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2025.06.27

「昭和から騒ぎ」を観る

Karasagi

世田谷パブリックシアター
早々に運良く1枚だけプレイガイド事前抽選でチケットは
取れたものの、開演時間が仕事終わりからの移動
だとかなり厳しめなため、保険で別日も、と、他の
プレイガイド事前、補助席、立見、勿論一般発売、
全てチャレンジしましたが全滅。
結果的に開演時間に間に合いましたが、相変わらず
三谷さん人気は凄いですね

その三谷さん、ドラマでポアロの翻案、舞台でも
チェーホフ「桜の園」などなさっていますが、今回は
シェイクスピア。
選んだ作品は、日本ではそこまで上演頻度は高くない
ながら、シェイクスピア喜劇の中でもひたすら笑える
「から騒ぎ」
これを昭和の鎌倉に(小津っぽい)移し、軍隊は旅芸人
一座に、貴族一家は学者一家に翻案

「から騒ぎ」はケネス・プラナーによる映画版もあり
ますが(キャストは豪華)個人的には、蜷川さんオール
メール版一択
高橋一生くんのベアトリス、月川くんのヒアロー、
長谷川くんのクローディオに鋼太郎さんのドン・
ペドロ、嵯川さんのレオナート、小出くんのベネ
ディックによる、蜷川さんの「喜劇は苦手」とは思え
ない切れ味の良い演出は、ギリシャ風彫刻に囲まれた
真っ白の舞台セットと共に未だに忘れられません
この戯曲は、「ベネディックとベアトリスそれぞれに、
わざと盗み聞きさせて両思いにさせる」部分さえ
成功すれば、ラストの無理矢理感満載の「ヒアローの
蘇生」「クローディオ大混乱」は目を瞑れると思って
います(笑)が、今回は、ひろこ(ヒアロー・松本穂花)と
定九郎(クローディオ・竜生涼)のシークエンスが意外に
長くて、肝心の紅太郎(ベネディック・大泉洋)とびわこ
(ビアトリス・宮沢りえ)のメイン部分が、そこまで
盛り上がらず。

と言うか、正確にいえば、ひたすら喋りまくる紅太郎、と
言うキャラクターが、殆どいつもの大泉さんのイメージ
まんま過ぎ、喋り倒す紅太郎、が填まり過ぎて全く
意外感がなく、喋りで客席を呆気に取らせ、ドカンと
沸かす、までにならなかった、と言う、填まり役
過ぎて寧ろ、な、珍しい誤算(笑)でした
これが普通「寡黙」「冷静」イメージの阿部さんとか、
井浦さんとかだったら、意外性でもっと盛り上がった
のかも(笑)
 
宮沢さん、竜生くんはそれぞれ器用な役者さんなので
想定内でしたが、松本さんの、意外なコメディエンヌ
ぶりが際立ちました
原作では唯一の悪役、ドン・ジョンにあたる荒木
どん平もそこまで悪意もない設定で、翻案らしく、
物語のエッセンスだけを抽出して巧くアレンジされて
いたと思いました

400年前に作られたものが今でも笑える、と言う、
笑いの普遍性が既に見いだされている原作の偉大さが
もっと知られ、触れようと思う人が増えればなあ、と
思いました。

翻って、最近の浅いトピックだけ繋げて「最先端の
作品でござい」と実力のある役者さんたちに無理矢理
令和のトレンドを押し付けて「チャレンジ」と身内
受けだけする自己満足な底の浅い芝居を「新作」
とか言ってお金を取って舞台にかけるのは、本当に
時間とお金を返して、と、どさくさに紛れてこの際
大声で(新宿方面に向かって)言っておきます(怒)

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2025.06.19

「八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露六月大歌舞伎」を観る

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襲名披露の二ヶ月目は、「車引」「寺子屋」、「連獅子」
「芝浜革財布」など。

ロビーには、祝幕の箱のほか、近々オークションに
かかる、と言う衣装や小道具が展示されていました
今月の祝幕は、先月の雲上の富士山全景、バージョンと
リンクしつつも、富士山全体が白菊で包まれるデザイン
背景は提供のティファニーのカラーでもある、独特の
水色
いつもの織物の緞帳とは作り方が違うのか、あつものの
菊の花びらの立体感が、見事でした

