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2018.12.06

「民衆の敵」を観る

「民衆の敵」を観る
リニューアルした文化村、久しぶりのコクーンで、イプセンの
「民衆の敵」を観てきました

演出家のマンビー氏は、同じコクーンで、同じ堤さんでの「るつぼ」を
観ていますが、ひたすら耐える主人公はちょっと私の思う堤さん
キャラとは違っていて、やや物足りない気がしましたが、今回は
正義が社会に敗れるとはついぞ思わない、恐ろしくピュアで、恐ろ
しく排他的で、恐ろしく楽天的で、恐ろしく利己主義な主人公が
はまりました。

セット転換に小野寺さん的な、ポーズに力点のある集団のダンスを
取り入れて、完全暗転も幕休憩もなく、そこまで突っ張って大丈夫
かと堤さん演じるトマスの危うさと、「社会」や「大衆」の移り気と
日和見と、集団心理と残酷さを痛感した2時間15分でした。

中盤の、トマスと実兄で弟と利害が対立する市長(町長?)役の
段田さんとの兄弟口論シーンと、ラスト前の、トマスの演説会
(のはずが、トマス糾弾大会)シーンは、観客が演説会の聴衆に
見立てられ、迫力があり、久しぶりに私の中での「ザ・堤真一」を
堪能しました。

観光による地域活性化の為に採掘した温泉の、杜撰工事のために
起きた健康被害問題を、解決せずに隠蔽しようとする行政と市民の
対立は、全く、昭和や平成に日本でも実際に起きた事件事故が想起
されましたし、また、上述した段田さんはじめ、木場さん、外山さん
大鷹さんと、個性的で味わいのあるベテラン男優陣が、戯曲のもつ
普遍性を的確に伝えていましたし、空気を読んで呆気なく変節する
新聞記者を谷原さん、赤楚さんと言う、正統派二枚目俳優がされる
のも面白い捻りかたでした。

しかし何より、それ以上にしみじみしたのは、意図したか偶然か、
舞台の端々に、一時期この劇場を「主戦場」にしていた蜷川さんの
影が漂っていたことでした。

主要キャストはみな蜷川さん演出作品に出演されており(堤さん:
「将門」「タンゴ」など、安蘭さん:「アントニーとクレオパトラ」
木場さん:「カフカ」「天保山十二年」「ヘンリー六世」、谷原
さん:「あわれ彼女は〜」、段田さん:「将門」「タンゴ」「元禄
港歌」)、外山さん:「ヴェローナ」「お気に」)、更には、さい
たまゴールドシアターから田村さん、武居さんら4名が、「大衆」
役として若い俳優さんに混じって芝居をされていたのはびっくり
しました。

そして留めが、ラストシーン。
自身の正義感なために、完全に町中を敵に回してしまい、住む家をも
奪われたトマスが、そうなっても尚意地を貫く、最早喜劇的ですら
あるセリフを吐く中、舞台に上から不意に石がバタリ、ボタリ、
バタバタと落ちてきました。
「ヘンリー六世」の冒頭の血の塊はじめ、これぞまさに蜷川さんの
必殺技「垂直落下」(笑)
その後継を久しぶりに見た気がしました。

それにしても最後まで一貫して常識的だったのが、妻と娘という
女性二人だけでした。

いや、面白かったです。

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