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2025.05.29

さいたまシェイクスピアシリーズ(2周目)「マクベス」を観る

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前回「ハムレット」は体力的、プラス気力、劇場の
塩対応など、様々な理由で集中力が持続せず、やむ
無く一幕で断念しました。
与野本町まで行って、またあの思いをするのは勘弁
だし、しかも今回、シェイクスピアの中では短い
「マクベス」を鋼太郎さんが3時間超えでやると知り、
過剰系演出発動(笑)だとまた一幕までになるかも、と
ある程度用心?覚悟?して行きましたが、良くも悪くも
色々気になる事があり、最後まで見届けられました。

ガレリアでは、過去の国内公演の様々なシェイクスピア
公演のポスターが掲出されていて、懐かしい数々を
拝見しました。

さて「マクベス」です。
何と言っても照明!
今や新感線でないと滅多に派手なのを拝見できない、
巨匠・原田保さんの照明を、さいたま芸劇大ホールで
余すことなく楽しめたのがとにかく一番でした。
また、衣装を中途半端にスーツにしたりしていない
とか 心配?したより正統派の「マクベス」でまず
ひと安心(笑)

そして個人的に、「マクベス」では、「魔女」と
「ダンシネンの森」の見せ方が、演出家の腕の見せ
どころ、と思っているのですが、今回、前者は演出家の
特権発動(笑)、後者はやや拍子抜けな印象を持ち
ました。
まさか滑舌と長台詞オバケの鋼太郎さんにおいて、
魔女のセリフが、勢いと自己完結に負けて、雑に、
或いは後方とは言え一階席で聞き取れない日がくるとは
思いもしませんでした。
演出兼出演は、自劇団でもされているし、ましてや
手の内の筈の「マクベス」
何かちょっと残念でした

「ダンシネンの森」は、「近づいてきた!」と言う
セリフと共に、ずっと舞台左右に何枚か斜めに、
岩壁のように見える灰色の濃淡色の吊り壁的な布が、
バサッと一斉にバトンから全落ちして、奥行きの深い
舞台奥から、緑色のモジャモジャした森のような
オブジェが迫りだしてきました。
奥行きが舞台幅の倍はゆうにあろうかと言う、さい芸の
大劇場、せまりくる森の迫力を見せるなら、更に塊が
更に演者の上に覆い被さるとか、「ムサシ」的に
可動台にでも載って、演者にまとわりつくなどしたら
いくらでもこれはかなり怖いぞ、と期待?したの
ですが、緑の塊はそれ以上前にも出てこず、また
吊りものが落ちたために、逆に舞台全体が明るく、
奥まで機材が見通せてしまった分、寧ろスッキリして、
マクベスにのし掛かる不安や敵の不気味さには見え
なくなったのがちょっと残念。

藤原くんマクベスは、いつもの最強声帯駆使して健在の
テンションマックス芝居に、今回は「鋼太郎節」が
ちょっとミックスされましたが、こちらはまだ流石に
馴染まず「借り物」感強めかな(笑)

一方、意外な配役は後半、反マクベス派を率いる
大シーワード役の天宮良さん。
お若い頃から拝見していますが、割に中性的なイメージの
役の多い印象だったので、今回、配役を見ずに見て
いたため、途中まで間宮啓行さんかと思ったくらい、
頼もしく、度量の深い頼もしい武将を造形されてました
(こう言う役の横田さんを久しぶりに見たい!)

お目当ての内田くんはドナルペイン役
ダンカン王の次男で、兄のマルカムと違って、マク
ベス打倒に戻ってきた、と言う記述がないので、
役としてはマクベスの刃から逃れる時のセリフ二つ
しかありませんが、この役、最後に蜷川さんが再演
した時の「NINAGAWAマクベス」の時と同じでした
(持参していた戯曲にドナルペインのセリフに○(丸)が
付いていて、メモに日付が残してありました)

しかし、内田くんにしても、暗殺者役の堀くん、
ダンカン家臣役の鈴木くんと、ネクストシアター
出身メンバーが3人出演されていましたが、佇まいや
声ではっきりと判って相変わらす頼もしい。

さて、シェイクスピア芝居で時々あるのが、
「あれ?こんなシーンあったっけ?」と後から戯曲を
見直す部分が出てくる事。
筋だけ追うならカットされがちな脇キャラだけとか、
シェイクスピアあるあるの、言葉遊びや時代の流行
らしい割と分かりにくい部分、繰り返しとかが当て
はまりますが、今回も4幕1場、マクベスが魔女たちに
よって、ダンカン王の亡霊がゾロゾロと様々なアイテムを
手に行進する幻影をマクベスが見て戦く部分が舞台に
出ました。
普通ならカットか、幻を見せられている、とセリフ
だけでわかりますから見せなさそうですし、暗がりの
小劇場(「倉」とか)ででも上演されたら怪談話みたいに
見えそうですが、顔はみんなトランプのキングの
ような取って付けたようなカイゼル髭で、照明はっきりの
大劇場では却って可愛く見えてました(笑)

さて、最後はその戯曲、セリフのこと。
一幕終わりの、マクベスがレディにぼやくところの
人称問題
河合先生も松岡先生も、原文「We」に従って「二人
とも」(松岡訳)「俺たち」(河合訳)で、レディとマクベス
共謀、一蓮托生感が強いですが、小田島訳をベースに
している今回の鋼太郎さん版では、「おれ」と一人称
でした
一幕5場で気後れするマクベスを焚き付けるのは
レディなので、今回も前半自信満々に造形された
レディを前に「おれ」となれば、明らかにレディに
対して「まだまだ」な感じなのかも知れません

ふと今回、鋼太郎さんたち魔女の、派手派手衣装を
見ながら、レディには魔女の魔法が事前にかかり、
乗り移ってマクベスをダンカン殺人を吹き込んだと
言う隠し設定があったのかも、とも感じました。
新感線版「メタルマクベス」では魔女とレディが
同一シーンに登場しないのを利用して、レディが
魔女の一人を演じる演出もありましたし

ともあれ、とにかく最後まで見られただけで今回は
満足です(笑)

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