昼の部は「車引」
先月に続き、新・菊之助くんが大チャレンジの梅王丸
桜丸は吉太朗くん、松王は鷹之資くん、杉王が種太郎
くんで、時平が又五郎さん
菊之助くん、ちっちゃいながら、姿形の素晴らしく
よい梅王でした
(声は見た日は若干潰れ気味でした、がんばれ)
どうやら菊之助くん、今は、パパ系の丸顔と言うより
播磨屋のお祖父さま系の顔の輪郭が強めに出ていて、
荒事のカオをすると、吉右衛門さんのフィギュアの
よう(笑)
種太郎くんの可愛さ、吉太朗さんの丁寧な動きも
でしたが、やはりここは、芸歴に一日の長の、鷹之資
くんの松王が際立ちました
元々お父様譲りで踊りがずば抜けている鷹之資くん
ですが、なかなか主役級の役柄が大劇場ではないだけに、
こうした機会はやはり貴重

一転「寺子屋」は、パパ世代の共演(ちょっと前までは
この世代が「若手」でした)
八代目が播磨屋さんから受け継いだ時代もののこう
した立役は、今後の音羽屋さん舞台の演目の幅が
また一段拡がったところも強みポイント。
八代目の松王には、七代目に続いて、萬屋、こちらも
去年お父様の名前を襲って大躍進中の時蔵さんが
千代役のコンビ。
源蔵に愛之助さん、そしてここに雀右衛門さんが戸浪で
入って全体が纏まり、園生の前に魁春さんが大ご馳走
菅秀才と小太郎を萬屋さんか播磨屋さんのお孫さん
世代でなさるかと思いましたが、今回は子役のお子
さんたちが交代で。
涎繰りは精四郎さん
精四郎さんは最近格段に活躍の場が拡がっていますね。
今回は「寺入り」からでしたが、涎繰りが手習いを
しながら、千代ママの持参の手土産スイーツ詰め
合わせをチラチラ盗み見していたのが細かい(笑)
八代目の松王はthat'sオーソドックス。
よく、首実検の型がどうこう、と言うのに拘られる
評家の方もおいでになりますが、個人的には大仰な
儀式を見るより、義太夫の語りと役者さんの所作の
息が合うかの方が芝居としては楽しめる気はします。
また、この芝居は、何より、松王の登場までを支える
源蔵。
前段で丞相から「筆法」を引き継ぐ文の人であり、
歌舞伎では大抵出ませんが、決死の菅秀才救出作戦を
実行する武の人と言う「文武両道のできる奴」
でなければ、松王もこのミッションを源蔵に賭ける
筈がない。
幕開き時点で、源蔵は藤原(時平)方から既に菅秀才の
身柄引き渡しを命じられていて、3階席では見られ
ませんが、源蔵はこの場の花道の出が出来の全て、
と言われているところ。
ただ派手にやると、浮く役なので、塩梅が難しいの
ですが、仁左衛門さんの源蔵もよかったですが、
愛之助さんも「義の人」だし、バタバタせず安定
していてよかったです。

「お祭り」
実質的に、ほぼご祝儀的な意味合い以外ないですが、
仁左衛門さん今月これだけなので(笑)
玉三郎さんの芸者とのコンビを見すぎているので、
寧ろ、孝太郎さんとのコンビが新鮮でした。

「口上」
背景の襖は「よき・おと・きく」の図柄、下手に
清水寺本堂全景、上手は寺域にある有名な「音羽の滝」の
絵が配されていました
(余り知られてませんが、清水寺、「音羽山清水寺」
って言うんですよね)

音羽屋三代の他は、松緑さん、仁左衛門さん、梅玉
さん、そして團十郎さんの挨拶でした
先月のを拝見してないので比較しようがありませんが、
「口上」と言えば(笑)、の左團次さんも鬼籍に入られ、
またコロナを経たからか、口上もシンプルになった
印象です

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2025.06.16

映画「国宝」(おまけ)

