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2009.03.29

「ムサシ」を観る

彩の国さいたま芸術劇場
初日から3週間ちょっとして漸く拝見しました。

開演前にガレリアとホールで開催中の「中越司の舞台美術」展示を拝見。
細かい支持の中に、常に「すみません!」や「やりすぎました!」とか
「時間がないのに〜」などスタッフに気を遣う中越さんのメモがあって、
中越さんの人柄を感じました。
今回の舞台も美術は中越さん。

キャストの話題性だけでこれほど盛り上がった舞台も久しぶり。
藤原くんは「かもめ」、蜷川さん舞台では「身毒丸」以来、小栗くんはチケット
とれなさに小栗くんの人気沸騰を実感した「カリギュラ」以来でしたが、敢えて
二人を比較するなら甘さと決別した力強い男っぽさの藤原くんが小栗くんを
圧倒した気がします。
小栗くん「カリギュラ」にあった生命の危機感みたいなキレが(あれはご本人が
異常な多忙スケジュールでカリギュラ同様ギリギリだったと言う部分もあり
ますが)今回やや影を潜め、優等生的に、お上品になってしまった様な。


さて本編。
基本的な舞台になる寺の境内は、明らかに能舞台を模していて、上手に本舞台、
下手に向かって橋掛が延びる構造。ちゃんと正面に階(きざはし)もありました。

全体としては、このところ「表裏」「道元」「藪原検校」と、井上さんの、
かなり噛み応えのある旧作再演や、清水さんの難解な作品に慣らされていた
せいか、非常に判りやすく、いや判りやす過ぎるくらい。

ラスト前の、皆が仕掛けを明かすところ場面で、井上さんの、前に読んだインタ
ビューの武蔵、小次郎に関する(正確な表現ではありませんが)、「人を斬って
出世した人間はやはりどこかおかしい。二人は落とし前をつけるべき」と言う
一節を思い出し、これが井上さんの肝だろうなぁと感じました。

五人六脚もタンゴの練習も面白かったけれど、あれも、白石さんの「蛸」も
鋼太郎さんの謡も、決定的に本筋の落としどころの伏線になり得ず、個人芸に
とどまって見えたのが惜しいかな。
(鋼太郎さんの謡は本田さん、白石さんの狂言「蛸」は萬斎さんの監修)。

あの手の馬鹿馬鹿しい笑いのシークエンスについては、「道元」「表裏」で
散々見る方も鍛えられたようで、目が肥えてしまった気がします。

空になった舞台に蝉の鳴き声が響き渡るラストは、白石さん演じる女性が能面を
拾い「夏草や強者どもが夢の跡」と呟く「国盗人」のプロローグ&エピローグを
つい連想してしまいました。

役者さんは皆さん上手かったですが、今回に関しては個人芸の集合としては強い
印象を受けましたが、作品としてはひょっとすると、キャストをもう少し地味
目にしたら違うのかも知れませんが、判りやすい、取っつきやすい分、もう
一息の深さや痛さのような物がやや犠牲になったのかも。

中では大石さんが相変わらず凄い。
「道元」に続いての禅寺のお坊様役で、何か板についてきたと言うか、あの
笑顔のパワーは印象的でした。

あとはやはり中越さんの美術と宮川さんの音楽。

冒頭から出放しの満月はつい先日の「十二夜」のイギリス新聞の「目玉焼」
コメントを思い出してしまいましたが、舟島から鎌倉に転換するところで、
いつもならササッと転換させる蜷川さんが、竹と建物をゆっくり奥から動かし
出す珍しいスタイル。
まるで深山幽谷を分け入る映像を見るような美しさで、蜷川さんの芝居には
非常に新鮮。
また音楽も、去年の「覇王別姫」でも素晴らしかった宮川さんですが、所謂
「らしい」伝統的な音楽と現代的なメロディのミクスチャが見事。
中でも笛と謡と言う和の音楽にパイプオルガンの音色を被せたところは、鳥肌
ものでした。

「95kg〜」を分からんと言いながら、ここまで判りやすいは判りやす過ぎと
言うのですから、観客なんて全く気まぐれな生き物ですね。

観客の多くが最後の大石さんのセリフが止まった瞬間に拍手し始めていました
ので、既にかなりリピーターがいらっしゃるようでした。

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コメント

かのこ様。

Bunkamuraの『ジュリエット』ページに気を取られすぎて
すっかりこちらにコメントしそびれてしまいました・・・。


う~ん、やはり・・・(^-^;

かのこ様の書かれている内容と
私のモヤモヤと思っていた事がハマった感じです。
先ずテーマがはっきりしすぎていて、ビックリと言うか違和感。
“そんなにハッキリ言っちゃうのね(^-^;”と。

おっしゃる通り、
解らなきゃ解らないで、(-0-)???と思うくせに
“ハッキリしすぎ”と言ってみたり、
ホント、勝手ですよね・・・(苦笑)


そうそう、かのこ様が『ムサシ』の日だったでしょうか
『95kg』楽日に行ってまいりました。
前日までイギリスにいたはずの蜷川さん、
ゴールド楽を見届けに、いらしてました!
すごいフットワーク!!!

あの渡り廊下の辺りで
蜷川さんと秋山くんが二人でにこやかに話していて、
なんだか微笑ましかったです♪
他にも廊下では、役者さんたちがタバコを吸ったり、
普通にお昼を食べていたりと
(校舎内にあるカフェでは、ゴールドの皆さんと相席でしたし♪)
なんでしょう、あのほのぼのモードは・・・(笑)
他の劇場ではあり得ない(^-^;?


投稿: 抹茶みるく | 2009.04.02 00:57

抹茶みるくさま
そうでした。なんかあの渡り廊下でキャストさん
普通にされてましたね。
帰りにスタッフが「御面会ご希望の方いらしたら
お声掛けください」とか言っていたし!(^^)!

投稿: かのこ | 2009.04.02 06:44

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