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2025.02.23

国立劇場二月文楽公演「妹背山婦女庭訓」を観る

202502bunraku

大好物「妹背山婦女庭訓」の(注釈付き)通し

こう言う室内会話劇は、どう考えてもサイズの合った
専門劇場で見るべきですが、何しろ国立さま、未だに
絶賛貸し劇場求めて都内放浪中
(なのにファッションショーには会場貸すとか、いくら
限定的範囲とは言え、あぜくら会員としては納得
できません)
今月も前半は、品川区の「きゅりあん」、後半日程は
文京区の「シビックホール」
少なくとも「きゅりあん」(大ホール)は、今回の演目
には広すぎでは?
緊張感も、太夫さんの声も拡散してしまって勿体
なかったです。
因みに個人的には、都内でなら府中芸術の森の小ホール、
新国立の小ホール、SEPTのトラムくらいが良い気が
しますが。

で「妹背山」です。
今回時間の関係か、なぜか一部が「大内」飛ばして
「小松原」、「蝦夷子館」とばして「太宰館」、
そして「吉野川」と言う組み合わせ。
2部と3部は順番通りですが、3部は「金殿」関連段を
網羅したものの、ホール自体の閉館時間が21時らしく、
自前劇場ならこんなことは起きないのですが、それに
無理矢理合わせるためとしか思えない、2時間50分の
上演時間に対して休憩わずか1回10分!の超強行スケジュール(笑)
良いのか悪いのか見た日は観客がそこまででもなかった
ので大丈夫?でしたが、これで満席なら休憩10分では
とても無理かも。

一部は何より「妹山背山」
大判事に玉男さん、定高に和生さん、久我之助に勘彌
さん、雛鳥に簑二郎さん、そして大活躍する腰元小菊に
簑紫郎さん。
大好きな場面ですが、なんと言っても「熊谷」「寺子屋」
同様、親が子を犠牲にする話なので、常識で考えると
理不尽でしかないし、太宰家と大判事家が「ロミジュリ」
ばりに対決しているのを「太宰館」で見せつけられて
いるので、不穏な空気で始まるのが、結局、両方の
親が自分の子を手をかけるのは、娘を不幸にしない
ため、上司の命令に背いた息子の出頭を阻止するため、
なのが徐々に判る語りがもうじわじわ。
更に歌舞伎と違って人がやらない分、雛鳥の「輿入れ」が
グロくならずに済むのが良いですね
両床の演奏も素晴らしく、この理不尽!と思いながら
結局毎回泣きます
一方、文楽の定番、出来る御姫様の腰元の小菊ちゃんは
癒しの存在。
「小松原~」で久我之助と雛鳥を超速で結びつけ、
更に玄蕃の耳に吹き矢を打ち込んで「業務」妨害と、
働きが素晴らしすぎ(笑)ですが、「妹山背山」での
健気さがまた。

「2部」
鱶七(海)系ミッションパートは「金殿(歌舞伎なら
三笠山御殿)」のお陰で上演頻度も高く、きらびやかな
場面が多い一方、芝六(山)系ミッションパートは、
全般地味だからか、歌舞伎では上演機会が少なく、
私は今回がやっと2回目ですが、前回も文楽でした
しかも登場人物のが多く人間関係が複雑だし、「鹿殺しの
段」はともかく、「芝六忠義の段」は前回、見慣れない
事もあり全く頭に入らず終わってしまった為、今回
個人的にはこの段はリベンジ(笑)
今回、二人の子どもの活躍も健気だし(これが後から
考えると「妹山背山」同様、思いあう自己犠牲)、
やっと全体像を理解しました。
しかし、入鹿誅殺のための鹿殺しと、あばら屋の裏の
祠?(床本を読む限り、「どこから」出てきたか書いて
ない!)から正装の鎌足と采女さんがいきなり登場する
ダークファンタジと、親密な親子の情と言うリアル、
両方を平気で地続きにぶち込んでさえ成立させる
構成力が凄すぎ。
また天智帝登場の時は、小倉百人一首の歌を引用
したり、この時期の人たちの教養の幅広さにも驚き
ます。
多分もう1回見たら完全に理解できそう(笑)