見終わってすぐ、最初の感想を書きましたが、
改めて
いくつか。

(1)まずこの映画、制作・配給が、現実、歌舞伎興業を
仕切っている松竹ではなくて東宝
しかも撮影は海外の方。
松竹なら、演技指導から劇場(とりわけ歌舞伎座)使用
とか、色々状況はかなり違っていたかもですし、
何より、公開タイミングが、音羽屋のダブル襲名と
合致
映画のポスターになっている「道成寺」も、6月
演目の「連獅子」も、上演演目と映画の内容が被って
いるし、タイアップや公開のスタイルも違いはあった
かも、とは思いますが、内容が歌舞伎役者の切磋琢磨、と
綺麗に纏める、にはなかなか壮絶な、とりわけ芸は
血筋か才能か、と言うのがキモな話だけに、その
エッジの立ち具合に、松竹さんが公認するようになる
のは、とか、或いは知る立場だけに、様々な逆の制約や
(お行儀のよい忖度)がかかったかも
結果的に「外側」の東宝さん仕切りでこそ、パラレル
ワールドのファンタジー目線で、成立させられたのかも
知れません
(戦後暫くは、東宝も歌舞伎興業に関わっていた時期も
あるのですが、それはもう昔のはなし)

しかし映画が話題になれば、当然、普段歌舞伎を見ない、
映画や出演俳優ファンの方も、歌舞伎座に足を(一度
でも)運んでみようか、と、ちらとでも思ってもらえる
きっかけにもなるかも、なのを、当たり前ながら現状は
静観の構え、なのは、ちょっと勿体ないような気は
します
(何もせずに増えれば、逆によし、か?)
またいま歌舞伎役者さんたちにもこの映画を映画館で
「見た」「見る」とSNSで発信される方てもいて、
普通、歌舞伎役者さんが出演されるなら、身内的に
「見て」でしょうから、何だか不思議な感じです

(2)映画劇中で使われる演目。
さすがに原作ラストの「阿古屋」とかは、そもそも
今できる歌舞伎役者すら限られているし、原作通り
にはならないのは無理ない一方、上方歌舞伎の超定番
演目の「曽根崎心中」を原作より更に丁寧に扱って
いるのは、寧ろ納得。
何よりも、中盤、師匠・半二郎の急遽代役での、
吉沢くん演じる喜久雄が体当たりで演じるのお初を
下から見上げた角度の美しさは、言われなければ
(劇中歌舞伎場面は殆どそうですが、とりわけ)普通に
歌舞伎の役者さんによる映像かと勘違いするほど自然で
驚きました。
また、クライマックスの、横浜くん演じる俊介(半弥)が
演じる同じくお初が、言わずと知れた名場面、床下に
匿った徳兵衞に、煙管を打ちながら心中の覚悟を問い、
徳兵衞が目の前に出されたお初の足に顎を載せて応える
シーンも、芝居としてそこを見せて当たり前なのですが、
俊介の病の足を、徳兵衞役の喜久雄が見る、と言う
場面でもあり、「足」の説得力は映像ならでは、
でした。

ただ、師匠の半二郎は上歌舞伎の名優の設定なので、
年配になってもお初を演じる、演じたい、と言うのは、
実例があるので、無理はないのですが、この映画で
言うと、それを演じているのが渡辺謙さん。
キャラ(ニン、とか言います)的には、映画で唯一、
謙さんが演じる舞台として、また喜久雄少年が
舞台袖
から半二郎と半弥の舞台を見て感動する描かれる
「連獅子」のような、江戸歌舞伎の荒事や、実事の
裁き役が妥当で、「曽根崎」もやるなら、高麗屋さんの
ように徳兵衞なら、な何とかな感じ。
連獅子姿はあれど、女形姿を見(せ)ていないだけに
「その代役」なのか?と言う違和感はありました。
謙さん半二郎、の若い頃の「伝説のお初」的舞台写真
とか映像とかが一瞬でも画面にあれば、もう少し
説得力があったかもなんですが。
またその「連獅子」を含む松羽目もの(能取りもの)も、
明治になってから、主に東京の歌舞伎で取り入れられた
ジャンル。
上方歌舞伎の方で、連獅子とお初を両方レパートリーと
される、は、私にはあまりイメージがつかないので、
そこはちょっとモヤモヤ。

勿論、いまの音羽屋さんのように立役も女形も「兼ねる」
役者の家系なら、梅幸さんのように義経も判官も藤娘も、
七代目のように工藤も弁天も新三も、当代のように
熊谷も政岡もナウシカも(笑)やるのは違和感ないの
ですが。

