国立文楽劇場「義経千本桜」通し上演
上演
文楽劇場前の桜も丁度満開、劇場内も桜の装飾にあふれ
華やか、公演も勿論素晴らしかったです
まず一部は、歌舞伎などでは殆どかからない、「仙洞
御所の段」そして「堀川御所の段」
この2つを観て、漸く頻繁にかかる「河連法眼館」の
静ちゃんが初音の鼓を持っている理由とか、佐藤
忠信(本物)が静に同行して「いない」理由とか、
維盛、知盛が後に「実は」と登場する伏線がはっきり
判ります
また、偶然ですが直前に、今の「仙洞御所」を見学
していたので、勝手におおっと言う感じでした
(詳細は別項にて)
「堀川御所」
物語後半になると「御大将」感が増す義経ですが、
このあたりでの空気の読めなさが自分で自分の首を
緩やかに締めてるじれったさが、こっちには伝わって
きます
(「子午線の祀り」に似た感じ)
卿の君は気の毒だし、何より「弁慶君!!」(笑)
「伏見稲荷の段」
歌舞伎で言うところの「鳥居前」
ここで静ちゃん鼓の紐で縛られてセットで置き去り
ですが、しかし、みんな義経のために犠牲払いすぎ(笑)
しかしここまで見てから、続けて見る「大物浦」
「すし屋」「河連法眼館」は、単独で観るより明らかに
解像度が高かったです。
勿論、私が通し好きだからですが、「彦山~」にせよ
「妹背山~」にせよ、やはり私には「発端」は理解が
深まる納得ポイントでした。
「渡海屋」「大物浦」
何より玉男さんの遣われる、知盛のスケール。
人形ならラストの入水もいくらでもダイナミックに
できるところ、足が最後の最後にじわじわ引きずられて
落ちていくのが、スポーンと背面落ちする歌舞伎が
覚悟と達観だとすれば、ミリ単位の生への執着を
見るようでした
和生さんの典侍局の美しさも格別で、しかも歌舞伎と
違って官女は一人も出ないのに、全然気にならない
典侍局の迫力と存在感でした
「すし屋」は文楽で観るのは多分かなり久しぶりか
或いは初めて。
清十郎さんの遣う、お里のお年頃女子の多感さ加減が
いとおしいったらない訳ですが(笑)、人形さんたちの
大活躍?は勿論の事、今回一番ひかれたのは語り。
歌舞伎から文楽に入ったためか、今まで文楽を見る
時もどうしても視覚(人形)メインで見てきた気が
するのですが、今回は自然と語りに注意が向き、
そして、本当に一人で語り分けているんですよね?と
何度も確認するほどに、素晴らしさが印象に残り、
ほんの少し、文楽の楽しみ方の幅が広がった気が
しました。
「河連法眼館」
「本物の」忠信と「狐」忠信はそっくり、静ちゃん
見抜けず、と言う話ですから、歌舞伎では同じ役者が
2役、それも早替わりで出てアクロバティックな
動きをするのが醍醐味であり見せ場ですが、文楽は
人形ですから、アクロバティックは当たり前、
また
人形は頭〔かしら)を揃えれば自然と同じになるので
(寧ろ、いやそうなのに、衣装と動きで別人キャラに
見えるのが不思議)普通に二役を別の方が遣われていて、
そうか!と寧ろ新鮮でした
そして、狐忠信が勘十郎さん、ですから、当然?
早変わりは遣い手さんも早替わり、ラストは予想通り
一緒に宙のり!
勘十郎さん、相変わらず身体を張る!(笑)
「義経千本桜」、秋には歌舞伎座での通し公演。
こちらも楽しみです