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2010.11.21

「現代能楽集Ⅴ」を観る

シアタートラム

この日は昼はパブリックシアターで「K2」、夜はトラムでこれ、と、半日
三軒茶屋で過ごしました(笑)

さて「現代能楽集」

前回の野田さんの「ザ・ダイバー」は別格でしたが、個人的には最初の「AOI」
以外は(長谷川くんを初めて見たのもこの作品)、元の話を余りに脚色し過ぎて
「なんだっけ」状態(この話はポストトークで出てきて個人的にやたら受けました)が
続き、毎回「?」。
今回も、正直萬斎さんのポストトークがなかったら食指は動かなかったのですが
(現金)、劇作が「AOI」と同じ川村さんと聞いてちょっとだけ(失礼)期待
して伺いました。

ロビーでは「PST7」、そして早くも今回の戯曲が販売されていました。
(川村さんは今回劇作のみ。川村さんによる演出版は、12月に日大芸術学部の
学生発表として上演される予定)

今回は「春独丸」(元話は「弱法師」以下同)「俊寛さん」(「俊寛」)そして
「愛の鼓動」(「綾の鼓」)

別に元話を知らなくても現代劇として楽しめれば多分それで構わないのでしょうが
やはり能狂言に興味がある人間としては、元話との差異を認識して見たい。
「俊寛」は有名で歌舞伎にもなっているし、「弱法師」は「近代能楽集」で
藤原くんで見た事もありましたが、「綾の鼓」は能を見たことがなく、粗筋だけ
把握して見ました。

セットは適当に直線が引かれた床に、枯山水のような岩がいくつか。
正面は雲をイメージしたようなデザインのやや高い位置に窓、そのアプローチに
三段程の梯子段。(最後の「愛の鼓動」で手前に池と本水が出現してびっくり)
ベテラン堀尾さんによるデザインは、私には茶室のように感じました
(窓が、位置は高いけれど、にじり口のように見えたので)

上演時間は80分、15分休憩、45分でしたが、内訳はやや長い「春独丸」(60分)と
「愛の鼓動」(45分)の間に、短く狂言の「附子」などの要素を取り込んだ
「春独丸」(20分)が挟まる形でした。
実際の能→狂言→能と言う上演形式に似ていました
(勿論川村さんは意識していた模様)

「春独丸」は自分の子どもの目を潰し、捨てた罪の意識をカモフラージュして
生きてきた女(久世星佳さん)とそのハンディをものともせず、見返すつもりで
占い師からミュージシャン、果ては政治家にまでのし上がった息子(岡本
健一さん)の壮絶な「親子」再会の物語。
「タイタス・アンドロニカス」初演の鮮烈なエアロンが未だに脳裏に浮かぶ岡本くんが、
今回もやっぱりめちゃめちゃ上手かった。
白シャツ、黒ズボンに学生帽、布バックを斜めがけにした可愛い高校生?姿に
違和感がないばかりでなく、カントリーミュージシャンのような恰好でギターの
弾き語りはやるし、ジャケット姿も滅法かっこいい。
盲目で足も不自由と言う春独丸を生き生きと演じる身体性の高さは、このまま
「リチャード三世」どうぞ!と言う雰囲気でした。
(新国立版「ヘンリー六世」で超魅力的なリチャードを見せてくれて、あのまま
「リチャード三世」をやって!と思ったものでしたが、今回その思いがなおさら)

ラストの桜吹雪舞い散るシーンも美しく、今回の3作の中で最も完成度が高く
印象的でした。

「俊寛さん」は語尾に「ござる」が付き、衣装も「浦島太郎」のような(素材は
ハングルとか書かれた布やビニール手提げを解体したものなど廃材メイン)感じで
明らかに狂言を意識していて、思わず客席でご覧になっている「本職」の芸術
監督ドノの表情を盗み見してしまいました(苦笑)
前半は海亀の卵を食べる食べない話、中盤ではタコに貼り付かれて苦労する話
などがマイムで喜劇的に描かれ、ホッコリしていたところに、元曲通り(この
作品は衣装は現代的でも名前などは元曲のまま)赦免師が客席通路を通って
やってきて、以下元曲通りに進みますが、違うのは赦免されて戻る二人は、島の
生活に慣れて、「生きるには難しく死ぬには簡単な東京」(なぜかここは現代)に
戻りたくないのを連れ戻される事(俊寛と別れる事は寂しくなさそうでそこは
ちょっとシビア)
残される俊寛は「自分は冤罪だから」と仲間2人に言って「いつかは」みたいに
強がりを言いますが、一人になって実は彼らより重罪だから戻れないとボソリ。
前半は喜劇的だっただけに、後半の残酷な結末がより印象的でした。
俊寛を演じたのは筧さんと同じく、第三舞台の絶頂期を支えていた小須田さん。
岡本さん同様に身体性の高さを見せて下さいました

