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2024.10.28

日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」は楽しみが過ぎる

作・野木亜紀子さん、演出・塚原あゆ子さん、音楽・
佐藤直紀さん、主題歌・King Gnu と、私の好物しか
ありません

まず個人的には劇伴音楽。
久しぶりに「佐藤直紀サウンド」炸裂してました。
特に海を渡るシーンや、ラストの端島音頭のシーン
とか。
長崎が舞台なだけに、福山さんの「龍馬伝」が思い出さ
れました
ひょっとしてラストはピーススタジアムから福山さん
ライブとか?(withさださんで?)

野木さんは、原作ものでしたが過去と現在二つの
時間軸を行きつ戻りつしながら進行する「罪の声」を、
映画の制約で2時間余りに手堅くまとめた実績が
あるので、今回はさらに緻密な伏線を張り巡らせての
後半一挙回収の職人技を期待できそうです

初回からも「悔しくはないか」「人生変えたくないか」と
言う同じセリフを鉄平からリナ、いずみさんから玲央に
言わせていて、これだけならリナ→いずみさんに
なりそうですが、百合子の母親が胸で十字を切る、
いずみさんが鼻唄を歌うなどあたりが、今後のフックに
なるかも

それにしても、神木さん、杉咲さん、土屋さんと
「朝ドラ」の主役を3人幼馴染みで並べただけでなく
國村さん、中嶋さん、宮本さんなどベテラン俳優さんが
揃い、安心感しかないキャスティング

次回以降も楽しみです

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2024.10.24

「天橋立」へ行く

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何かお芝居のついで、ではなく、珍しく「観光だけ
旅行」をしてきました

学生時代に「松島」と「宮島」に行ってから「日本
三景」ひとつ残しているのを、ずっと何となく気には
なってたんですが、なかなか行く機会がないまま○十年、
去年「ブラタモリ」で特集されて、改めて行こう!と
思いたち、やっと「三景」制覇してきました(笑)

天橋立駅に近く、龍のうねりが鮮やかな、「びゅー
ランド」の展望台は、到着時点で入場待ち100分、
とかであっさり諦め、観光船でわたって対岸の傘松
公園からの眺めだけでしたが本当に綺麗でした。
また、細長い「橋(龍)」にはびっくりするような
きれいな砂浜があり、海岸の松との見事な「白砂青松」
でしたし、徒歩での「橋立」入口にかかる回旋橋は、
観光船などを通すたびに90度旋回する仕組みになって
いて、伺った日は天気も良く観光船に臨時便が出て
いたので、かなり頻繁に橋が旋回し、都度回る橋部分に
乗っている係の方が案内と交通整理をされている
光景も拝見できました

近年、この一帯は自治体を跨いで「海の京都」として
一体での観光振興を図っているようで、起点になる
天橋立駅も観光案内や各チケット販売、フリースペース、
コインロッカー完備。
何より綺麗で新しいのが良く、近くには日帰り温泉
までありました

今回は時間がなく、丹鉄のおしゃれな企画列車に乗ったり、
さらに奥の伊根や、手前の舞鶴や福知山などには
寄れませんでしたが、北陸新幹線が敦賀に延伸した
事で北陸経由でのアクセスも便利になったいま、
まだ乗った事のない北陸新幹線経由で舞鶴方面から
再訪するのもありかも、と既に妄想中(笑)


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2024.10.22

『パルコステージ"8K"フェス』でアフタートーク実施の発表が発売開始ギリギリすぎる

来月8日からバルコ劇場で、超高画質で収録した
パルコプロデュース作品一挙上映イベントが開催、
また各作品上映後に関係者によるアフタートークが
開催されると、イープラスからお知らせ来たのですが、
何と発売当日って、ギリギリすぎ。
パルコ劇場のメルマガにも何のお知らせもないのも
よくわかりません。
来てほしくないのか、逆に告知しなくても大丈夫と
踏んでいるのか(笑)

「パルコステージ"8K"フェス」
11月8日(金)~14日(木)

■『笑の大学』
作・演出:三谷幸喜
✳︎アフタートーク
11月8日(金) 17:00上映後
三谷幸喜、福井健策(「EPAD」代表理事)

■『桜の園』
作:アントン・チェーホフ
英語版台本:サイモン・スティーヴンス
翻訳:広田敦郎
演出:ショーン・ホームズ
✳︎アフタートーク
11月9日(土) 13:00上映後
広田敦郎、成河

