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2025.11.30

「チ、地球の運動について」を観る

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原作は読了できず、アニメも余りの暗さに前半で
離脱していたため、最初は行くか悩んでいましたが、
森山くんと成河くんと言う、新旧・「100万回ネコ」
役者であり、「花髏城」「鳥髑髏」の両天魔の共演なんて
滅多に見られるものではない、と思い直したものの
出遅れて東京公演完売で、大阪公演に行ってきました。
(後で気がつきましたが、演出はまさにその「100万
回~」の方でした)、

元々、顔ぶれから身体性で見せる舞台だろうと予想
していて、まさにその通りでしたが、一部は残酷な
シーンを身体表現の美しさで緩和する手段だった
のかも。
また、原作は地動説を研究する人たちが次々と「思い」を
引き継いでいく物語ですが、舞台では逆に物語に
唯一登場し続け、一環して地動説論者を異端として
裁き続ける森山さん演じるノヴァクを中心に据え、
彼なりの「信念」と絶望の物語、になっていました。
そこの狙いは判ったのですが、登場人物の説明や
関係性が殆ど紹介されなかったので、原作未読了者
にはやはりなかなか厳しく、また一人の役者さんが
何役か兼ねていたので、衣装はかわっていてもちょっと
混乱したりもして、何より、終わりかたがよくわから
なくて、やはり原作を頑張って読了しておくべきだった
と反省しました

成河くんは、まず、地動説を研究する隻眼の修道士・
パデーニとして登場。
常にハンカチ?で手や辺りの物を凄いスピードと手順で
拭く手先の美しさ(笑)が最初に目に止まりましたが、
ノヴァクの追及にごく冷静に対応しながら、何らかの
方法で自分たちの「成果」を後世に残す意味を語る
ものの、意外にすんなり?ノヴァクの拷問で命を
落とす。
あれ「ロミジュリ」のマキューシオのレベルで早々の
退場か(笑)、と思っていたら、しばしたら今度は
「異端解放戦線」の戦士シュミットとして再登場。
こちらは完全に脳みそ筋肉の武闘派で、ネットの
書き込みなどで話題になっていた、森本くんノヴァク
との、一対一の勝負シーンになる訳で、見ながら
「W天魔王の直線対決~」と一人で内心、盛り上がり
まくりました(笑)
お互いマントを翻しまくる姿が天魔王を彷彿とさせて
もいたし、まあ劇後半のあのタイミングに、こんな
キレキレの対決シーンとか、二人ともどう言う身体、
そしてお二方とも随分楽しそうでした(笑)
ただ、シュミットと言うキャラクターを後から原作
漫画を見たら、およそ成河くんが演じるキャラクター
とは違うビジュアルだったので、多分原作ファンの
方は「キャラが違う」と思われたかもしれません。
また、同じく特殊な身体性、で忘れてはいけないのが、
吹越満さん。
サイモン・マクバーニーの「エレファント・バニッ
シュ」を始め、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」
とか(内容はさっぱりでしたが)、かなりのベテラン
俳優さんですが、物凄いしなやかな動きと通る独特の
声は、テレビドラマで見る吹越さんから、ちょっと
想像つかないレベル。
今回も異端者から司教まで幅広い6役を、さらりと
演じ分ける中でも、最初の異端者の情けなさと、
最後に登場したアントニさんの、権力の使い方を
よくわかっている食えないオヤジ感が、同一人物
とはなかなか思えない、とにかく別格の存在感でした。

大貫さんのthat'sダンサーな身体、三浦透子さんや
吉柳咲良さんの通る声にしなやかな動きなどもそれ
ぞれ印象的でしたが、窪田さんが演じたオクジーに
ついては、台詞に印象的なものが多いし、もっと
前面に出て物語を引っ張る役だからのキャスティング
かと思っていましたが、思っていたより大人しい
キャラクターに終始したのがちょっと意外でした

終盤、新しいテクノロジーとしての活版印刷により、
地動説者は「知」の流布を、教会側は許可を与えることに
よる実利的収入の獲得と、いわゆる「Win Win」になり、
しかもこの期に及んで、「地動説者狩り」に心血を
注いできたノヴァクが教会に切り捨てるラストは、
新選組が「幕府お墨付きの最強の京都警備隊」から
単なる「時代遅れの人斬り集団」と手のひら返しに
評価が変わったのと似た感じかな、とは思いました。

