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2011.04.13

「ヴェニスの商人」を観る

恵比寿エコー劇場
劇団AUNのシェイクスピアシリーズ。
今回は横田さんがグラシアーノー役で客演。

ギリギリに取った割には前方良席。

蜷川さんが「嫌いな演目だからやらない」と明言されている以上、恐らくここで
なければ見られない、鋼太郎さんシャイロックに、谷田さんのバッサーニオと、
個人的には理想的なキャスト。

蛇足ですが、蜷川さんが嫌いと言っているのと並んで、この芝居のタイトルを
聞くと必ず思い出すのは、井上ひさしさんの「天保十二年のシェイクスピア」。
シェイクスピアの全タイトルのセリフなどが引用されていると言われているのに、
何と「ヴェニス〜」からは、「バッサーニオ!」の一言だけ(笑)。
なだけに、逆に「バッサーニオ!」だけで受けてしまいます。

以上余談。

セットは直線を基本とし、対比として劇中多用される黒と白を使った抽象的な
ものに、白いカーテンを開け閉めさせて場面転換をスピーディーにしたため、
殆ど戯曲をカットせずに休憩10分込み2時間45分にまとまっていました。

さて「ヴェニス〜」はシャイロックを虐げられ差別される側として描くやり方と、
シャイロックを血も涙もない悪人に仕立てて、ポーシャの採決を「あっぱれ!」と
して描くやり方があると思いますが、今回はできるだけその中間を行こうとして
いた気がします。
勿論、ユダヤ人であるシャイロック(と駆け落ち前のジェシカ)は黒服、アントー
ニオらキリスト教徒たちは(そして改宗させられたシャイロック)白服、男女の
対比も、いや、そもそもこの物語はアントーニオとバッサーニオたち以外は
みな何か対立と束縛を抱えています。
それでも私にはシャイロックは単なる「わがままじいさん」には見えませんでした。
それは偏に鋼太郎さんの存在感によるもので、喜怒哀楽がはっきりし、金の
亡者なセリフを吐きながらつい娘には鍵を渡してしまうし、だいたい、アントー
ニオに金を貸す時に利子なしと言うアントーニオの流儀を貸す側のシャイロックは
拒む事もできたのにしない。
そして案の定?アントーニオが借金を返せなくなった時にも、バッサーニオの
倍返し提案も蹴ってあくまでも「契約」に拘る。
あれは見た目理不尽で意地悪で頑固なオヤジですが、商売するならその方が
正しくないでしょうか。
私にはシャイロックが、確かに差別される事からくる意地もありそうながら、
契約条文を墨守しようとする律義な(やや過激ですが)商人に見えました。
契約に関してはアントーニオやバッサーニオの方が適当で、あっさり契約を破る
事を提案してます。
一方、バッサーニオたちにはサークルの先輩後輩的な、無条件で助け合うノリが
あって、これはこれでなかなか楽しげ。
と言うか、冒頭に金を貸してもらえる目処がついたバッサーニオがアントーニオに
キスをするシーンなど見るにつけ、また、ポーシャとの約束は破って指輪を渡しは
しても、アントーニオとの約束は破らないのを見ると、どうもこの二人はアヤシイ(笑)

それにしても鋼太郎さんの黒ソフト帽、黒スーツ、黒かばん、黒傘と言う出で
立ち、申し訳ないですが、どうしても「笑ゥせえるすまん」(表記微妙…)の
喪黒福造か、ネクラのチャップリンに見えて仕方なく、またラストでキリスト教に
改宗させられた事を暗示するように全身真っ白のスーツで登場してきた時の
着心地の悪そうな表情が絶妙でした。
鋼太郎さんのシャイロックは、ユダヤ人であると言う誇りを失うまいと足掻いた
シャイロック、でした。

バッサーニオの谷田さんは今までよるかなり力みがとれましたね。
特に指輪が自分のプレゼントした物だと気づくのにワンテンポあったのが笑え
ました。
「SP」では怖い顔ばかりだったので柔らかさが良かったですし、グラシアーノ
役の横田さんが真横でアドリブ炸裂させるので時々笑いを堪えるのが大変そう
でした。

その横田さん!
指輪が逆光で見えない、とが、バッサーニオの横で延々ちゃちゃを入れ続ける、
とか、やりたい放題(笑)
横田さんがロレンゾー役で出演された市村さんシャイロック版(グレゴリー・
ドーラン演出)ではどこかKYなキャラクターだったグラシアーノーが愛すべき陽気な
人物として、バッサーニオと対になっていたのが印象的でした。
女性役は交替でしたが、私が観た回のポーシャ役林さんは、米倉涼子さんのような
凛々しい、と言うか男前な印象。何故か法学博士を演じていた時の方が生き生き
して見えました。
中井田さんのアントーニオは揺るがない信念の人でしたが、まさか劇冒頭でアン
トーニオが朗々と歌う、とは思いませんでしたし(3幕2場に出てくる歌を上手く
使ってました)、こんなに笑った「ヴェニス」は初めてでしたが、小さい劇場ならではの
楽しく、臨場感あり、客席と一体感のある舞台でした。

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コメント

本日千秋楽、最前列で観てまいりました!萬斎師以外の舞台は物凄く久々(苦笑)…いやーあっという間の2時間45分でした!とにかく文句なく面白かったし、鋼太郎さんのシャイロックにかなり感情移入して観てしまいました。横田さんはアドリブ入れまくってたんでしょうかw「逆ギレでーーす!!」で爆笑!!!
客席には少なくとも中村しのぶさんと二反田さんがいらっしゃったと思います。お二人とも至近距離ですれ違いました(笑)。
今になって「あー、『マクベス』も観ておけば良かった」と悔やむことしきり。

投稿: RICC | 2011.04.13 20:50

RICCさま
お~~~最前列で鋼太郎さんシャイロックをご覧になりましたか!!
しかし、鋼太郎さんに芝のぶさんに二反田さんと、萬斎さんがらみの役者さん揃いまくりですね!!

ちなみに、上記グレゴリー・ドーラン演出では、アントーニオが西岡徳馬さん、バッサーニオが藤原くん、ポーシャが寺島さん、シャイロックが市村さん、グラシアーノが小林正寛さん、ロレンゾーが横田さん、サレーリオが廣田さん(この方も「わが魂~」で萬斎さんと共演されてますね)、ジェシカが京野ことみさん(「鞍馬天狗」で萬斎さんと共演)でした。

投稿: かのこ | 2011.04.13 23:34

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