■『リア王』
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:ショーン・ホームズ
✳︎アフタートーク
11月9日(土) 18:00上映後
松岡和子(翻訳)、玉置玲央(出演)

『海をゆく者』と『オーランド』も予定されていた
らしいのですが、今回は準備(何の?)が整わず、
上記3作品になったとか。
「オーランド」はもう一度見て確認したい事があった
ので残念。
それにしてももう少し早くお知らせいただきたいかなと。

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2024.10.14

映画「あの人が消えた」を見る

「侍タイムスリッパー」を見た日、席の予約はした
ものの、開映まで移動して何かするには短い、と言って
何もせず待つには長い、変な時間が空いてしまい、どう
するか悩んで、時間がぴったりはまったのと、新聞
評に「気持ちよくも騙される」、と見た記憶があった
ので気軽に見られそう、と選択しましたが、下手に
予備知識なしで見て正解でした

まあ、見てみれば映画にする程のスケールでもなく(笑)、
寧ろ5話完結くらいにして、最近の流行りの次回
オンエアまでの間の「ネット考察」を楽しむくらいの
でも良かったのかもですが、伊坂幸太郎さんの小説
(の中村義洋さん監督での映画シリーズ)好きには
結構楽しめました
(それでも「アヒルと鴨のコインロッカー」くらい
気持ちよく騙されるのはなかなか難しいものですが)

あとから「ラストマイル」を見て(ブログの
アップ
順が逆になりましたが)、どちらも「コロナをきっかけに
通販&配送サービスを身近に感じた」と言うのが制作の
スタートラインにあったらしいのと、もう1つ、
中村倫也さんがサプライズ的にキャスティングされ
ていて「謎解き」が物語の核になっていました。

こちらは配送会社社員と受取る側の物語に集約され、
「ラストマイル」はその配送会社のさらに上部に
位置する、インターネット通販会社「売る&配る側」の
組織を見渡すダイナミックな物語にと、一見対称的な
物語に仕上がっていたのですが、結局はどちらも
非常に個人的な物語に行きつく、と言う共通点が
あったのも、なかなか興味深かったです。

それにしても、配達員の丸子が独りごちたように、
いまや同じ集合住宅でも、住人同士より、宅配ドライ
バーの方がよほど住人それぞれについて詳しい、と
言うのは、多分割に当たり前の事になっていそう。

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「室井慎次~敗れざる者」を見る

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映画館は初日でも平日、さらにレイトショーでそこ
まで混んではいませんでしたが、席はあるのにプレミ
アムシートから埋まっているのが、さすがシリーズ
もの、そしてコアファンがある程度年齢層が行って
いるだけあります(笑)

ドラマから全てリアルタイム見てますが、今風に
言えば「箱推し」ではなく、あくまで“弐号機”「新城」
推し
なのでシリーズも映画は本編は「4」以降は興味なく、
更にスピンオフは「真下~」でギリギリ。
君塚さんが監督もした「容疑者~」は地味な上に
主要キャストに滑舌のよくない方がいて、二回目は
日本語字幕つき回を見に行った程のセリフ聴こえの
悪さと、アンチ室井の人々の描かれ方が余りに現実離れ。
クライマックスに室井を「救出」し、広島行きの辞令を
渡す新城のかっこよさ以外に見所なく、それ以降殆ど
興味を失っていました

それがまさかの「復活」。
ただもし復活してもオリジナルの青島や恩田が登場
することはないだろう思っていたので、顔ぶれ一新
しての令和の湾岸署(いまや「空地署」ではない)で、
リブートするのかと思っていたら、むしろ「容疑者~」の
流れをくんだ室井の後日談になったのには驚きました

さらに「真下」以外のスピンオフに携わってこなかった
本広さんの「復帰」、そして、音楽が松本さんから
変わっていた(勿論、「G-groove」は健在)のにも
びっくりでした

映画は最初から二部作、と発表されていたので、
今回は前編
退職して秋田に戻って第二の人生を送っていた
室井に、
「あの事件」が再び影を落とす、と言うところまで。

劇中にはドラマや映画シリーズからの懐かしいエピ
ソードや映像(特にエンドロールは多分監督渾身)が
盛り込まれ、また、新城は勿論、緒方(甲本さん)、
森下(遠山さん)、坂下(升さん)など、テレビシリーズ
からのメンバーが(中の方も)立派になって登場。
特に、と言うか、やはり、室井の家での新城との
やりとりは、「入試で遊ばず死ぬほど勉強しておいて
良かった」(THE MOVIE)のバッチバチだった頃から
見てきてるだけに、尚更感慨深かったです(笑)

