事件は劇場で起こっていた・・・と思う。
蜷川さんが前に「芝居は事件でなくては」と言う趣旨の発見をされていた記憶が
ありますが、その意味で言うなら、全く「ファウストの悲劇」は「事件」だったと
思います。
藤原竜也くんも小栗旬くんはじめ、売り出し中の若手俳優も一人として出てはいま
せんし、注目を浴びている女性アイドルも、舞台初出演の有名事務所所属男性
アイドルも出演してはいませんでしたから、事前宣伝も地味目。
しかも扱うのが、シェイクスピアでも清水邦夫でも井上ひさしでもない、日本
では余り知られていないマーロウ(ゲーテならまだしも)の「ファウスト」。
ファンとして少しは下調べし、先行訳も読んだものの、始まるまでこの戯曲が
どう視覚化されるのか、どう面白くなるのか、さっぱり想像出来なかったのですが、
始まってみれば、プログラムでたかお鷹さんが言ってらした「大人の童話」が
ぴったりの、ハチャメチャにデコラティブな、聖俗入り乱れてのイリュージョン。
悪いぞ、止めとけと思いながら引き返せない実に主人公らしからぬ優柔不断に
して実に愛すべき(悪の道まっしぐらも共感できないし、余りに道徳的では
芝居にならない)、悪事しながら反省しきりなファウストくん。
行きつ戻りつしつつ、結局は引き返せなかった期限つきの夢の生活が、いかに
酷い犠牲を強いたかをシニカルに見せつけながら、後口上で言われた通り、
それも人間仕方なかろうと理解もして見せる、複雑な祝祭劇?でした。
シアターガイドサイトの検索ランキング、25日朝の時点で、「黙阿弥オペラ」に
続き、圧倒的人気の野田さんの「ザ・キャラクター」をさえ抑えての2位と言う
のも個人的には納得です。
(単に事前情報が少なかったからか?)
タイトルは勿論「踊る大捜査線」の有名な惹句のもじりですが、和洋を渾然一体
にし、見えない世界、日本人には難関の宗教絡みのテーマを演出家の力業と
役者の個人技と(出演okした役者さん皆さん偉い!)、裏方スタッフの技量の
コンビネーションで見事に可視化してみせたこの芝居、本当に終わった今でさえ、
良く実現したものと感動しています。
それにしても明日から張り合いが無くなるなぁ…。
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