





9月は「菅原伝授」仁左衛門さん菅丞相の追っかけに
忙しく(笑)、手(足?)が回らなかった美術館巡りですが、
今月は仕事も一息ついたので、気になっていた
都内
5美術館&博物館&資料館連携の「蔦重」関連展示、
題して「五館連携・蔦重手引草」を制覇することに
しました。
まずは「太田記念美術館」
原宿と言う立地もあり、以前、インバウンド客でとん
でもない混雑に巻き込まれた上に、マナー違反の客を
まるで注意しないスタッフの態度に辟易したので、
魅力的な展覧会も暫く敬遠していました。
今回も土日は回避しての平日午後。
それでも行列していたら諦める覚悟でいましたが
「その時に比べれば」そこまででもない、我慢の許容
範囲ギリギリ。
コロナとインバウンドの影響か、以前のようなスリッパ
履き替え、一階にあった畳敷きの和室に座って、
床の間飾りを拝見するようなしつらえでゆったり
見ると言う、こちらならではの、風流で贅沢な浮世絵
観賞法はなくなった一方で、支払いが相変わらず
キャッシュレス不可現金のみ、なのは、ちょっと
解せません。
展覧会タイトルは「蔦屋重三郎と版元列伝」。
浮世絵を作者やジャンル毎ではなく、蔦屋をはじめと
する鶴屋、須原屋(一統)、西村屋に加え、雛形屋、
奥村屋、和泉屋、など版元を切り口にそれぞれの作品
(商品か)を紹介する展示。
そこはやはり浮世絵専門館、所蔵品の量とバラエティが
凄い。
作品リストも丁寧で有難く、また他4館と違って、
蔦重がメイン展示でした
そう言えばこちらに限らず、最近の浮世絵展示には
「作品名」「作者」「製作年代」以外に、ほとんどに「版元」が
表示されるようになったのは、偏に「べらぼう」効果
でしょうか。
因みに五館それぞれで、一ノ関圭さん書き下ろしの
特製「蔦重と仲間たち」特製絵葉書きがもらえる仕組みに
なっていたのですが、太田さん割り当ての写楽は
前期展示で終了してました。残念
(作品撮影は一切禁止)
次は「五島美術館」
徳川美術館と並んで、「源氏物語絵巻」を所蔵して
いることで知られる老舗の私立美術館
庭園も綺麗なのと、今は大手町に引っ越した静嘉堂が
以前は岡本(二子玉川)にあったので、ハシゴするのが
楽しみでしたが、今回かなり久しぶり。
こちらのメインテーマは「武士の雅遊」で、「蔦重」は
「蔦屋重三郎~江戸には江戸の風が吹く」コーナー。
「べらぼう」でも描かれていますが、江戸の文芸界は、
お武家の(副業)作者を抜きにしては成立してない
故にきちんとした執筆に関する契約が長く定着し
なかったらしい?とどこかで見聞きしましたが、
いかに?。
今やすっかり有名になった(笑)春町、喜三二による、
真面目なんだかふざけているのか判らない黄表紙
などかが、素晴らしくよい保存状態で展示されて
いました。
考えてみれば、所蔵されていても。関心を持たれ
なければなかなか展示と言う「日の目」を見る事も
ないかも。
因みにこちらには「錦之裏」「仕懸文庫」「娼妓絹籭」と、
「べらぼう」最新回で蔦重が「身上半分」をくらった
京伝の「教訓三部作」全部がまさに、のタイミングで
展示されていました。
しかし、発禁になった筈のこれらが、きちんと所蔵
され保存されて受け継がれて、令和の今、ガラス
ケースで展示されている、その間の経緯は凄くドラマ
チックだろうし、火事や事変の多かった江戸から
今までを考えると奇跡的な事な気もします。
なお、五島さんは素敵な作品がたくさんありましたが、
配布の作品リストには、作品名と発行年代と所蔵者
しか記載がなく、作者はじめ細かい情報を展示の
説明からノートにメモするのがなかなか手間取り
ました。
こちらには「蔦重さ~ん(by京伝)」のハガキがあった
そうですが、こちらも早々に配布終了したとか。
地味な展示だと思ってましたが、「べらぼう」効果、
侮れず
(一部禁止表示のある作品以外は撮影可)
次は、個人的に大好きな「印刷博物館」
こちらは印刷物、と言うカテゴリーでの浮世絵の
所蔵ですが、量が半端なく、また珍しいもの、状態が
良いものが多いことは、以前の展覧会で把握して
いましたので、かなり期待して伺いました。
相変わらず広いスペースに丁寧な解説付き展示。
運営が凸版印刷さんなので、印刷方法や仕組みに