「3部」
主役は勿論、勘十郎さんの遣われるお三輪ちゃん。
「ええとこ」のお嬢ちゃまで、動くとチリンチリン
音がする頭飾りが可愛い三輪ちゃんですが、大好きな
お隣の淡海さんの周辺(特に女性)に光らせる目は
鋭い(笑)
綺麗目女子がこっそり来訪するのを目敏く見つければ、
店の小僧にピンポンダッシュさせて確認(だか邪魔だか)
するとか、可愛い顔して嫉妬と執着と言う「ストーカー
気質」を見せます
そして「金殿」
どうも去年、新・時蔵さんのお三輪の「三笠山」を
見た印象がまだ強く残っているためか、或いはやはり
会場の広さが裏目に出たか、ちょっと物語世界が集約
されず、私の集中力が拡散になりましたが、結局
鱶七は「夫」に役だったとか言ってますが、良いように
権力闘争に巻き込まれて、理由も判らず通り魔に
刺されたも同様のお三輪ちゃんの哀れさが際立ちました。

でもやはり通しは見ごたえ抜群!
大満足。

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2025.02.19

委ねられる映画「ファースト。キス1stKISS」

昭和はトレンディドラマ、平成は硬派社会派、令和は
都会に暮らす経済的には問題ない人たちの日々の機微を
描くコメディ、そして「等身大恋愛もの」と、形は
かわりながら常に話題になる作品を提供し続けている
脚本家・坂元さんの脚本を、「アンナチュラル」
「ラストマイル」の塚原あゆ子さんが監督。
どちらも見る動機になるし、期待大で伺いました。

今作は坂元さんの「カルテット」「大豆田~」でも
主役だった松たか子さん演じるカンナが、色々と
ボタンの掛け違いをしたまま40代で不慮の出来事で
先だってしまった夫・駈(松村北斗さん)が、どうすれば
その未来を回避できたのか、を何度も過去に戻っては
格闘し検証する、と言う不思議な物語でした。
タイムリープものは過去を改変できない、と言うルールが
あるものだと思ってどうなるのかと見ていましたが、
ラスト前に、自分が死ぬ日を予め知ってしまった駈が、
妻の思惑とは違う決心をして「その日」に向かうと
言う、どこかオー・ヘンリー「賢者の贈り物」的
爽やかなラストでした。

早くから活躍されているので若い頃の松さんも知って
いるのですが、「昔」シーンのカンナが「HERO」
あたりの松さんそのもので全然違和感がなかったのが
凄かった一方、遺影の駈さんの「残念な中年ぶり」も
何だかリアルでした(笑)

人間、誰しも「あの時こうしていたら」と言う、
「選ばなかった未来」を思う時がありますが、これは
まさにそれを映像化
多分この映画は見る人見る人で響くセリフ、共感
できるシチュエーションはそれぞれ。
狙いはあるとしても、どこが印象に残るかは、観客に
委ねられた気がします。
唯一、カンナが携わっていた2.5次元舞台の美術の仕事が、
ラストまでに何かの伏線になるのかと、実は結構必死に
ディティールを見ていたのですが、特に何もなし。
ただひょっとすると今後お二人どちらかの作品に美術
スタッフ役で松さんが出てきたりする、「シェアード
ユニバース」な映画やドラマが今後登場するかも、と
ちょっと期待してます

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2025.02.17

蔦重版「吉原細見~籬の花」はまさに「weeklyぴあ」そのものの発想

お仕事大河、な「べらぼう」
最新回は、老舗出版社と完全に競合する「タウンガイド」
誌を、地元のベンチャー出版社が、地元ならではの
最新情報と緻密な情報量、しかも低価格、を武器に
殴り込みをかける、と言う内容