それにしても君塚さんは「容疑者~」の小原にしても、
今回の奈良にしても、どうも働く女性の描き方が
ワンパターン
なんかみていてイライラしてなりません
(遡れば沖田も)

「事件解決」は当然(笑)後編に先伸ばしでしたが、
今回は何より、室井と暮らす貴仁を演じる齋藤潤くんが
素晴らしかった
特に拘置所の面会室でのほぼ一人セリフは圧倒的でした
あとから調べたら、映画「正欲」で、磯村勇斗さん
演じる佐々木の中学生時代、「カラオケ行こ!」
にもでていた若手の役者さんでした

そしてもうお一人!
いしだあゆみさんが、地元の酒屋?さんのおかみさん
役でご出演されていてびっくり
80年代前後、「金妻」とか「北の国から」そして
NHK「阿修羅のごとく」などで活躍されていましたが
本当に久しぶりに拝見しました
(因みに映画でのリメイク版の「阿修羅~」でいしだ
さんがなさった三女を演じたのは深津さん)

事件解決は当然後編なので、「乗り掛かった船」、
見に行きます(笑)

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「錦秋十月大歌舞伎」を観る

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例年なら11月の顔見世に役者さんが集まる歌舞伎座
ですが、今年は期中に突然11月に舞台機構装置工事を
する、と発表があり、いきなり東京の顔見世公演が
中止になり、若手役者さんによる、不規則日程昼夜
同一演目公演へ変更に
その反動?なのか、今月のチラシには役者さんが
ギチッギチに並んでいて、目も古典から新作まで
色々で、一貫性がみあたりません(笑)

昼の部
「平家女護島~俊寛」
これ、吉右衛門さんの代表的な当たり役の1つですから、
趣旨からしたら先月の「秀山祭」でやるものだった
のでは?と思いはしますが、前月、超美人の玉手御前を
なさっていた菊之助さんが、今月は髭ぼうぼう、
流人の俊寛、と言う歌舞伎でしかありえない「転生」が
起きてました(笑)
菊之助さんが最近手掛けるいくつかの時代ものの立役の
大役に劣らず、この俊寛も素晴らしく良かったです
史実の俊寛が流罪になったのは40あたりだったらしい
ので、ある意味リアル。
瀬尾との立ち回りも考えてみれば、確かにこのくらいの
年齢でないと無理かも

成経が萬太郎くん、康頼が吉乃丞さん、千鳥が吉太郎
さん、と全体の年齢も当然下がり、歌六さんの丹左衛門、
又五郎さんの瀬尾の迫力が際立ちました
(又五郎さん一時期随分お痩せになったなと思いまし
たが、今月はお元気そうでよかったです)
吉太郎さんの千鳥が、ちょっとした喋り方の間の違いで
島の女子っぽさを出していたのも新鮮でした

菊之助さんの迫力の賜物でしかないのですが、ラストが
ダイナミックな舞台転換が際立って、なんだかこのあと
「キャスト・アウエイ」のような孤島サバイバルっ
ぽいスペクタクルストーリーからの、「モンテ・
クリスト伯」よろしく、俊寛さまが見事に脱獄して
平家に復讐をとげそうに見えて、強烈な孤独感と
言うよりかっこよささえ見えてしまいました(笑)
山場をやたらとタメずに愁嘆場にしなかったのは、
実は個人的には好みで、これからも楽しみです

夜の部
「婦系図」
泉鏡花×玉三郎さん、さらに仁左衛門さんなら間違い
ない、と思ってましたが、「ふるあめりか~」的に
サバサバな玉三郎さんお蔦の鈍感女子っぷりもやや
「はて?」、仁左衛門さんのザンギリもですが、
やはり恋より義理、個人の感情より世間体、みたいな
大時代なもの言いの話は、古典で観るなら何となく
大丈夫でも、現代ものだと歯が浮く感じがどうしても。
「光る君へ」や「源氏物語」で展開する、完全に姿も
社会規範も違う、制約の中の色恋なら悲恋にもなり
「雅」とか「萌える」とか言えますが、同じ話が令和を
舞台にされたら「ハラスメント」と「モラル逸脱」
だらけでとても「雅~」とは思えない気がしそうなのと
似て、「千本桜」や「菅原伝授」でなら泣ける話でも、
明治でだとちょっと無理でした。

