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2011.12.24

「その妹」を観る

シアタートラム。
年末に出張が入ったためにこの連休は芝居ハシゴ状態。
シスカンパニー公演今年最後は、武者小路実篤の「その妹」
武者小路さんなんて「仲良きことは美しきかな」とかぼちゃの?絵の色紙くらい
しか知らない無知で、こう言う戯曲がある事も知りませんでしたが、盲目の兄を
市川亀治郎さん、「輝くような美貌の」妹を蒼井優さん、周りを段田さん、西尾
さん、鈴木さん(これ「啄木」と同じ顔あわせ)、更に秋山菜津子さんと言う
芸達者な役者が揃ったので見てきました。
蒼井さんは先日の「プライド」で見た山口くん、馬渕さん同様、蜷川さんの
「オセロ」に出演、初舞台のハンディはありながら、「そりゃオセロー溺愛だわな」と
納得のデズデモーナが印象的でしたが、今回も男性社会に翻弄される妹役。
来年萬斎さん演出の「サド侯爵夫人」でタイトルロールのサド侯爵夫人、ルネを
演じるのも楽しみです。

才能があり将来を嘱望されていた若い画家(亀治郎さん)が日露戦争で盲目に
なり、絵の道を諦め作家を目指す。
妹はその口述筆記を含め身の回りの世話をしている。
しかし、妹の美貌に目を付けた感じの悪い金持ちの男(語られるだけで当人登場
せず)から求婚され、しかもその男は、失明した兄と妹が身を寄せている叔父の
勤務先の上司(だか雇主)なので、妹が断ると一家は叔父の世話を受けられなく
なる可能性。
兄妹は兄が処女作を託した編集者(段田さん)の勧めに従い、編集者の援助で
生活を始めるが、編集者は妹に好意以上の気持を抱き、それに気付いた妻(秋山
さん)との仲も拗れて行く。
結局、妹はその「感じの悪い男」の元に行く事を自ら選択し、兄と自分たちの
非運を嘆くところで終わり。
妹の美しき自己犠牲がツボだったのか、周りにはすすり泣く声も随分しましたが、
私はそう言う事より、何で妹も周囲も嫁に行くか、兄が芽が出るかしか生きる
道がないと思うかが疑問でした。
要は「何で自分で働かないのか」と。
おそらくそう言う選択肢のない、漱石の世界で言うところの「高等遊民」なので
しょう。
現に編集者も支援されていて、自分の稼ぎは借金の返済にも足りないと白状して
いて、それでも「どうにかなる」とか言うから奥さんに嫌われるんですね。

見ていて判りました。
つまりこれはチェーホフの世界に近いのだと。
皆、生活力は然程なく、でありながら互いを慰めあっている、実に狭い世間
狭い価値観で暮らしているのだと。

しょうがない連中の他愛のないちっこい井戸の中の物語で、間違えばアナクロ
ですが、亀治郎さんはじめキャストがみなさん非常に良くて(蒼井さんも徐々に
舞台慣れしてきました)、しかもダラダラした話を凄い早口で捲し立てる様に
喋るので、お涙頂戴と言うより、喜劇的にすら感じさせたのが、違和感を薄めた
要因だったように思います。
亀治郎さん、髷をしないで和服着流し姿は、思った以上に段四郎パパに似てきま
した!
相変わらず凄いセリフを物ともしないのは素晴らしかったです。

美術は松井るみさん(働き過ぎ!)
殆ど動きがない、みっしり2時間半のセリフ劇なので、裸舞台の右手(客席に
潜る感じ)と奥に階段を作って見せたのがアクセントになっていました
演出は「父帰る」も手がけた河原さん。
現代ものは余りしっくりしないのですが、意外にこうしたクラシックな雰囲気の
芝居に相性が良いと言うか、繊細に演出されるのに長けている気がしました。

或いはこの作品、兄の日露戦争での怪我が発端である事を考えると、盛り上がる
「坂の上の雲」の負の後日談と取る事も可能かも知れません。

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コメント

私も16日に「その妹」観てきました。私が行った時も泣いていらっしゃる方がいて(私は全然泣きませんでしたが)、私も「何で自分で働かないのか」とずっと思いながら観てました。自分で働いたら、問題は解決するだろうにって感じがしました。それに、盲目になってしまったので画家を諦め小説家に転身っていうのも、絵を描く才能と小説を書く才能は違うだろうにって、ここでも今の時代からしたら非現実的な感じもしました。
でも、結果的には私が好きな亀治郎さんと秋山菜津子さんを観れただけで満足だったんですけどね(笑)

投稿: 華菜 | 2011.12.24 21:34

華菜さま
よかった~~同じ意見の方がいらして(*^^)v
ここで泣かないのはまずいのではないかと思うくらい、いや、あるいは風邪か花粉症なのかと思うくらい周りが泣いていたもので・・
私はそれより激近で見ていて、蒼井さんの顔の小ささと、舞台前端まで出てくる時に足元見ないで(見られない設定だし)足指先で細かく細かく舞台端を探ったり、濡れた着物の裾を火鉢で乾かすとか、鉄瓶に手を触れて熱がったりする亀治郎さんの超細かい芝居に見惚れていました(^^ゞ
秋山姉さん、相変わらずかっこよかったですねえ。

投稿: かのこ | 2011.12.25 07:42

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