低価格のためにページ数は増やせないため、知り合いの
旗本?新之助に原稿を書かせるのが、どんどん一頁の
文字数が小さく、更に網羅すべし、でこれまで掲載
してなかった河岸見世まで載せる発想は、まさに
80年代、大劇場から自主公演まで、メジャーロード
ショーから独立系単館や三本立て名画座(死語)まで、
もれなく毎号、極小活字で毎週掲載してくれていた
「Weeklyびあ」そのもの
インターネットのなかった当時、あの雑誌がなければ
都内や近郊のすべての劇場映画館の情報は、絶対
得られませんでした。
地図だけで言えば「Angle」 (アングル)が、「ぴあ」が
中綴じで「ぴあマップ」を始めるまでは、「細見」
さながら手書きでの最新エリアマップを手掛けていて
あれを頼りに原宿や代官山を歩いたものです

江戸のドラマを見ながら、懐かしさを覚えた、不思議な
回でした

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2025.02.16

「猿若祭二月大歌舞伎」を観る

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猿若祭といいながら、昼は「きらら」以外、夜も
「阿古屋」には中村屋メンバー不在と言う、不思議な
演目配役
2月なので、あちこちに地口行灯が提げられていました

昼の部
「醍醐の花見」
梅玉、魁春、雀右衛門、又五郎、と言うベテランと
彦三郎、亀蔵兄弟、そして左近くん。
そして福助さんを久しぶりに拝見しました

夜の部は勿論「阿古屋」一択
玉三郎さん阿古屋については、今更言うまでもあり
ませんが、今回のポイントは、規矩正しさが際立つ
菊之助さん重忠、そして小柄な体躯が人形振りにぴったりな
上に必要以外微動だにしない体幹が凄い種之助さんの
岩永。
この二人が悪目立ちしない事が、実は芝居の緊張感を
保つために非常に大切だと言う事を今回実感しました。

ロビーには早くも菊之助&丑之助のW襲名のポスターが。
今年の歌舞伎座は、「義経」「忠臣蔵」「菅原」の
三大作品に加え、音羽屋襲名で二ヶ月、とかなり
手堅いラインナップです。

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2025.02.15

劇場アニメ「ベルサイユのばら」

Berubara

世代としてやはり見逃せず、早々に見てきましたが、
色々予想外で、なんとも不思議な出来上がりでした。

原作も半世紀、既に舞台も定着している令和の今、
わざわざアニメ化すると言うなら、今の3Dとかのテクノ
ロジーを駆使すれば、立体的なキャラクターでも原作の
イメージを壊さず、ファンを納得させられるのでは、と
オスカルやアントワネットがイメージが違うとか、
今更ならないのではと思っていたのですが、今回のは
完全に原作作画最優先。
池田先生の画やセリフ、心情表現を最大限に活用し、
繋げて再現したものになっていました。
キャラクターが昔ながらの2次元で押し通されていて、
平面的になるリスクを敢えてとったのは、原作ファンを
失望させないためかもですが、間違えると紙芝居になる
リスクもあり、なかなか微妙でした

また、2時間で9巻を纏めるのは最初から無理とは
判ってましたが、マリーのストーリーは輿入れ、
フェルゼンとの出会いや不倫(笑)シーンあるものの、
「私の気持ちはわからないわ」とオスカルに切れて
みせたあたりでぷっつり登場が途切れ、次に登場すると、
どうやって和解したかは一切語られないまま(原作で
知ってる前提)国王との子供を慈しむママになっていて
びっくり
途中のデュ・バリー夫人との不和と強制お声がけ、
首輪事件、あたりも全面カットで説明すらなく、
そして、後半は完全に脇役に
オスカルの死とバスチーユ陥落がクライマックスに
なっていて、フェルゼンによる逃亡劇の失敗から
バリ幽閉、断頭台までが全部、銅版画風イラストの
エンドクレジットと共に、ナレだけで語られると言う
荒っぽさには更にびっくりしました
これはもう劇場アニメ「ベルサイユのばら~オスカル編」と
ちゃんと言った方が良い(笑)