ところが「雅」も塩梅がなかなか難しい
「源氏物語~六条御息所」
以前、舟橋源氏の「浮舟」を、玉三郎さん浮舟、
勘三郎さん匂宮、仁左衛門さん薫で見た記憶もあって、
今回もなんとなくそれ系かと思っていたら、玉三郎さん
監修によるオリジナルで、内容も含めて、ちょっと
二次創作的な感じでした

六条の愚痴が恐ろしく長くてくどい、源氏と葵父母と
昭和のホームドラマみたいな雰囲気の違和感など
細かく書き出すとキリがありませんが、能にも造詣が
深く、これまでにも能の様式を歌舞伎に積極的に
取り入れてこられた玉三郎さんが六条をなさると言う
からには、当然、能「葵上」の後場に寄せ、能面的な
メイクで横たわる葵(能では衣だけ出す)を打擲し、
霊厳あらたかな横川の僧都に調伏されるダイナミックな
クライマックスを期待していて、実はこの演目は、
日をおかずにリピートしたのですが、1回目に見たときは、
確かに僧都たちに祈りに祈られ、じわじわと花道に
下がり、すっぽんから消える、と言う、期待通りの
演出だったのですが、なぜか2回目に見たときは、
1~2回抗ったら、さっさと、かなりさっぱり目で
終わらせて舞台に並べ立てられた几帳の影に消えて
しまい、あれれ?でした
明らかにすっぽんに消える演出の方が良かったのに

しかし一番のびっくりはラスト
なんと「葵がもののけで死なない」!
これぞ「二次創作」と書いた所以で、プロセスを
変えるのはともかく、結末を変えるのは、さすがにこれは。

しかも今回、上村吉弥さまが、初日から休演
玉三郎さん芝居には「天守」にせよ「桜姫」にも絶対
不可欠な、私のご贔屓で、本当に残念すぎましたが、
代わりに、と言うか、侍女役で出演していた、好蝶
さんと言う、研修所出身で、時蔵家のお弟子さんと
言う若手の女形さんを「発見」したのは大収穫でした。
もうどう見ても女子よね?と言うビジュアル、身の
こなしで、最初は「婦系図」に続いて、新派の女優
さんが出演されているのかと、配役確認してしまった
くらい。
芝のぶさま以来の衝撃です。
好蝶さん、覚えておきます!

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映画「ラストマイル」を見る

「あの人が消えた」と同じく「コロナをきっかけに
通販&配送サービスを身近に感じた」と言うのが、
制作スタッフのスタートにあったそうですが、塚原&
野本コンビがそこに見いだしたのは、最早インフラで
ある巨大eコマースの、仕組みの危うさを炙り出す
物語でした

しかもコンビによるこれまでのヒットドラマ「アン
ナチュラル」「MIU404」の世界線と繋がっている
のがポイントで、「アンナチュラル」ファンとしては
UDIラボの人たちがどんな風に登場し、どんな風に
活躍するか(しないか、単なるカメオな)のかも、
楽しみにしていました

社会生活全体に影響を与える「事件」は、最初は
組織的な犯行かと見せて、最終的には流通を支える
のは人である、と言う構造の物語に集約されると言う
のが、ポイントでした。

満島ひかりさんヒロインのエレナも一時は「事件」
関係者かもと思わせたり、岡田将生さん演じるマネー
ジャーは事件の解決に奔走しながらエレナの正体を
知ることにもなり、振り回されまくってましたが、
ああいう立ち位置でいて、かつ個性を発揮できるって
なかなか難しい。
かつて映画「悪人」で、他人の痛みを感じられない
酷い金持ち大学生と、彼に捨てられる気の毒な女の子の
役で共演していたお二人を未だに印象深く覚えている
だけに、(岡田くんをただのイケメン男子じゃないと
名前を覚えたのはこの映画のおかげ)今回はなんだか
感慨もありました。

話は逸れましたが、この物語には、通販会社の機関
部分で「コンベアは止めるな」と格闘するエレナ
たちと同時に、それを支える下請け運送会社の中間
管理職、安い配送料を愚痴りながら配達にやりがいを
感じている親子、受けとる側の家族が平行して描かれて
いましたが、配達員の息子が元電気製品メーカーに
勤めていたこととか、岡田さんの演じる孔の前職とかが
ギリギリで事件に絡む仕掛けは絶妙でしたし、阿部
サダヲさん演じる運送会社の部長が、電話の相手を
間違えて社長にキレるシーンは面白かったです

