


国立文楽劇場
第一部は夏休み恒例、小さい方にも興味を持ちやすい
知られた話を、文楽の技で見せる「親子劇場」企画で、
今年は「西遊記」をなさってました
第二部は「名作劇場」と銘打って、一転、古典を
じっくり見せる企画
今年は何と「一谷嫩軍記」と「桂川連理柵」の二本立て!
開演から終演までざっくり4時間!
企画名に名前負けしてないコスパ最強な内容ですが、
普通ならそれぞれで一部ずつでもやれる長さのを
二段重ね、とは、ガチでやるにも程がある、国立
文楽劇場(笑)
「一谷~」いわゆる「熊谷陣屋」
丁度、目と鼻の先の松竹座の年イチの恒例歌舞伎、
八代目菊五郎の襲名披露公演の演目の一つで、仁左
衛門さんが熊谷をなさっていて、(「勿論」この翌日
こちらも拝見)。人形と仁左衛門様の「競演」も今回の
お楽しみでした
文楽はいつもながら「モノガタリ」「語り」の面白さ。
また、歌舞伎では省略されている(のが当たり前だと
理解していた)藤の方、相模、熊谷、それぞれの心理、
やりとりが、より丁寧に語られる事で、「そう言う
事だったか」と理解が深まりましたし、また、続けて
見たら文楽と歌舞伎、段取りや解釈が微妙違っている
部分が思った以上にあって(ゴールは同じ)、それ
ぞれの面白さに気づけたのは、連続観賞ならでは
でした。
「桂川連理柵」は、文楽では定番ですが、歌舞伎
では見た記憶のない作品。
(人形ならまだしも、生身のヒトだとやっぱり、リンリ
的にやりにくそうな設定だからか)
細かい心理ものなので、本当に物語を読むような
面白さがありますが、毎回トゲ的に感じるのは、
ラスト前。
結局、主役二人はラストで心中する(これも文楽の
ド定番展開)、それを長右衛門が直前に決断するの
ですが、その理由がいきなり、そしてちらっと語られる
だけ。(今回の上演形態では)
え、ソレなの?なんか納得できない、胡散臭いな~な
(笑)ところ
まあ、「桜姫」の清玄が桜姫に執着する理由もそれ
系なので、何か因果な理由が欲しい感じなんでしょうか
それに、この作品、内容だけだと誰にも思い入れ
しづらい。
敢えてが今回、和生さんが遣われた、健気と言うか
不幸(不公平)一身に背負うお絹さん
で、それが見られるのがこの演目の価値なんですが、
それにしても、いやいや長右衛門、許しがたし。
そこに、文楽・歌舞伎界のもう1つの大定番、思い込む
恋愛体質女子の無敵で怖いもの知らなさ過ぎが加わる
ので、本当に幕が降りても救われません。
一転、三部は「サマーレイトショー~WelcometoBUNRAKU」として、万博などによる
インバウンドも意識したか、開演前に英語の解説と
実演付き
演目も「伊勢音頭恋寝刃」と「小鍛治」と言う、
イマドキの「刀剣系」(笑)でまとめ、イキオイで?
解説にも「とうらぶ」版の「小烏丸」に拵えた文楽
人形が見参。
人形の動きを解説してたのですが、ラストはポーズを
決めての、まさに「小烏丸」さま撮影会でした(笑)
「小鍛治」本編に登場する名刀・小狐丸の精も、
とうらぶのキャラに拵えられていました
人形は二部のあいだはロビーにいらしたので、写真を
撮りましたが、「小烏」は、つい先日、演舞場での
「刀剣乱舞歌舞伎」で雪之丞さんが演じておられたのを
見たばかりなので、さすがに私でもピンときました
(学習効果(笑)
しかもそこは人形ですから、体の動きも等身も、
人間が再現するより、明らかに「とうらぶ」の世界観に
近づくし、文楽は、狐とか怒りの神様とか、元々
超人的パワーキャラと相性よしなので、いまだ「とう
らぶ」の世界に詳しくない私でも、人形自体で格好
よさが伝わりました
前置き長くなりましたが、勿論、私の目当ては「伊勢音頭」
文楽で上演されてから歌舞伎に、と言う作品が割に
多いなか(歌舞伎サイド、割にズルい(笑)、これは
歌舞伎が先だそうで、だからか、歌舞伎で見ると
所謂、色男の貢が、妖刀・青江下坂を振り回す独特の
様式美とか、万野やお鹿とのやりとりのスリリングさ
とかがあるのが、文楽だと意外にサッパリ、なのと、
何人斬ってもそこは「お人形さま」なだけに、陰惨さ
よりいささかな滑稽さが上回りました。
文楽だと陰惨さが薄まるのも嫌いではない、ですが、
個人的には、イケメンが妖刀振り回す、独特の湿度と
一線を越えた感がある歌舞伎がやはり好みかも、です
役者の個性が、芝居に強く反映するからかもですが
それにしても、文楽劇場のエアコンは寒かった!
膝掛けでは何ともならず、二部三部の合間に、なんばの
地下街のユニクロに羽織もの買いに走りました。