原作をちゃんと読んでいたらもっと理解が深まった
だろうな、と思った一方、かなり独特な切り口での
舞台化であることは容易に理解できたので、知らずに
見たのは寧ろ原作の再現性に関してあれこれ気にせずに
済んだのかも。
信心とテクノロジーが相反する局面で悩むと言う事に
ついての物語は私など無信心な者にはよくわかり
ませんし、これに限らず、何を信じるかを強制され
従わないものには精神的のみならず、身体的苦痛を
与えてきた歴史はある、少なくとも現代は、色々
違う困難はありますが、その意味だけでも幸せだ
とは見ていて確信できました


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2025.11.28

さい芸シェイクスピアシリーズ2周目、次回は「リア王」

彩芸サイトに、来年5月の「リア王」公演の内容が
発表されました。
勿論、リアは鋼太郎さん
エドガーを藤原くん、ゴネリルを石原さん、と言う
実に「that'sホリプロ」なキャスティング。

蜷川組を含めて見たい役者さんも殆どいませんし、
「タイタス~」以来20年数年見続けてきた「さいたま
シェイクスピアシリーズ」もそろそろ「皆勤卒業」する
気がしてきました。

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2025.11.23

「狩場の悲劇」を観る

Kariba

紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

最初に番外的愚痴
内容に関係はありませんが、この劇場名、本当に
乗換案内での検索が面倒。
自宅からなら問題ありませんが、出先からの向かう
時に到着場所に入力して一発で表示されたことが
ありません(汗)
「紀伊國屋」だと書店の新宿店、「TAKASHIMAYA」だと名古屋とか(笑)各地のデパートが
最初に出て来てイライラ。
結局、「ハンズ新宿」とか「ニトリ新宿」とかで検索
しがち。
八つ当たりですが、そもそも名前が自体、無理矢理
繋いだだけ、昔の「三菱東京UFJ銀行」みたい(笑)で、
何とかならないものかしら。
ざっくり「新宿サザンシアター」くらいで。

さて、今回の二兎社はいつもの永井愛さんのオリジ
ナル作品上演とは違い、チェーホフの初期の、それも
戯曲でなくミステリー?長編小説を永井さんが再構築
して戯曲にしたもの。
亀田さん、玉置さん、佐藤誓さん、勿論、溝端くんと
魅力的なキャストだらけで、行く、は即決しましたが、
さてどんな作品だろう、と、チケット取ってから原作
翻訳を借りて読みましたが、とにかく「事件」がなかなか
起きない(笑)
やたらと美しい自然描写が綿々と続く不思議な作品で、
結局、読了前に観劇日になってしまいましたが、
それでもこれをどうやって舞台にするのか、そこも
見所のひとつかな、と思いながら伺いました。

幕が開くと「編集長」(亀田さん)の仕事部屋。
そこに「男」(溝端くん)がやってきて、少し前に預けた、
自作の戯曲の感想を聞かせろ、と言いながら、舞台
上ではシームレスに、男が語り手となって戯曲の再現
ドラマが、編集長の仕事部屋のセットのままで勝手に(笑)
展開されていく。
しかも編集長は、ずっと編集長のまま舞台にいて、
登場人物を鼓舞したり、突っ込んだり、知識を知らせ
たりする。(多分読んでいる体です)
物語の中で起きる「事件」の犯人は、編集長によって
解明されますが、ラストに二転三転

書くとなかなか複雑ですが、舞台はすごく面白く、
ラストに、チェーホフの小説を戯曲化した上に、
更に永井さんの視点も加わって、実にメタシアター的
な仕上がりでした。