(3)特殊メイク
吉沢くんが大河「青天を衝け」で渋沢栄一を演じた
時も思いましたが、顔つきかのか、NHKの誇る特殊
メイクチームでも難易度が高いのか、顔が老けにくい
なあ、と思っていましたが、人間国宝に認定されての
娘さんとの再会シーンとか、さすがに瀧内さんと親子、は
苦しかった。
また、ベテランになってからの舞台化粧も、寄ると
お肌皺なしのツヤツヤ、で、そこは映画とは言え、
もう少し「老け」のリアルがあっても
(泯さん演じる万菊とか、俊介の迫真の、化粧落ちまくり
お初、に比べても落差大きすぎ)

(4)さらにおまけ
謙さん半二郎や喜久雄(後に三代目半二郎を襲名する
役なのでちょっとややこしい)、俊介や母親幸子たち、
歌舞伎役者たちの日常が随所にさしはさまれますが、
私のセンサーが働いてしまったのが「なんしか」
言う言葉(笑)

関東圏の人には殆ど馴染みのないこの言葉、私も
社会人になって初めて聞きました
意味合いはシチュエーションで様々ですが、「とにかく」
とか「とりあえず」みたいな、議論を省いてちょっと
結論だけを急ぐ、みたいな感じ
因みにほかに「なおす」(修理する、ではない)「いらう」
「えらい」(偉い、ではない)「ほかす」「必死のパッチ」も
最初はわからず
「すみません、それはどんな意味ですか?」
と真面目に聞いて、寧ろ驚かれたものです。
イントネーションだけそれ風、でなく、こう言う
コトバも「それらしさ」には大切かも

2回目、そろそろ計画します

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2025.06.15

斎藤歩さん死去

斎藤さんと言えば、やはり、舞台「アザーデザート
シティ」で、急遽、中嶋しゅうさんの代役を稽古3日で
果たされた事を思い出します

しかし、その後、闘病されながらお仕事をされていた
事は、NHKでオンエアされたドキュメンタリーを見る
まで全く知らず
拝見してびっくりしていたのですが、先日新聞の
訃報欄にお名前が出ました
享年60歳
役者、演出家さんとしてはまだまだこれからの年齢
でしたし、何より、「アザー~」で代役に立った、
しゅうさんの享年よりお若いとは。

ご冥福をお祈りいたします

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2025.06.11

国立劇場主催「五月文楽公演」

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5月の東京公演はシアター1010での3部制
こちらでの文楽公演も既に何回目かですが、相変わらず
ルミネの上だったかミルディス(名前すら、いま調べる
レベル)の上だったか、下層階の雰囲気が似すぎて
見分けがつかず
今回うっかり間違えて無意識に名前に馴染みのある
ルミネの最上階まで疑うことなく行って、詰みました
正解はミルディスの上(笑)
ただし秋の文楽公演、会場はKAATなので、今度は
うっかり北千住にいかないよう要注意(笑)

2部は「義経~」の「伏見稲荷」と「渡海屋/大物浦」
4月の文楽劇場公演とだいたい同じ役割
3部は「文楽入門」として、19時から簡単な解説
ナレーションと1時間弱での「平家女護島~俊寛」
勘十郎さんの俊寛、意外にも初役だったそうですが、
私も文楽での「俊寛」多分初めて
遠見のちっちゃい船影は、文楽だとより違和感がない
工夫なのと、人形が自然に飲み込まれる小ささがより
出る気がしました

さて、今回個人的に一番楽しみにしていたのが、
一部の「蘆屋道満大内鑑」
歌舞伎では所謂「葛の葉子別れ」が有名で、ほとんど
ここしか上演されないのですが、今回は、「本物」の
葛の葉、姉の榊の前も登場、「鶴の恩返し」ならぬ
「白狐の恩返し」話から、葛の葉の正体が判るところ
まで。

