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2019.11.17

映画「夕陽のあと」を見る

Yuhi

シネマカリテ(新宿)

都内ですら一館上演で、しかも月内上映、としか書いてないため、
強引に時間を作って見てきました

産みの母と育ての母の対決の物語は、ブレヒトの「コーカサスの
白墨の輪」を思いだしますが、これは鹿児島の島を舞台に、自然と
人情あふれた美しい風景の中で、二人の母親の苦悩が誠実に描かれて
いて、涙ボロボロで困りました(笑)

結局は非常に常識的な判断をなされて終わりましたが、途中、産みの
母親が黙って子どもを連れていく、もしくは、それができないと
知って自殺を図る、育ての親が産みの親が親権を譲らないのを恨んで
具体的な敵対策を打つ、ラスト、バスに乗らないで引き返してくる、
などなど色々な別の可能性があり得、ハラハラしながら見ました。

脚本が過不足なく(島に受け入れる時点で前科とか調べなかった
のか、とか疑問点はありますし、育ての父の存在が薄いとか)、特に
良かったのは、焦点となる、子ども自身に、判断を求めたり、多くを
語らせていないことと、二人の母親に優劣や勝敗をつけない結末に
したところ。
全ては大人の問題、突き詰めると二人の母親がどこまでそれぞれ
親としての幸せとは何かを問う物語でした。

舞台が鰤(ぶり)漁を主な産業とする漁港と言う設定が、最後の
最後に二人の母親、と言う部分にリンクするとは思わず、おおっと
言う感じでしたし、五月があかねに自慢した故郷の海辺の美しい
夕陽を見せた後に、あかねが自殺を留まった東京のビルの上から
見たのも夕陽だったと観客には判り、更にあかねの過去を五月が
辿る時に、五月が東京のビルから夕陽を見ると言う、畳み掛けも
見事で、五月は勿論、あかねに見せた地元の夕陽の事をあかねが
どう思って見ただろうと思わせる、夕陽のリフレインが印象的
でした。

産みの母親・あかね、を貫地谷さん、育ての母親・五月を山田真歩
さん。
普通考えると逆の配役かなと思いましたが、二人ともぴったりでした
貫地谷さんは最初爽やかな感じから徐々に化粧が濃く、女性性が
前面に出る感じ、山田さんは母親として自信に溢れていた感じから、
特に東京に行くあたりから不安や苦悩が滲んで、何れも素晴らし
かったです

で、そもそも見に行くきっかけの川口くん。
同じく貫地谷さんとの共演だったテレビの単発刑事ドラマでは、
正直残念でしたが、今回は、育ての親夫婦とは幼なじみの自治体の
福祉職員役で、特別養子縁組など五月夫妻のサポートをする一方、
あかねには移住以来、ちょっと好意を持っていて、と言う、なか
なか重要で、良い人炸裂の重要な役柄。

どうしても島に来る前のあかねの生活を知るために東京に行くと
言う五月に付き添って東京まで行く、皆は生活も家族もあるのに
自分は実子も取り返せない、何もかも私にはないと叫ぶあかねに、
自分と結婚して、地域の人間として豊和を見守って行こうと言う、
何よりラスト、「行ってらっしゃい」とあかねを見送るところが
良かったです

この作品の監督とは以前にも「アレノ」と言う作品に山田さん
共々出演しているのは知っていましたが、そちらも是非見てみたく
なりました。

残念ながら映画館は満席ではありませんでしたが、想いの詰まった
良い映画でした

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