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2010.12.19

「能楽現在形@劇場版」を観る

以前は同じ演目で流派が違ったり、トークがあったりしたので頑張って全回
伺った事もありましたが、今回は3回のうち、土曜日夜1回のみ拝見。
でも上演終わる度に、近くのお客さんが「昼と全然違う」「昨日と違う」と頻りと
おっしゃっていたのを聞くとやはり、同じ演目をキャスト違い(と言って良いか
判りませんが)で続けて観られる機会などなかなかないので、やはり見てみた
かったかも
(金曜日昼があり無論無理でしたが)

今回は「安達原」と半能「絵馬」
「安達原」は「黒塚」とも言い、能楽堂で拝見した事も、また歌舞伎になった
のを見た事もありました(「三響会」公演でも見たかも)が、今回何より印象的
だったのは、土屋先生の解説文と、開演前と終了時に響いた音でした。
解説文は、アイが女の寝所を覗く行為には、明らかにスキャンダル好きの人間の
変わらぬ嗜好が感じられると、また、女の行為を「裏切られた男とその子の遺骨を
押し入れに隠して平気で編物している現代の女みたい」と書いていらして、特に
後の部分はちょっと笑ってしまうほど納得しました。
まさに!
見るななどと言われたら見たくなるのが人情で、土屋先生の言う「イザナギ&
イザナミ」もですが、私は直ぐに「鶴の恩返し」を連想しました。
しかしこれって何だか、野田秀樹さんとか、鐘下辰男さんが芝居に書きそうな。
「鵺」とか「卒塔婆」とかどうも現代演劇人はそれがプライドなのか、「現代
能楽集」ではあえて難しいテーマを選びがちですが、たまにはこう言うのも
(市原さんの家政婦か、芸能レポーターみたいなアイの存在共々)ぜひともです。

そう言えば昨日見た「摂州合邦辻」も「歳の近い義理の親子がいたら何かマチ
ガイが起きない訳がない」と言う人間のやや浅ましい想像力が引き起こす悲劇と
イヤホンガイド言っていたのを思い出し、「人間って…(苦笑)」がドラマを
作ってるのを実感。

また「安達原」開幕前にはシューシューと間欠的に音がしていて、良く伺って
いるサイトの管理人さんは「ススキ野を渡る風の音」とおっしゃっていらして
多分それが正しいのですが、私には交通量の多くない時の高速道路を時々
ハイスピードで車が通過する時の音に聞こえてました。
多分安達原と言う地名とかから、高速道路が開通して一般道の通行量が減り、
一気に過疎化した元はそこそこ繁栄した地方都市にひっそりと住む女と言うイメ
ージを喚起してしまったようです。
どちらにしても「侘しさ」「寂しさ」全開。

そして幕を兼ねたスクリーンが降りてきて、「安達原」と大きな字でタイトルが
投影された途端連想したのは、毎回タイトル出しに懲りまくる劇団新感線の
オープニング。
全く、能ときたら一旦能楽堂を離れると、いかに可視化されていないイメージが
多く自由なのでしょう。

さて開幕前から舞台上には能面の女のシルエットを象ったものがあり、遠目に
それがスクリーンに投影されているのか、オブジェなのか判らなかったのですが、
幕が再び上がると、それは客席側から見えている能面シルエット面を一面とする
三角柱で、女はその中にいました(能舞台の作り物の小屋の代わり)

ちなみにこれは後に左右に残り2面を展開してアイが覗き込む部屋の壁風になり、
後場前には後見がワイヤーを付け、天井に吊り上げて処理していました

ついでに言うと、この三角柱スクリーンは「絵馬」にも「天の岩戸」として登場、
どうやら今回の隠しテーマは「立てこもる女」だったようです。

閑話休題。
で、女と旅の僧(+アイ)のやり取り→女の不在とアイの好奇心(萬斎さんの
何とイキイキしていた事!)→後シテとワキメンバーバトルと続く訳ですが、
面白いもので、せっまい能楽堂なら何となく効き目ありそうな数珠の法力が広い
特設舞台だといくらでも逃亡可能で法力の効き目が希釈されて届きにくく見えま
した(追い詰める、って感じにならないからでしょうか)
僧が唱える言葉に合わせて梵字が床に投影されたのは、何となく「陰陽師」風
でもあり、「ファウストの悲劇」の黒魔術シーンでした。
奥に左右から中央に高くなるスロープ、中程に左右を貫通する通路、そして奥
中央から手前に一気に走り込めるスロープと、いつものパブリックシアター特製
能舞台の構造でしたが、私が見た印象では少なくともこの回は余り上手く使われ
てはなかった様な。
いっそストーリー的な面白さに特化しても良かったのかも(偉そうか)。

一方「絵馬」
いきなり一段高いところにいたアマテラスが踊り、ん?これもうアメノウズメ?と
思ったら、例の折り畳み式三角柱による「天の岩戸」が下りてきて立てこもられた
のでやはりアマテラスだったと一安心。
普段だと出の順番と立ち位置でだいたいの役が判るのですが、こうしていきなり
板付きで始まると素人は迷いますね。
そして「絵馬」では劇場ならではの演出が効奏。
舞台埋め込みの下からの全開照明が、アマテラス立てこもりでバサッと暗くなり、
岩の締まる音とダブルで、いかにも世の中真っ暗に。
ま、能なので、アメノウズメの躍りも、まあお上品な事(笑)で、これで出てくる
アマテラスさんは余り「娯楽」慣れしてなかったのかな(笑)
そして岩戸が開くと、また岩オープン音と共に、下からの照明全開。
上から見ていた分、全体の明るさや光のバランスが美しく見えました。

それにしてもアマテラスをされた喜正さんの声は凄く響いてびっくりしました。
ラストはアマテラスは最上段まで上がり、アメノウズメとトジカラオは中段に
左右に分かれて幕となりました。
土屋さんも「レビュー」と書かれてましたが、確かに!でした。
光の中で神々しく舞う姿はちょっと宝塚っぼかったし。

余り何も考えないで美しさを楽しめた30分でした。

でも最初に書いたように、周りの方たちが昼や前日との違いをしきりにおっ
しゃっていたので、他の回がどうだったのか、どう違っていたのか(特に「安達
原」のアイの絡み方はワキで随分違いそう)是非知りたいところです。

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