AB両プロ昼夜を見てきました。
ほぼ毎月歌舞伎座に行っている個人的感覚ですが、
多分、新しい歌舞伎座になってから、柿落としシリーズ
以来、久しぶりにチケットの売れ行きが凄い。
オールスターだし、何より演目が知名度抜群な「忠臣蔵」。
今年歌舞伎座で通し予定の三大作品の中でもより
初心者むき、インバウンド客向けでもあり、だから
かと思いますが、いつもは残る二階席まで既に完売の
日まであります、
とりわけ売れ行きが早いのがAプロ昼とBプロ夜。
共通点は
「仁左衛門さんが出てる回」!
人気とは正直なものです
また開場時間に入場列が松崎煎餅あたりまで延びて
いるのは滅多に見ません。
2階ロビーには、由来之助と判官の装束の展示がありました
昼の部開幕15分前からある口上人形の口上も、通しの
時しかやらないので早めの着席がお勧めですが、
結構ギリギリ来場の方もいて、ちょっと勿体ない
(昔と違って告知しないと知らない人も多いはず)
因みにこの口上、夜の部の配役も言うので、昼しか
見ない人には「あれ?」ってなる(笑)
しかしそれでも個人的には「忠臣蔵」で九段目を
やらないのがどうしても納得いかない(憤)
勿論、討ち入り→花水橋をやらないと、ではあり、
七段目終わって8時20分過ぎでは(かる&平右衛門
兄妹じゃらじゃらで、初日は更に予定より10分押した)、
諦めざるを得ないとは言え、九段目は本当にドラマ
なのに!
叶うなら余り間隔を開けないどこかで、九段目だけ
(欲を言えば同じストーリーラインでの二段目、も)、
今月歌舞伎座に出演なかったメンバーでやって欲しい
ところ
好みは幸四郎さん大星、又五郎さん本蔵、玉三郎さん
お石、新悟さん戸無瀬、米吉さん小浪、千之助さん
力弥、二段目やるなら、歌昇くん若狭之助!かな~
で、当月です
段の話をすれば、三段目の「進物」は、文楽と門が
向いている方向が違うとか、最近見るので文楽との
違いが今回よくわかりました。
また、四段目は判官切腹が眼目なのは勿論なのですが、
そのあと、城外の場までの、由良之助と家臣たちの
やりとりが印象的。
由良之助がバラバラな藩士の人心掌握のための意外な
策士ぶりを炸裂させるのは、通しでないとやらない
場面だけに新鮮でしたし、七段目に通じる四段目の
本当の意味を理解した気がしました
それにしても歌舞伎は三段目の「文遣い」をやらない
ので、なんで四段目のあの師直と判官の切迫した場面に、
顔世から「あんたには興味なし」と言う、師直の
神経逆なで確定、の手紙が届くのかがやっぱり唐突
(勘平に会いたいばかりに、「急がないけど」と釘を
さされていた顔世の手紙を、おかるがバイク便レベルで
届けたため、最悪のタイミングで師直に届いたの
だけど、師直は勿論、判官も事情を知らないので更に
拗れる
文楽だと観客は既に事情を見せられているので、
「あ~あ、お軽ちゃん!」ってなる)
夜の部は、九段目がないため(しつこいぞ(笑)、七段目が
終わると、あとはチャンバラだけなのは、蛇足感が
否めないのがなんか惜しい。
役者さんは日程前半で観た感じでは、判官役者は二人
ともまだ硬い。
多分、こちらが見ている以上にかなり難しい役柄だとは
思いますが、こればかりは経験しかないのかも。
しかし勘九郎さんが今更ながらお父さんそっくり。
判官コンビは逆プロではどちらも勘平ですが、こちらも
名だたる名優たちが繰り返し演じてきた場面だけに、
最早、正解やゴールがあるのかすら不明。
仁左衛門さんの大星は、四段目も七段目も、申し分
なくキュン(笑)ですが、愛之助さんの七段目の大星も
落ち着いていて、やる事てんこ盛りなのに見てて安心
松緑さんが四段目だけ由良之助をなさってて、いか
にも東京に支社のある地方の中堅企業の実直な部長風。
ただし、この感じのまま祇園で遊んだところで、
余りに浮いて、どうやっても「術」としか見えない。
ちなみに仁左衛門さんの大星さんは、東京支社長
経験もあり、若社長秘書室長の経験もある信頼も厚い
スマートな総務経理担当部長な感じで、接待も社交
辞令もお得意ですが、実は笑顔の目が笑ってない
シビアさが滲む、って感じでしょうか(笑)
巳之助くん平右衛門と時蔵さんおかる兄妹の七段目が
期待以上。
一方、松也くん平右がテンション高めに(平常運転)
つられたのか、七之助くんおかるがずっと金切声で、
見ていて疲れました。
七之助くん、化粧の感じが以前と少し変わって、
それは随分綺麗だっただけに惜しい。
六段目のお才が、萬壽さんが判人にもビシッと度量
Max太っ腹なマダムな一方、魁春さんのは感情を余り
表に出さないビジネスパーソンで、「べらぼう」の
各楼のおかみたちの違いもちょっと思い出します
師直のお二人は、共にごく若い頃から拝見している
だけに、「遂に師直やるようになったのね~」と言う
感慨が先行(笑)
47人を集団リベンジに走らせるに足る、パワハラ、
セクハラ、モラハラてんこ盛りの憎っくき爺さん、
でないと、見ている方も盛り上がらない?な役柄ながら、
芝翫さんのは地元ではいい人なのかも、とか(モデルの
吉良さんは本当にそうらしい)、松緑さんのが実は
小心者かも、とか、色々思い巡らすところです。
梅玉さん、歌六さん、錦之助さん、彌十郎さんなどが
脇に回って全体を底上げ、判人と伴内を橘太郎さんと
松之助さんの役がわりなど、端から端まで楽しめて
大満足
そうそう、諸士の中では歌之助くんの声がダントツに
良かったです
今月は再見予定なので、詳細はまた改めて。