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2025.06.11

国立劇場主催「五月文楽公演」

2505bunraku

5月の東京公演はシアター1010での3部制
こちらでの文楽公演も既に何回目かですが、相変わらず
ルミネの上だったかミルディス(名前すら、いま調べる
レベル)の上だったか、下層階の雰囲気が似すぎて
見分けがつかず
今回うっかり間違えて無意識に名前に馴染みのある
ルミネの最上階まで疑うことなく行って、詰みました
正解はミルディスの上(笑)
ただし秋の文楽公演、会場はKAATなので、今度は
うっかり北千住にいかないよう要注意(笑)

2部は「義経~」の「伏見稲荷」と「渡海屋/大物浦」
4月の文楽劇場公演とだいたい同じ役割
3部は「文楽入門」として、19時から簡単な解説
ナレーションと1時間弱での「平家女護島~俊寛」
勘十郎さんの俊寛、意外にも初役だったそうですが、
私も文楽での「俊寛」多分初めて
遠見のちっちゃい船影は、文楽だとより違和感がない
工夫なのと、人形が自然に飲み込まれる小ささがより
出る気がしました

さて、今回個人的に一番楽しみにしていたのが、
一部の「蘆屋道満大内鑑」
歌舞伎では所謂「葛の葉子別れ」が有名で、ほとんど
ここしか上演されないのですが、今回は、「本物」の
葛の葉、姉の榊の前も登場、「鶴の恩返し」ならぬ
「白狐の恩返し」話から、葛の葉の正体が判るところ
まで。

見てびっくりしたのは、「葛の葉子別れ」の部分、
歌舞伎と文楽が全然違っていた事
歌舞伎では、(狐)葛の葉が保名にあてた「恋しくば
たずねきてみよ~」の歌を、童子(後の安倍晴明)を
片手に抱えながら左右の手、最後は口に加えて、
しかも裏側から障子に書く、と言う、アクロバティックな
見せ場が最大の売り、寧ろここしかやらない、くらい
ですが、文楽では(狐)葛の葉の歌は、保名が気がついた
時には、すでに奥の部屋の障子(遠目には板戸に見えた)に
書かれた書き置きで、アクロバティックなパフォー
マンスは一切なし
役者の芸を見せる歌舞伎と、ストーリー重視の文楽の
違いが明確に出た事例と感じます
寧ろ「鶴の恩返し」よろしく家事に勤しむ(狐)葛の葉と、
両親と一緒にやっと保名の居場所が判ったとやって
くる(人)葛の葉のバッティングに翻弄される、保名たちの
あたふたや人間ドラマと、しんみりの後の、何だか
楽しい所作事が印象に残りました

因みに外題に出てくる蘆屋道満、は「陰陽師」でも
有名な、安倍一族とトップ陰陽師の地位を争う方。
夢枕獏さんの原作と映画、岡野羚子さんの漫画化の
「陰陽師」シリーズだけで知識が蓄えてきたため、
何故ライバル(と言うか敵)役の名前の方が外題に
なっているのかわからなかったのですが(笑)、イヤ
ホンガイドを聞いていたら、道満は陰陽師の手本と
なる者して、最後に大内(朝廷)に認められる、と言う
ストーリーらしく、しかも保名とそんなに敵対して
ないらしい
びっくり。

上演されない部分も含めての粗筋が、ネットにあった
ので読んでみましたが、面白いのに何か技術的或いは
内容的に、現代やるにはハードルがあるのか、演者
さん心をくすぐるポイントがないのか判りません
でしたが、一度最後まで見てみたい気もします

歌舞伎も勿論好きですが、文楽にはそれ自体にも、
またこうして歌舞伎と比較する事で、共に深まる
面白味が今月もまたあり、まだ暫く両方見ていたい
ものです。

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