勿論、UDIラボの皆さんも、機動捜査隊も、そして
ちょっとだけ成長したUDI元アルバイトの研修医・
久部くんも違和感なく登場、そして、ミコトさんは
事故現場の被害者の年齢を見抜き、久部くんはキー
マンの大切な一言を聞き逃さず、とGOOD JOBでした

まあここまで規模の大きな会社が4日で責任者をクビに
するのかは良くわかりませんでしたし、ロッカー
裏のメッセージも完全にわかったとも言えず、冷静に
考えると「?」なところもまだありましたが、楽しめ
ました

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2024.10.08

「ピローマン」プレビュー

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新国立劇場(小劇場)

新国立の新シーズン幕開けは、小川芸術監督がその
キャリア初期に手掛け、当時、演劇賞を手にした、
ゆかりのある「ピローマン」

作者のマクドナーと言えば、私は「ビューティー・
クイーン・オブ・リーナン」の印象が強いので、
見る前から、これも多分「嫌ミス」系な作品だろうな、
とはある程度覚悟してはいましたが、のっけの取り
調べシーンから、なかなかハードで、このままの
テイストで延々続くなら、一幕で帰ろうかと、真面目に
考えたくらい。
(結局は結末知りたさに最後まで見てしまいましたが)
入口に「トリガーアラート」の貼り紙があるのも
無理ないと思いました

また今回、成河くんと亀田さん、小川さん演出、
と言う「タージ・マハル」トリオ再結集である事も
個人的な楽しみの1つでしたが、亀田さんが体調不良で
かなり間際に降板され、木村了さんが代役に立たれ
ました
木村さんは、新国立での昨シーズン、これも小川さん
演出の「レオポルドシュタット」に出演されていた
記憶が新しくら特にナチスの憲兵役の切れ味が凄かった
のですが、代役にと言われるだけの小川さんからの
信頼の証でしよう、プレビューを見た限り全然代役、な
感じはしませんでした。
(雰囲気を亀田さんにちょっと寄せてるようには見え
ましたが)

客席が両側から細長いセットを挟む配置。
見てませんが、前回の演出時も同じような配置だった
ようですが、私は見てすぐ、渋谷での再演バージョンの
「BLUE/ORANGE」を連想しました。

さて
成河くん演じる、児童文学作家のカトゥリアンの
取り調べと、独白からなる、なかなかに強烈な一幕が
終わって休憩に入ったところで、個人的には、後半は
たぶん兄・ミハエルの、同じような取り調べシーンに
なり、実は、カトゥリアンの言った二人の関係や
起きた出来事はすべてカトゥリアンの思い込み、
あるいは全てが逆で、ミハエルがカトゥリアンを庇う
話だった、と言う「アヒルと鴨のコインロッカー」的な
(大好物)種明かしが待っているのかと思ったりも
しましたが、結末は予想より遥かに陰惨でした

陰惨、と言い切るには勿論誤弊があって、最終的に
カトゥリアンが一番望んだ事の1つは、若い刑事の
おかげ?て実現するのですが、これがマクドナーの
作家としての矜持、作品の眼目だとしたら、本当に
身を削る、と言う言葉がぴったりの恐ろしさを感じます

また、劇中で物語られる、カトゥリアン作の物語の
うちでは、タイトルである「ピローマン」が当然
一番物語とリンクしていましたが、個人的には「緑の小豚」の
物語が、個人と社会、多様性の容認について考えるのに
象徴的だなと思いました。

キャストは成河くんも木村さんは勿論ですが、刑事役の
齋藤さんがキレッキレでした
正論しか言ってないし、一番冷静な役なのだ
けれど
それでいて、怖い。
でも刑事が自作、と言う仙人が投げた紙飛行機の
話は、作家だと自称すろカトゥリアンの陰惨なストーリー
より、やはり凡人には受け入れやすいのがまたシニカル
でした。
(斉藤さんは、前回も同じ役をなさっていたとか)
そして成河くん、那須さん、大滝さん、齋藤さんの
4人は、同じ小川さん演出での、クリスティの法廷劇
「検察側の証人」(2021年)にご出演メンバーでしたので、
個人的には今回それぞれ役割が入れ替わっていたのも
興味深かったです
(前回は順番に検事、証人、弁護士、証人役だった)
ネクスト出身で、「ハリポタ」メインキャストも
演じている松田くんもこの強者キャストの中で頑張って
いました。
(最後の決断のきっかけのようなものがちょっと
わかりにくかったのは、敢えての演出?)