見てびっくりしたのは、「葛の葉子別れ」の部分、
歌舞伎と文楽が全然違っていた事
歌舞伎では、(狐)葛の葉が保名にあてた「恋しくば
たずねきてみよ~」の歌を、童子(後の安倍晴明)を
片手に抱えながら左右の手、最後は口に加えて、
しかも裏側から障子に書く、と言う、アクロバティックな
見せ場が最大の売り、寧ろここしかやらない、くらい
ですが、文楽では(狐)葛の葉の歌は、保名が気がついた
時には、すでに奥の部屋の障子(遠目には板戸に見えた)に
書かれた書き置きで、アクロバティックなパフォー
マンスは一切なし
役者の芸を見せる歌舞伎と、ストーリー重視の文楽の
違いが明確に出た事例と感じます
寧ろ「鶴の恩返し」よろしく家事に勤しむ(狐)葛の葉と、
両親と一緒にやっと保名の居場所が判ったとやって
くる(人)葛の葉のバッティングに翻弄される、保名たちの
あたふたや人間ドラマと、しんみりの後の、何だか
楽しい所作事が印象に残りました

因みに外題に出てくる蘆屋道満、は「陰陽師」でも
有名な、安倍一族とトップ陰陽師の地位を争う方。
夢枕獏さんの原作と映画、岡野羚子さんの漫画化の
「陰陽師」シリーズだけで知識が蓄えてきたため、
何故ライバル(と言うか敵)役の名前の方が外題に
なっているのかわからなかったのですが(笑)、イヤ
ホンガイドを聞いていたら、道満は陰陽師の手本と
なる者して、最後に大内(朝廷)に認められる、と言う
ストーリーらしく、しかも保名とそんなに敵対して
ないらしい
びっくり。

上演されない部分も含めての粗筋が、ネットにあった
ので読んでみましたが、面白いのに何か技術的或いは
内容的に、現代やるにはハードルがあるのか、演者
さん心をくすぐるポイントがないのか判りません
でしたが、一度最後まで見てみたい気もします

歌舞伎も勿論好きですが、文楽にはそれ自体にも、
またこうして歌舞伎と比較する事で、共に深まる
面白味が今月もまたあり、まだ暫く両方見ていたい
ものです。

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2025.06.07

映画「国宝」がすごすぎる

Kokuho

映画自体としても3時間弱1秒も緩むことのない
構成は、エンディングの井口理さんの歌まで一貫
して素晴らしかったのは勿論ですが、歌舞伎を人よりは
良く見ているとは思う、歌舞伎ファンの立場からしても、
吉沢くんと横浜くんの歌舞伎舞台姿が本当に魅力的で
素晴らしかったのがまず圧倒的でした。
顔だけくらいアップで寄っても全く隙なく、いかにも
歌舞伎役者さんらしいし、何より「藤娘」「鷺娘」
果ては難局「道成寺」に「曽根崎心中」まで、吹き
替えなくなさっていて、途中から映画なんだかドキュ
メンタリーなんだか、そもそも原作を読んでラスト
までわかっているのに画面に没入し、泣きまくり、
終わってから涙と疲労感で大変でした(汗)

また、映画ならではで、舞台奥から客席側に向けた
アングルで、いつもは見られない早替えや、「道成寺」
クライマックスの鐘に乗る段取りを見られたり、
(先月、歌舞伎座の音羽屋襲名で、まさに「道成寺」が
かかりましたので、なおさら)幕が開く前の舞台とか、
袖からなど、いつも見られない角度からの舞台が
見られたのも興味深かったです。
また、南座や国立(楽屋口)など、見知った劇場風景も
あり、歌舞伎好きにはおおっと思いながら見ました。

役者さんも、主演のお二人以外も印象深く、何より
田中泯さん!
さすがダンサー、なんですが、冒頭の「鷺娘」の踊る
姿とか、先代の雀右衛門さんのようでしたし、老女形
らしい佇まいも見事でした。
また寺島しのぶさんが、主人公二人の師匠の奥様で
出演されていたのが、やはり歌舞伎の世界の空気感が
あって格別でした。

映画館は朝イチ上映にも関わらず9割がたの入り。
封切りからすぐという事で、関心の高い方が多かった
からと思いますが、途中、私語や物音、スマホの
ライト点灯や着信音がする事もなく、集中して見られた
のも良かったです。

原作に比べて女性たちの描写がかなり省かれたのは
惜しまれますが、何しろ長い、と言う時間的な制約が
ありますが、できればもう一度見たいです
但し見た後の疲労感がかなり来るので、体調は整えて
見る必要がありそうですが。

