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2019.07.02

「六月大歌舞伎」(夜の部「月光露針路日本」)を観る

201906n

三谷さんのPARCOでの「決闘・高田馬場」は画期的でしたが、さす
がに歌舞伎座ともなると、物理的な舞台幅から客席数、スケールも
登場人数も桁違いの中でどうやるかなと思って見ましたが、要は
蜷川さんや野田さんのように歌舞伎の形式を意識してと言うより
歌舞伎役者と歌舞伎の技術で現代劇をやる、と割り切っていた
仕上がりでした

素材は歴史好きの三谷さんらしく、みなもと太郎さんの「冒険者
たち」の一部を劇化したものだそうですが、言えば、井上靖さんの
「おろしや国酔夢譚」や、吉村昭の作品に同じく、大黒屋光太夫の
ロシア漂着からの、壮大で奇跡的な旅の顛末を描いた内容。

今回、ワンシチュエーションが得意な三谷さんにしては珍しく、
時間と場所がどんどん移る、ロードムービーならぬロード歌舞伎に
お得意の会話劇を被せたスタイル。

一市民が運命の悪戯に巻き込まれる歴史の不思議さはそれなりに
面白かったですが、やはりバシッとヒーローが登場する、美男美女の
許されぬ恋、もしくは、実は実はの意表を突く転換、と言う種類の
歌舞伎の得意技なしで、あのハコのスケールに挑むには、漁師の
群像劇はいささか華やかさに欠けました。
しかも帰りが呆気ないのもやや残念

また、大海原の航海の苦労や、長い時間経過、寒い荒野の絶望とかは
どれも標準的な歌舞伎技術ではどれも苦手な表現で、どうするの
かなと思っていました
私の知る限り、「NINAGAWA十二夜」の難破シーンを超えるものは
歌舞伎では未だにないし、シェイクスピア先生もしばしばそれらを
「観客の想像力に委ねる」と言っていたくらいで、今回も犬橇は
確かに楽しかったですが、寒さや広大さを伝えるにはヤワすぎて、
困難さが上滑り。

何だか失敗と落胆続きで「いだてん」一部が盛り上がらなかった
のとかなり似たもどかしさを感じました(毒)

勿論、猿之助さんの地味な漁師とエカテリーナの演じ分け、染五郎
くんの頑張り、後半、ポチョムキン役で、思い切りキラキラ衣装で
出てきたのに、さすがは「アマデウス」のサリエリを長くされて
いただけあって、歌舞伎座ですら全く違和感のなかった白鸚さんの
経験値、新作にも果敢に挑まれるベテラン陣、スーパー歌舞伎Ⅱ
あたりから、ほぼ無茶振り状態に巻き込まれている若手女形など
みなさん頑張っていましたが、結局場をさらって行ったのは、
完全アウェイのはずの八嶋智人さん。
歌舞伎役者さんたちが、メリハリつける以外はナチュラル芝居を
意識しているらしい中で、あれをやったらわざとらしいだろう、を
逆に臆せず八嶋さんがやっているのが凄い(笑)

ドラマでのあざとさが今ひとつ、と思っていましたが、今回、見事な
スパイスになっていました。

海の見せ方、距離や時間の表現、主役はやっぱりもうちょっと
華やかに、とかするか、敢えて、ロシア政府から返事が来ないのを
悶々と待つ「ゴド待ち」的なワンシチュエーションドラマで見せる
とか、なんかもう一捻りで再演希望。


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