オスカルにしても、ロザリーが一瞬登場するものの
エピソードが全カットでしたしね
一方、後半国王軍から離脱したオスカルたちがバス
チーユに向かう一連は、原作ではオスカルのキラキラと
感情爆発でページ一面埋め尽くされていて、時間や
位置関係がよく判らないのが、アランくんの大活躍も
あって、今回初めて大変よく理解しました(笑)

それにしても、原作の数々の名セリフ、目で追って
読んではいましたけれど、改めて耳で聞くと、当時の
掲載が「週マ」だった事を考えると、飛び抜けて
「おませ」(死語か)な作品だったんですね 

更に更にびっくりしたのは、まるでミュージカルか
宝塚歌劇、アニソンコンサートのように、ところ
どころに、花やら花やらのクルクルを背景に、ストーリーは
一切展開せず、4キャストが歌いあげる、レビューの
ようなシーンが挟まれていた事。
加糖和樹さんのようなミュージカル俳優さん(アラン役)は
ともかく、最近の声優さんは歌が上手い方が多いのか、
歌が上手いのが声優さんの条件なのか、と思います。

ともあれ、全体レトロさにあふれて、何とも不思議な
映画でした

初日に行ったので、特典は頂きましたが、グッズの
一部は既に売り切れていて、そこはさすがオバケ
コンテンツでした。
私もうっかり?サンリオが二頭身キャラクターにした
4人のクリアファイル買ってしまいました〔嗚呼)

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2025.02.11

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」、博多座の2ライ大楽がライブ&見逃し配信決定!

3月歌舞伎座のWキャストのために諦めた、「朧~」
博多座追っかけですが、我慢して良かった!
生には及ばないながら、両ライの千秋楽のライブ配信&
見逃し配信が決定、との事。

既に「シネマ歌舞伎」ラインナップに入っているものの、
とてもそれまで待つまい、と思っていた、時蔵くんツナ
さまロスが、これで一時癒されそうです。

しかし、まずは日程までに最近どんどん不安定さを
増している我が家のWi-Fi環境を何とかしなければ!(汗)

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第32回読売演劇大賞

最優秀各賞が先日発表されていました

最優秀男優賞はやはり、の木場さん、最優秀女優賞を
岩崎加根子さん、と俳優賞は、そこらのポッと出では
決して敵わない、大ベテラン納得の授賞。
最優秀演出家賞は「奇ッ怪」の前川知大さん。
最優秀スタッフ賞は擬斗の渥美博さん。
スタッフ賞に美術、照明、衣装でなく、アクションが
ノミネートされる事そのものが少ない中、最優秀に
選出。
今回は、新国立の研修生公演「ロミジュリ」が対象に
なっていました。
確かに間近に危険と思うくらいの迫力でしたが、
とにかく経歴がお長い。
蜷川組でも長らくお名前を拝見してましたし、宝塚
から歌舞伎、ミュージカルまで、関わっておられる
ジャンル、数がとんでもなく、今回のみならず、
長年の貢献に対する賞だと感じました

因みに最優秀作品賞は、新宿梁山泊「おちょこの傘
持つメリー・ポピンズ」
新人賞に当たる杉村春子賞を新原泰佑さん
芸術栄誉賞に株式会社俳優座劇場、選考委員特別賞に
ブロードウェイミュージカル「カム フロム アウェイ」

しかし先日も書きましたが、最近のチケット代金、
販売システムを考えると、読売さんも今後は表彰して
終わり、でなく、優秀作品については、勿論権利関係も
色々あるでしょうから、全編とは言わないのでダイ
ジェストだけでも、期間限定配信とか、作品や役者
さんの素晴らしさをより広く知らしめる仕組みとか
して頂けないかな、と。

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