亀田さんは狂言まわしとして、観客に近い目線でいて、
物語の最強ガイド。
「登場人物」に振り回され、犬やら猫やらにさせられ
ても(笑)破綻しないのはさすがです。
溝端くんは蜷川さん芝居で何度か拝見してきて、
真面目な後輩キャライメージでしたが、久しぶりに
拝見したら秘密を抱え、繊細で色気のある役柄に
ぴったりでした。
金持ちダメダメ貴族を、玉置さんがクルクル変わる
表情と登場人物中イチお金のかかったお洒落な衣装を
着こなして可愛さまで炸裂
この二人に加えて、中年の執事の三人を翻弄する森番の
娘・オーリャがこの物語の最大のキーパーソンですが、
この役は開幕直前にキャスト交代で、急遽原田樹里
さんが代役に。
書いたチェーホフは女性不信なのかと(多分そう)思う
くらい、野心家で、コケティッシュで感情の起伏が
激しく、まあクラスや職場にいたら確実に同性には
好かれないタイプ。
常にハイテンションで台詞も多いので、どこまで
振り切るかが役者さんのしどころだろうと思いましたが、
完全にノーブレーキで
大変そうでしたし、何となくオリジナルの役者さんに
意識して寄せてるのかな、な部分がありました。
役者さんが違う以上、雰囲気も違っていてよいのにと
思いましたが、それだけかなりギリギリの交代だった
のかも知れません。

いつも二兎社作品は永井さんの社会の矛盾や仕組みの
違和感をエンタメ的に捉えて的確に見せる手腕で
楽しみでもあり、今作も、確かに閉鎖的で将来が
見据えにくい現代とチェーホフ執筆時のロシアとの
共通点とかもあっての「いまこれ」なのかも知れませんが、
今回に限って言えば、ラストの「編集長」による「謎解き」と
「編集長」自身についての種明かしの部分に、永井さんが
チェーホフと同じ地平に立ってみた、なところに
面白さを感じました。
かなり緊密な室内劇ではあるので、二兎社以外でも
劇団やカンパニーで繰り返し上演される、レパー
トリー作品になればな、と感じました

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今年も「酉の市」

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今年の酉の日は2日程。
二の酉が祝日で混雑必至なので、一の酉、そして
最近数年の恒例、夜の市も賑わいがありますが、
空いている午前中に伺いました。

実家ではもっと大きな熊手でしたが、いまは身の丈に
合った最小サイズ。
それでも縁起の良いアイテムがこれでもかと詰まっています。

酉の市が過ぎれば師走も目の前。
気がつけばもう年末です

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歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」を観る

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顔見世で現代作家の爆笑?新作歌舞伎ってなぁ、
とか思ったのは最早、頭が固いのかも知れません
実際、三谷さんの「歌舞伎絶対続魂」がある夜の部の
売れ行きが良いのは確かで、配信も決まりましたし、
要は中身。

昼は「御所五郎蔵」。
「五條坂仲ノ町甲屋店先の場」は、客席上手に仮花道を
備えて、上手の五郎蔵と下手の土右衛門が客席を挟んで
啖呵を切るのが見所ですが、今回は仮花道を出さずに
五郎蔵は上手幕から登場なのは、個人的にはちょっと
残念。
また、続く「甲屋奥座敷」皐月の偽りの愛想尽かし、
次の「五條坂郭内夜更の場」での興奮した五郎蔵が、
同僚の逢州が皐月と打掛を交換しているのに気がつかず、
暗闇で惨殺してしまう惨劇まで、「五郎蔵」の見せ場を
全部やって下さったのに、全体になんだか淡白でした。
かっこいい七五調の台詞の応酬、男伊達と誠実な
女性たちのギリギリの攻防、と言う(本当はこれも
長~いお家騒動ものですが)、昭和なら文太さんや
岩下さんを彷彿とするような世界観 は、ひたすら
格好よく見たいところ、安定の愛之助さんですが、
今回は根の真面目さが勢いと切れ味を若干鈍らせたかも。
時蔵さんの皐月は勿論、米吉くんの逢州の安定感。
米吉くんは先月の「川連法眼舘」の静の方が似合うかと
思いきや、意外に逢州の気っ風の良いキャラクターが
はまりました。
今で言うなら、ギャルグループの童顔だけど姉御肌の
リーダーみたいな?(笑)

夜はその「歌舞伎絶対続魂」
三谷さんの元の「ショー・マスト・ゴー・オン」は
未見ですが、マイケル・フレインの「ノイゼス・オフ」も
定期的に上演されますし、大ヒットした映画「カメラを
止めるな」も同趣向の表裏同時進行バックステージ
ものは人気の題材。
三谷さん自身の映画「ラジオの時間」もそうでした
今回は「義経千本桜~川連法眼舘」のバックステージ
ものにアレンジされていましたが、先月、通し上演で
歌舞伎座自身にかかっていた作品にするあたりも
なかなかです。
また、舞台を伊勢の地芝居小屋にしていたのも個人的
にはツボ