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2025.06.06

ミュージカル「二都物語」を観る

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ミュージカル、それも成河くんが出ないミュージカルを
観るのは随分久しぶり(笑)
しかも東宝主催なのに劇場は明治座で、日比谷では
絶対見ない、浜町ならではの和風幟に俳優さんの
お名前が入って、普通に劇場前ではためいていたり、
神田祭の提灯がエントランス軒先に吊るされてて
違和感ないのがまたまた摩訶不思議(笑)

観ることにしたのは何よりキャストとスタッフの顔ぶれ
ルーシー役の潤花さんは、宝塚退団後初舞台だそうで、
存じ上げないのも無理ない以外は、プリンシパルの
役者さんを私ですら全員存じ上げている、と言う安心感
井上さん&浦井くん、と言うミュージカル界の両
プリンスは勿論、橋本さとしさんに、岡さん、W福井に
未来さん
更には文学座の大ベテランで、蜷川さん芝居にも何度も
出演された原さんに、先日の俳優座劇場最終公演にも
出演されていた、塩田朋子さん(ミシェル・ヨーから
エマ・トンプソン、ケイト・ブランシェットにグレン・
グローズまで並みいるオスカー女優の映画吹き替えを
されてもいる)、晩年の蜷川さん芝居にも出演され、
また「アナ雪」のクリストフ声優の原慎一郎さんと、
逆によくまあこれだけ実力のある俳優さんが1作品に
揃ったんだろう、くらいの豪華さ。
更に演出が、シェイクスピア芝居を始め、ストレート
プレイ作品で馴染みの深い鵜山仁さん。
作品は、古典の部類、それこそ「新潮文庫の100冊」
的なディケンズの「二都物語」
ただし未読(笑)
チケット取ってから、やはり読むかな~と一瞬は
思いましたが、有名な古典作品ですから、結末は
何となく知ってましたし、フランス革命時代の英仏の
貴族の愛と友情の物語なら、これまでの、「MA」
「モンテ・クリスト伯」「ベルばら」、ついでに
「レミゼ」で蓄積した知識を駆使すれば何とか乗り
きれるだろうと(笑)、いや、古典翻訳ものを読む苦手さに
負けて諦め、予習なしで拝見しました
(やはり)なかなか複雑ではありましたが、歴史的
背景や人間関係を特に前半は敢えて深掘りせずに
スパスパと省略しながら、すごい疾走感で見せ切った
のは、さすが鵜山さんの手腕。
前半は本当に端折り方がすごくて、ヒロインはずん
ずん育ち、会えなかった親にはスムーズに会え、
運命の出会いをして結婚、子どもはすくすく育ち、
敵の悪人は殺される(笑)
あれ、これらも時間かければ随分盛り上がる場面を
作れるのに、と思う場面もサラッと流した理由らしき
ものは、2幕で判明。
とにかく2幕冒頭の未来さん演じるドファルジュ
夫人の告白から、物語が濃厚なフェーズに一気に突入し、
怒濤のラストまでは息もつかせぬ血と涙と愛のドロ
ドロ炸裂展開。
出来すぎ(話、なんで当たり前ですが)だろう、とは
思いながらも、シドニーの決断によるラストは、
これまた随分久しぶりにミュージカルで泣きました。

明治座は、帝劇や日生と違って、客席が歌舞伎座や
演舞場に近い、シューボックス構造で、2階3階でも、
そこまで舞台から距離がないので、どこからも舞台が
近いのは魅力でしたし、多分ミュージカル公演を想定
していないので、オーケストラピットがなく、一階席
前方席を潰して囲った仮設オケピでしたが、3階席
からは特に聞こえに不自由はなかったです
ただ、エスカレーターが2階までしかなく、3階席には
階段のみ、とか、昔の歌舞伎座のようでしたし、
また2階ロビーには公演とは無関係の土産物や衣料品
店などの売店、ガラス窓からの眺めがよい、コーナー
レベルではない喫茶室など、最近の公演だけのための
劇場でなく、団体で来て一日、中で楽しむthat's
娯楽施設な雰囲気。
しかし、エスカレーターの配置が終演時の一斉退場には
明らかに向かないのは何とかしてほしいかも

でも楽しかったです

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