「杉本文楽〜曽根崎心中〜付り観音廻り」を観る
私の夏休みの締めくくりは、初めて伺う神奈川芸術劇場(KAAT)での文楽公演。
普通の文楽のホール公演ではなく、伝統芸能に造詣が深い杉本博司さんが(確か
萬斎さんの「解体新書」に骨董品持ってご出演されたのは杉本さんではなかった
でしょうか)新たに発見された台本に基づいて独自に構成、滅多に上演されない
「観音廻り」を付け、また一人遣い人形を使うなどいくつかの試みを盛り込んだ
企画もの。
本当は3月に公演される筈が、震災で延期され、お盆の時期になったおかげか
空席があり、拝見できる事になりました。
劇場は昔行きなれたカナケンこと神奈川県民ホールの真裏、NHK横浜放送局ビルの
上(5〜8階?)にあり、がっちり3階まで客席、天井まで相当高さがありました。


このエスカレーターの上が劇場入り口

来月ここで同じく杉本さんプロデュースによる、万作さん&萬斎さんの三番叟
公演がありますが、高さをどう克服するかが課題になりそうな、と言うか、さすがに
3階席は普段下から見上げる能狂言、もしくは目線高さで見る文楽を観るには
向かない気がしました。
ま、実も蓋もない言い方ですが、結論から言うと、学者さんの研究による新しい
部分より、長年先人が工夫を凝らして磨き上げてきた「天満屋」部分がやっぱり
面白かったんですけどね(苦笑)
まずは胡弓と三味線のプロローグ(良く判らない)に続いて、タイトルにもある
「観音廻り」
ブランドもののスカーフを衣装に仕立てた一人遣い人形を手にした勘十郎さんが
舞台奥からまっすぐライトによって形作られた「道」を歩いて来ると、その両側に
巨大なスクリーンが舞台に向けて八の字に広がるように据えてあり、大夫が語る
寺の名や地名が出てくるとその実写の石碑が写ったり、お詣りするお初(別撮り)の
アップが写ったりする仕掛けでしたが、3階席からはスクリーンの上の部分は、
舞台のプロセ二アム枠?か何かに遮られて肝心のお初ちゃんの顔が見られず(笑)
スタッフはチケットを売っておきながら、3階からの視野チェックはしなかったので
しょうか (愚痴)
観音廻りに続いて生玉神社の場。
ここからは普通の人形でしたが、舞台は相変わらず人形の足元を隠す仕掛けが
全くないので、ちょっと妙だし人形遣いさんは大変そうでした。
休憩を挟んでいよいよ「天満屋」→「道行」
相変わらず裸舞台足元なしかと思いましたが、さすがにそれだと初が徳さまを
足元に隠せないので、下手に出入りの引き戸を舞台に平行に(コクーンでもやり
ますが、大抵古典では戸は舞台に垂直に置かれるのを変えている)置き、正面奥に
赤地に梅柄の巨大暖簾(天満屋店先の象徴)を提げ、手前に通常の文楽公演の
ように舞台の立ち上がりと言うか足元隠しと言うか(正式に何と言うのでしょうか)を
真ん中は出入りのために開け、また上手側を数段階段状にしたものを置いての
上演でした(ま、3階からなんで何を置いても全部丸見えですが)
道行は客席に花道状に入り込んだ通路(これも3階からだと細かい舞台装置の
仕掛けが全く見えないので半分推測)最後は花道を入って行った?感じがしました。
「天満屋」は九平次に嫌みな感じが少なかったのと「道行」が非常に長かった
気がしましたが、どんなに変化球を投げても、やはり初の「足」の使い方、見せ方
二人の心中のやり取りのリアルさに目を奪われました。
「道行」のあと、簑助さんを中心に、大夫、人形遣いの皆さんが顔出ししての
カーテンコールがあったのにはちょっとびっくり。
特に簑助さんが中央でシャキッと手を上方席に向けて伸ばされて挨拶されたの
には本当に驚きました。
(ミュージカルよろしく、三味線の方々の席にも手を向けられたのも)
結局細工も新発見も、「やっぱり簑助さん、勘十郎さんの人形は美しいし、
嶋大夫さん、清治さんは素晴らしい」と言うシンプルで当然の感想の前には吹き
飛んだ感じでしたが、劇場版文楽公演の一つの試みとしては斬新で興味深かった
です。
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