心配性の座付狂言作家に、見込みの甘い座元、行き
当たりばったりの頭取に、気弱でアルコール好きの
ダメダメ主演俳優、今時のイケメン看板若手、仲間
思い真面目な若手に、狂言作家にこきつかわれる
若手スタッフ、顎が外れると嘆くベテラン女形に
老整体師、出番をカットされた中堅女形に、コロコロ
変わる状況に振り回される美術スタッフ、芸に悩む
若手、 看板若手の贔屓の芸者、素人同然の付打に
新しいフレーズを思い付いて披露したくてたまらない
囃子方、そして「千本桜」作者の竹田出雲が、舞台の
表裏を縦横無尽に出入りしながら、いったい「河連
法眼舘」は無事に上演されるか?(笑)

勿論、観客の期待通り?主演は二日酔いでとても
無理目、静御前には代役が立ち、同じ扮装の役者が
二人になり、芸者は看板若手のきまぐれで舞台に立ち
(ややこしいが、実際には女形の新悟くんが芸者で登場、
舞台に出るならと男のふりをしてから女形になると
言う(笑))、見に来た竹田出雲もそこは戯作者、なか
なかの曲者(作者が曲者なのは、三谷さん自身?)

まあ、アドリブなのか当てがきなのか、最早分から
ないカオス
三谷さんとは縁の深い白鸚さんも大ベテラン俳優役で
カメオ的登場。
頭取役の鴈治郎さんが映画「国宝」の監修に入っても
いるので、「国宝」繋がりの台詞もあり、何故か最後は
平井堅さんの「POP STAR」.にのせて全員で踊ると言う、
頭で考えても無理なところを力業で押しきった感じ
でした。

2回拝見しましたが、橋之助くんお祝いとか(笑)阿南
さん帯状疱疹話とか、2回目は少なくとも台詞や動きも
明らかに増えてました

それでも幸四郎さんの狐忠信なんて、本公演でなさる
役ではないので貴重ですし、しかもふざけながら
ちゃんとできているのが凄い(笑)
染五郎くんの2役も言われなければ分からないし、
阿南さんで三谷色が出、浅野さんに至っては出て
くるだけ、動くだけで笑いが起きる
まあ、都度メンバーが変わるカンパニー芝居に比べたら、
歌舞伎役者さんたちと言えば、10年20年レベルで共演を
続けている気心の知れた「劇団員」
他のジャンルに比べたらより息を合わせる必要のある
喜劇において、ひょっとしたら最強のカンパニー
かも知れません 
鶴松くん、莟玉くんなど若手もいつもの歌舞伎と違う
一面を出して随分楽しめました

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2025.11.20

「十二夜」を観る

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東京グローブ座

シェイクスピアといえば日本では「ハムレット」
「マクベス」「リチャード三世」の上演頻度が高い
ですが、個人的には「十二夜」には特に思い入れが
あります。
蜷川さんが一回だけ「歌舞伎に留学」して菊五郎
劇団で
上演した「NINAGAWA十二夜」が今でも私のベスト
「十二夜」で、冒頭の観客を映し込む鏡幕、女性が男装
して男性に恋する役を、歌舞伎俳優が演じる、と言う
捻れ面白さ。
拗れた恋愛に積極的なヒロインに、ラストは奇跡の
再会とシンデレラ的ロマンス劇は、普通に歌舞伎で
やって違和感がない要素が詰まった戯曲の良さを
生かしたのが見事でした
また、名前や役職以外あまり台本を歌舞伎に寄せて
ない台本だったので、シェイクスピア大得意の超長台詞も
てんこ盛りでしたが、そこは百戦錬磨の歌舞伎役者
さん方、みなさん楽々となさっていて、若手は勿論、
時蔵<現・萬壽>さんや七代目菊五郎さん、とりわけ
大ベテランの左団次さんが、大仰に真面目くさって
笑いを取り、ニコニコしながら惚ける見事な喜劇役者
ぶりには感服してました
何より私にとってのポイントは、「一卵性」とは書いて
ないものの、身近な人たちが揃って間違えるのですから
バイオラとセバスチャンは似ている事、なので、
単純に言えば菊之助さんのような、女形も立役もできる
俳優さんが一人二役早変わりで演じるのがいちばん
しっくりきます。
(ラストの四人揃うところをどうするかが、演出の
しどころですが)