本公演のチケットも実は入手済みですが、もう一度、
あの冒頭シーンを見る鋼のメンタルはちょっと私には
ないか。
プレビューからどれくらい変わったかを確認したい
気はするのですが(汗)、せっかくもう一度勇気を
奮って観るなら、反対サイドから観たい気がするの
ですが、ほとんど同じ位置なので思案中です。

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新劇×大衆演劇の不思議な化学反応「旅芸人の記録」

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「旅芸人の記録」と言えば、反射的に岩波ホールで
ロングラン上映されたテオ・アンゲロプロス監督の
映画を連想しました。
浅野さんが出演されると言うのでチケットを取り
ましたが、場所はスズナリだし、鄭さん演出なので、
何かきっと映画とは違うんだろうな、と予想しながら
見に行きましたが、予想通り?(笑)いや、それを遥かに
超えて、全然違う内容でした

旅回りの大衆演劇一家の兄弟役を尾上さん(兄)と
大鶴さん(弟)が演じられていましたが、開幕当初は
逆だったのが、尾上さんが公演が始まってから足に
怪我をされたため、急遽、大鶴さんと役を逆にして
上演再開したのだとか。
観劇前に告知されていたのですが、私が見たのが東京
千秋楽で、役を入れ換えてから数日は経っていたからか、
尾上さんは足の自由がきかないことすら最初からの
設定だったように演じ、セリフにいれていたりして、
とても急遽の役入れ換えをしたとは思えず、寧ろ最初
からその役、その設定だったように、違和感なくて
びっくりしました

何より、浅野さん、櫻井さんもさらに梅沢さんまで、
所謂バリバリの新劇畑、新国立や、さいたま芸術で
シェイクスピアのメインキャストをされている方たちが、
全国巡業をする大衆演劇の一家のジタバタな、しかし
否応なく第二次大戦の波に飲み込まれる悲哀を、
劇中劇を交えて滅茶苦茶楽しそうに、違和感なく演じて
おられたのが、さすが手だれの俳優さんたち、であり
なんとも不思議で、日本の芸能、と呼ばれるものの、
不思議な共存構造の典型的なケースを垣間見たような
気がしました

スズナリと言う小劇場で間近に実力のある役者さんを
見られたのは何よりでしたが、それでもこの顔ぶれなら、
シェイクスピアとか難易度の高い近現代の翻訳劇とか
でもすごく解像度高く面白く見られたかもなと、無い物
ねだりを感じた2時間でした。

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美しさが全てを正義にする?歌舞伎座「秀山祭」昼の部「摂州合邦辻~合邦庵室の場」

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9月昼の部、お目当ては菊之助さんの「合邦」。
謡曲「弱法師」や寺山修司の「身毒丸」と同じ「俊徳丸
伝説」をベースに生まれた物語だそうですが、なかなか
手強い気がするのは、玉手御前の俊徳への執着が
どこからどこまでが本気で、どのあたりが「ふり」
なのかわかりづらいところですが、さらに今回、
イヤホンガイドで、合邦があの「青戸左衛門」の世を
忍ぶ仮の姿だと知って、びっくり
「実は」が抜かりなさ過ぎ(笑)

それにしても菊之助さんの玉手は美しい。
元の説話でも玉手は20歳未満とあるので綺麗で間違い
ではなさそうですが、「身毒丸」舞台の白石さんの
イメージが強い分、びっくりしがち(笑)
であればなおさら、罪深さが増す気もしながら、
結末を見れば、美しさで全部が正義に見えてきて、
「そうだったのかぁ」と感心するだけとは違うお芝居
でした

まあ配役としては、個人的には合邦の歌六さんは納得
ながら、俊徳丸は染五郎くんか千之助くん、左近くん
くらいが良かったかなとは思います

しかし、この美しい玉手を演じていた菊之助さんが
今月は「俊寛」のタイトルロールを何の違和感もなく
なさっているのですから、歌舞伎役者さんはすごい。

因みに写真は、その流れなら玉手扮装ポスターに
すればよいのに撮り忘れ。
代わりに、本当に久しぶりに買えた「目出度い焼」の
記念写真です(笑)

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