「シレンとラギ」を観る
青山劇場。
藤原竜也くんと永作博美さんをメインに、高橋克実さん、北村有起哉さんらを
客演に迎えての、いのうえ歌舞伎最新作は、いのうえ作品には珍しい、究極の
ラブストーリーでした。
本家・歌舞伎で言うところの「時代定め」で言うと、舞台はまさに「太平記」の時代。
登場人物の名前には南北朝のキャラクターに因んだと思われる名前がぞろぞろ。
《注意》名前で内容ネタバレしてしまいますので、未見の方はご注意を!
★南の国の教祖・ゴダイ大師(高橋克実さん)→後醍醐天皇
★かつてゴダイ暗殺のために身辺近く入り込み、子どもまで成して暗殺を図った
女・シレン(永作さん)→後醍醐の寵姫・阿野廉子(レンシ)
※+文字通り「試練」の意味もありそう
★北の国の侍所の長・キョウゴク(古田さん)→京極(佐々木)道誉
★キョウゴクの息子、実はゴダイとシレンの息子で、ロクダイを名乗り跡を
継ぐ青年ラギ(藤原くん)→義良(ノリヨシ)親王、後の後村上天皇
★南の国の将軍にして、ゴダイのカリスマ性低下で勢力衰えると見るや、キョウ
ゴクと組み南の国と北の国まとめて片付け、自らの国を狙った男・ダイナン
(橋本じゅんさん)→(大楠公と言う呼び方から)楠木正成
★南の国の武将。シレンに好意的。実はかつて密かに生まれたゴダイとシレンの
息子を内密でキョウゴクに養育を託した男・シンデン(北村くん)→新田義貞
★北の国の実質的権力者・モロナオ(粟根さん)→高師直
★北の国の弱っちょろい国王と思っていたら、実はキョウゴクの特訓でやたらに
強かった国王・ギセン(三宅さん)→足利幕府二代将軍・義詮
※冒頭に「先代のソンシが亡くなり」と言っていたのは「足利尊氏」の事
でしょう。
(役柄対比は何れも個人的推測です)
物語は南北朝の対立を軸に、現在の世界情勢を写し込み、また、ラストに南の
国中に撒き散らされる毒煙は明らかに放射能や核のイメージ。
しかし根幹を形成していたのは、シレンとラギの「オイディプス王」そのものの
禁断の愛。
まるで少女のような華奢でファニーフェイスの永作さんと、キラキラ直情青年
そのものの藤原くんだから観客も受け入れられるのか、或いは客席の何割かを
占める藤原くんファンには「身毒丸」などで微妙にインモラルな世界に耐性?が
あったのか。
(実際、帰り道で「お母さん、僕をもう一度産んでください」だよね〜と笑い
あっていた女子グループを目撃)
物語的には、シレンとラギがゴダイを追い詰める(と思っていただけだが)までを
人間関係縦糸横糸入り乱れた緊迫感と見事な立ち回りで描いた一幕に比べると
二幕がちょっともたついた感じ。
ラギがいきなり教祖になり、何が伏線か解りにくい「愛は殺しあい」とか言う
教義を叫ぶ行動が狂気なのか「ふり」なのかの曖昧さ、キョウゴクの変わり身の
速さがどうもテキトーな奴にしか見えない違和感、キョウゴクと娘の思わせ振りな
関係の結末の中途半端さ、何より「人として」の一言に紛れて、シレンもラギも
その不適切な関係にケジメをつけることなく、簡単に乗り越えてラストまで生き
抜いてしまっているのは、どうなのか…。
目眩ましのような殺陣、かっこいい照明の中で繰り出されるかっこいいセリフ、
実は実はの歌舞伎らしい展開に目を奪われて、その時は凄いと思いましたが、
どうも微妙に引っかかって後味としてカタルシスに欠けた感じがしました。
藤原くんは随分顔がすっきりして(メイクもあるけど)びっくりしましたが、
蜷川さんでも新感線でも藤原くんは藤原くんでした(笑)
凄かったのは高橋さんで、テレビでは見られない、初めて見る「凶暴な」高橋
さんでした。
声も良いし、迫力満点でした。
この作品唯一?の理性的常識人、シンデン役の北村くんは「オイル」「オレス
テス」「黙阿弥オペラ」に続いて(多分)4回目の藤原くんとの共演、また
「メタルマクベス」以来の新感線出演でしたが、 声と言い、姿と言い、本当に
見ていて安心。
来年は大河出演ですが、舞台もコンスタントに出ていただきたいです。
古田さんは後半大活躍。
久しぶりにキレのある殺陣を拝見しましたが、役のキャラクター自体がやや微妙
でした。
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