一方、そもそも女形と言う手段がない普通の舞台だと
どうしてもバイオラを女優さん、セバスチャンを男優
さんがなさるので、「ちょっと間違えなくない?」
って感じになる事が多いのを今回はどうするのか、
シェイクスピア作品演出が相次ぐ森慎太郎さんの
演出なので楽しみに伺いました。

森さんは去年の草彅くんの「ヴェニス~」もかなり
ユニークなアプローチでしたし、蜷川さん以降で
数少ない見逃したくない演出家さんのお一人(アイドル
枠の方たちを主演に据える事も蜷川さん同様比較的
多いのでチケット取りがちょっと大変ですが)、そして、
今回そのキャスティングに関しては、なっかなか
画期的でした。
普通、キャストのジェンダーを戯曲と敢えて変える
場合、オールメール、或いはオールフィメール、
もしくは「男女逆転」などら一定のルールに従う事が
多いですが、今回は、バイオラ、オリビアの女性役に
加え、船長や下男など一部の男性役を男優さんが、
セバスチャン、アントーニオ、エギューチック、
ベルチ、マルボーリオ、フェステと言う殆どの男性役を
女優さんがなさりながら(フェステは男性、と指定は
ないかも)、プラス、一番頭の切れるオリビアの侍女・
マライアも女優さんと、役柄と役者のルール決めが
なくバラバラ。
パンフレットによれば、演出の森さんが「演じてほしい」と
思ったキャスティングだそうですが、意外にもこれが
はまった感じで、殆どの役は違和感なく受け入れられ
ました。

マルボーリオの峯村さん、ベルチの阿知波さんに、
フエステの高橋由美子さんと、百戦錬磨ののベテラン
三人が、物語のコアをしっかり支えているので、
若手は思い切りハチャメチャができる、非常によく
考えられたキャストでした。
また、キャストで印象的だったのが、That'sロマン
チストのオーシーノ役の長井短さんとオリビア役の
大鶴佐助さん。
長井さんは「ヴェニス~」や、最近はWOWOWのドラマ
でも拝見してますが、 「リボンの騎士」のような全身
白の衣装に負けないスタイルのよさで、「ベルばら」の
オスカルよろしく、歩けば後ろに薔薇の花が咲くような
華やかさに加えて、ここまで実行力のない「やや能天気の
王子様キャラ」がはまるとは(誉めてます)
更に、今まで表情からは割と真意の読みにくい謎めいた
キャラの印象のあった大鶴さんが、大柄の体躯に長い
裾のドレスをまとって、喜怒哀楽撒き散らしながら
勢いよくを舞台上で動きまわるため、歩く度に床に
散りしかれたピンクのハート型の紙片が舞い上がり
まくる。
まるで青池保子の漫画のキャラクターのような、
キレッキレの最高の「コメディエンヌ」ぶりで、もう
後半は登場してくるだけで笑いが湧いていました。
何より素晴らしかったのが、セバスチャン役の北村
優衣さん。
セバスチャンはバイオラが散々出てきてから漸く
登場するのですが、しばらくはバイオラの正門さんが
二役でやっているのかな、と思った程、正門さんの
バイオラに似ていて、かつ、格好いい男子で、これなら
セバスチャンに惚れ込んでいる(色んな意味で)アン
トーニオが間違えても仕方ないかも、と思った程でした。
その、複雑なメンタリティで、一番男らしさを見せる
「男気」のアントーニオを演じたのが、歌舞伎一家で
育った松本紀保さん、と言うのがまた実に、で。
マルボーリオやエギューチクに対する悪戯が、些か
虐めに近い気がするのをどう見せるかもポイント
ですが、舞台全体がとにかく赤とピンクで、言えば
しっちゃかめっちゃかのべたべた激甘なドタバタ劇に
紛れ込ませて、細かい事はみんな吹き飛ばして全員
ハッピー、と言う妙な多幸感に包まれた、なんとも
不思議な舞台でした
しかし、役者さんのテンションとその持続力、すごすぎ。

