたので、残念ですが、かのこさまのコメントを楽しみにしていますので、よろしく!
マスミ

投稿: マスミ | 2009.02.18 00:08

マスミさま
スペースゼロの文楽チラシ、先日の「新宿狂言」の
会場でも配布していましたね。
実は最初の頃、小さい女の子の役とかをベテランの大夫がなさっているのはどうしても違和感があったのですが、慣れてくると文楽って話に集中できておもしろいですね(^_^)/~

投稿: かのこ | 2009.02.18 08:06

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