「昭和から騒ぎ」を観る
早々に運良く1枚だけプレイガイド事前抽選でチケットは
取れたものの、開演時間が仕事終わりからの移動
だとかなり厳しめなため、保険で別日も、と、他の
プレイガイド事前、補助席、立見、勿論一般発売、
全てチャレンジしましたが全滅。
結果的に開演時間に間に合いましたが、相変わらず
三谷さん人気は凄いですね
その三谷さん、ドラマでポアロの翻案、舞台でも
チェーホフ「桜の園」などなさっていますが、今回は
シェイクスピア。
選んだ作品は、日本ではそこまで上演頻度は高くない
ながら、シェイクスピア喜劇の中でもひたすら笑える
「から騒ぎ」
これを昭和の鎌倉に(小津っぽい)移し、軍隊は旅芸人
一座に、貴族一家は学者一家に翻案
「から騒ぎ」はケネス・プラナーによる映画版もあり
ますが(キャストは豪華)個人的には、蜷川さんオール
メール版一択
高橋一生くんのベアトリス、月川くんのヒアロー、
長谷川くんのクローディオに鋼太郎さんのドン・
ペドロ、嵯川さんのレオナート、小出くんのベネ
ディックによる、蜷川さんの「喜劇は苦手」とは思え
ない切れ味の良い演出は、ギリシャ風彫刻に囲まれた
真っ白の舞台セットと共に未だに忘れられません
この戯曲は、「ベネディックとベアトリスそれぞれに、
わざと盗み聞きさせて両思いにさせる」部分さえ
成功すれば、ラストの無理矢理感満載の「ヒアローの
蘇生」「クローディオ大混乱」は目を瞑れると思って
います(笑)が、今回は、ひろこ(ヒアロー・松本穂花)と
定九郎(クローディオ・竜生涼)のシークエンスが意外に
長くて、肝心の紅太郎(ベネディック・大泉洋)とびわこ
(ビアトリス・宮沢りえ)のメイン部分が、そこまで
盛り上がらず。
と言うか、正確にいえば、ひたすら喋りまくる紅太郎、と
言うキャラクターが、殆どいつもの大泉さんのイメージ
まんま過ぎ、喋り倒す紅太郎、が填まり過ぎて全く
意外感がなく、喋りで客席を呆気に取らせ、ドカンと
沸かす、までにならなかった、と言う、填まり役
過ぎて寧ろ、な、珍しい誤算(笑)でした
これが普通「寡黙」「冷静」イメージの阿部さんとか、
井浦さんとかだったら、意外性でもっと盛り上がった
のかも(笑)
宮沢さん、竜生くんはそれぞれ器用な役者さんなので
想定内でしたが、松本さんの、意外なコメディエンヌ
ぶりが際立ちました
原作では唯一の悪役、ドン・ジョンにあたる荒木
どん平もそこまで悪意もない設定で、翻案らしく、
物語のエッセンスだけを抽出して巧くアレンジされて
いたと思いました
400年前に作られたものが今でも笑える、と言う、
笑いの普遍性が既に見いだされている原作の偉大さが
もっと知られ、触れようと思う人が増えればなあ、と
思いました。
翻って、最近の浅いトピックだけ繋げて「最先端の
作品でござい」と実力のある役者さんたちに無理矢理
令和のトレンドを押し付けて「チャレンジ」と身内
受けだけする自己満足な底の浅い芝居を「新作」
とか言ってお金を取って舞台にかけるのは、本当に
時間とお金を返して、と、どさくさに紛れてこの際
大声で(新宿方面に向かって)言っておきます(怒)