ついての解説も詳しく、模型などで理解が深まる
工夫がされているのがポイント。
今回も印刷技法と歴史と言う両面から「あれもこれも
蔦重!~お江戸の名プロデューサー蔦屋重三郎」コーナー
展示でしたが、前後の印刷技法の発展展示が理解の
助けになりました。
こちらでは無事に?太田南畝さんの絵葉書を入手
そう言えば、印刷技術の紹介として、私は結構最近
まで使っていた「プリントゴッコ」が、ガラスケースに
入って「展示」されていて、苦笑しました。
ついでに別会場でのパッケージのコンテストの優秀
作品展示も拝見。
普段、何気なく見てさわっている商品パッケージや
配送時の梱包材の材料やデザインが、破損対策と
利便性と、コスト軽減や環境対策と両立させる工夫が
常にされているのが判りましたし、「物作りに絶えず
工夫を凝らす」姿勢が素晴らしいと感じました。
(原則撮影可)
区内最後が、押上の「たばこと塩の博物館」。
こちらは以前、渋谷の公園通りにあったのが10年
以前に、スカイツリーに程近い、業平の自社敷地内に
移転していたのですが、なかなか行くチャンスがなく、
春先に一度、隅田川にまつわる浮世絵展示があっで
伺っての今回が2回目。
何で煙草と塩がまとめて1つの博物館になっている
のかの理由をおそらく最近の方は想像もつかないかも
★塩と煙草は電話と共に「専売公社」で専売制で、
小学生の社会のテストには決まって「三公社五現業を
全て書きなさい」と言う問題が出たもの。
因みに五現業は「郵政」「林野」「印刷」「造幣」「アルコール」(笑))
話が逸れましたが、こちらの所蔵浮世絵も、印刷
博物館同様、テーマ性があって、メインは、勿論、
煙草や煙管など風俗が描かれたもの。
今回メイン展示は「けむりと人々のつながり~メソポ
タミアの記憶」で、「蔦重」関係は、別室サブ展示で、
テーマは「18世紀のおもちゃ絵と蔦屋重三郎版の
おもちゃ絵」コーナー展示
役者の着せ替え(役の)や、双六など。
館蔵品は少ない一方、テーマに沿ったものが内外の
美術館博物館から集められていました。
写真展示も多くて、五島や太田と並列で「5館連携」と
言うのはちょっとなぁとは思いましたが〔汗)、
資料リーフレットがオールカラーで、そこは五館
イチ気合が入っていました。
山東京伝さんの絵葉書をいただきました。
(他館作品がほとんどで撮影不可)
最後に残ったのが、一ヶ所だけ明らかに遠い立川の
「国文学研究資料館」
遠い上に、国立研究施設なため、土日祝は休み、
開館時館も短め、とハードルが高い(汗)
立川は都内で貴重な広いIKEAやららぽーと、勿論、
昭和記念公園があるので、全く知らない場所はあり
ませんが、モノレールでなら立川北から1駅2分ですが、
歩くと25分と言う、なっかなかなアクセス
しかし、万難を排して?伺ったら、入館は無料だし、
研究機関なので、資料も解説もたっぷり
展示の切り口は「本のサイズ」
他館で見てきても余り意識してなかったのですが、
江戸期の「本」はだいたいサイズが大中小に分類される
そうで、「大(おおほん)」が大体今のA4サイズで内容は
基本「ちゃんとした本」(笑)。
その半分のサイズが「中(ちゅうほん)」、「べらぼう」
お馴染みの黄表紙はこれ。
半紙二つ折りサイズが「半紙本」でさらに半分が「小本」
洒落本は小本だそう。
中身の硬軟が大きさに反映してるらしいのですが、
例の狂歌同人を百人一首風絵に仕立てた「狂歌百人一首」や、
北斎が狂歌に絵をつけた「潮干のつと」あたりのサイズが
大きいのは、入銀(クラファン?)だったからかも?とか、
「べらぼう」の俄知識で思ったりしました(笑)
こちらでは「うた」こと、歌麿さんの絵葉書をいただき
ました。
更にアンケートに答えたら、立派な装丁の資料集を頂きました
(撮影可)
美術館博物館巡りは好きですが、短期間に類似の
内容の展示を複数見ることは稀。
とにかく江戸の印刷文化の豊かさ、武家・町人の枠を
越えた交流、時代・政治との関連など、まさに「べらぼう」の
人々の生の声、息づかい。手触りが伝わるようでした。
しかし、何にしても、あの超絶細かい絵と、隙間を
埋め尽くす文字のものすごさ。
あれ、版画ですから、彫師さんは裏向きに彫って
いる訳で、いや、つくづく凄い。
すごいです。