ちなみに、ポストトークで川村さんは「自分が演出する訳じゃないからいいや」と
ちょっと無責任に(笑)「海亀」「蛸」を戯曲に書いたそうですが、演出の倉持
さんは狂言の手法を取り入れ、マイムで「現物を出さない」で対応。
ポストトークで川村さん、「ご自身の演出の時はどうするんですか」と突っ込まれて
「日芸で見て」と苦笑されてましたが、どうするんでしょうか(笑)

休憩を挟んで「愛の鼓動」
恐らくは先般公開された死刑制度にインスパイアされた部分もありそうだし、
またオンエア中のドラマ「モリのアサガオ」でも扱われている、死刑囚と執行人の
関係に「綾の鼓」を取り入れて描いていましたが、個人的には余り好みでは
なかったかな

「綾の鼓」にあたる「それ」が余りはっきり明示されなかったのが最大の原因
ですが、最後に想いが伝わって、執行人の娘が植物状態から脱した奇跡が
描かれたのは希望があって良かったです。
池が出現、本水が降り、最後に蓮の花が池の底からむっくり登場する演出でしたが、
ポストトークでは「これに予算をかけるなんて」やら「初日は蓮の花が出なくて
出ないなら(演出)止めれば」とか、稽古中は演出に「外野」から厳しいお言葉が
飛んだ模様。
この日も一部花が浮いて来なかったのを、芸術監督ドノ、にこやかに笑いつつ
指摘されていました。

ポストトークについては余裕があれば別項立てる予定(無理かな~)

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コメント

かのこさま

ご無沙汰しています。
健一サマがご出演なので、能とか狂言とか全く知らないけど
観に行って参りました。
シアタートラムは初めて足を踏み入れました。
こじんまりしていて良い雰囲気ですね。

やはり原作を知っている方がより深く理解できたとは
思いますが、知らないなりに楽しめました

健一サマの生歌、生ギター、まさか聞けるとは思って
いなかったので、テンションUP
初めて聞いたのでとても嬉しかったです。
歌もギターも上手でした。
もちろん芝居も

最前列で観ていたので、1話目の時から上からしずくが
ポタポタ垂れているのが気になっていました。
雨漏り?でも雨降ってないしな~なんて思いながらも、
床が滑って役者さんが転びはしないかと心配しながら観ていました。
3話目で登場の雨が漏れていたんですね~

24日のアフタートークも楽しみです。
いつも公演パンフレットを買うのですが、この公演は
売っていませんでしたよね?

帰りにパブリックシアターの前を通ったらたくさんの人が
並んでいて、びっくり
【K2】の当日券の列でした。
私は発売日にチケットが取れなかった時点ですでにあきらめました


投稿: emi | 2010.11.22 01:29

emiさま
パンフレットなかったでしたか?
最近できるだけパンフレットは買わないようにしないとあとが大変と思って見てなかったですが、どうだったでしょう?
岡本さん、本当にがしっと観客の目をわしづかみにしますね~ポストトークで「元アイドルとか元宝塚とか、小劇場とかいろいろな出自の役者さんが集まって」という発言があって、そうか、岡本さんもアイドルと呼ばれた時期があったなあ~とか妙に感慨を持ってしまったくらい、今は役者さんですよね。

投稿: かのこ | 2010.11.22 06:15

かのこさま、emiさま

失礼いたします。今回パンフは発売されていませんでした。全員に配布されたプログラムだけです。ただ、戯曲と関連記事の載ったSPT07のみ販売されていました。ポストトークの後、戯曲を購入した人のみの川村毅氏のサイン会があって、サインをいただいてまいりました。

投稿: 礼未 | 2010.11.23 19:14

礼来さま
「回答」ありがとうございました!
そうそう、ポストトークの帰り、出口に向かう私を後ろからつつつっと抜いて行った身軽なおじさまがいらっしゃるなと思ったら、サインをするために、ロビーに急いで出ていらした川村さんでした(^^ゞ
ポストトークで萬斎さんから「次回作も是非」と言われて、にこにこされていましたが、確かに「ダイバー」を抜いたら、この「現代~」は川村さん作品が一番相性が良く成果を上げている気がしますね。

投稿: かのこ | 2010.11.23 19:28

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