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2025.11.09

出石へ弾丸小旅行

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金丸座(香川・現存する日本最古の芝居小屋)には
「金比羅歌舞伎」を見に、「八千代座」(熊本・国の重要
文化財)も随分昔に萬斎さんの狂言公演を見に伺い
ましたが、近畿圏最古の芝居小屋で、金比羅歌舞伎
同様、短期間ながら松竹が歌舞伎公演を打っている
出石(兵庫県豊岡市) の永楽館にも、せっかくなら一度は
歌舞伎を見たいとは思いつつ、果たせてませんでした。
何より、兵庫県内と言ってもなかなか遠いし、金丸座
同様、風情のある分、平場席は枡の座布団席で長時間の
正座は難儀そうで、公演チケットに手を出しかね、
また見学だけと言っても夏は暑そうだし、冬は寒そう
だし(笑)

ところが、映画「国宝」の大ヒットで、思わぬ影響が。
ロケ地の一つとして映画冒頭の「二人藤娘」などが撮影
された縁で、元々公演時以外で行われていた施設見学を
バージョンアップ。
撮影で使用された小道具などを部屋の設えごと再現、
さらに最近は羽織れる着物と、小道具の藤の花(枝)が
舞台袖に置かれて、自由に使っての「なりきり記念撮影」も
できるようにと、今ならではな楽しみ方もできる企画に
なって、ファンを中心に「聖地巡礼」で盛り上がって
いると言うニュース。
折角見学するなら、「国宝」展示をしているうち間の
方が(なりきり藤娘は勿論やる気はなかったですが)
楽しそうですし、「巡礼」に便乗すべし、と、突発
「秋の北兵庫弾丸ツアー」を敢行してきました(笑)

豊岡までは京都から所要約2時間くらいですが、
肝心の出石へはそこから更に路線バスで30分。
天気は予報通り、京都駅での曇りが途中から雨になり、
豊岡で降りると本降りに。
バスは市街地を抜けるまでは普通のコミュニティ
バスでしたが、バイパスっぽい信号の少ない道に
入ると、ガンガン飛ばして、出石バス停には定時に
到着。
(630円。因みに今時珍しい、ICカード非対応。出石の
バス待合室に数個だけ現金式コインロッカーあり)

現地は天気雨のような感じで、天橋立のような景勝地
観光だと残念、ですが、こちらは建物の中を拝見
するのが目的なので、寧ろ涼しくて(行った時は盛大に
残暑でした)助かりました
初めての場所はいくら地図を見ても距離感が掴め
ないのでよくわからないのですが、出石城(有子城)の
麓に慎ましく開けた城下町は、思っていたよりさらに
小さめで、私のように観光地は原則徒歩、の人間には
丁度良いサイズ感。

城跡の前の大きな駐車場は、近畿各地を中心に各地
からの車がたくさん並んでいて、回りには「出石そば」を
売りにするお店が何軒もありましたし、ほかにも
蕎麦関係の飲食店や、お土産物店が集まって賑わって
いましたので、出石に来る方たちの多くは「自家用車」で
「グループ」で「有名な出石そばのご賞味」がメイン、
永楽館見学は+αのようでした。
私のような永楽館「だけ」を目当ては多分少数派、
でした。

目的地の永楽館は、バス停からも駐車場からも程近い
場所。
劇場前には、映画の中に登場した役者、一座名での
幟が翻り、気分は映画の世界へ(笑)
入口すぐに映画の巨大ポスターやサイン色紙、原作本。
右手には終わったばかりだった今年の永楽館歌舞伎の
「憚乍(はばかりながら)口上」と着到番もありました。

場内は客席や通路は勿論、舞台や花道の上に上がるのも
可、また舞台の脇や裏側にある、化粧部屋や風呂、
更に「国宝」で使われた小道具を中心に、楽屋が再現
されていましたし、舞台下・奈落にある、回り舞台を
回す仕組みも見られました。
個人的に密かに楽しみにしていたのが、やはり歌舞伎
劇場ならではの花道
すっぽんのある七三あたりに立って、役者気分で
舞台や揚げ幕を見込んだり、気もちだけ見得を切って
みました(笑)
客席構造は金丸座と同じで、一階は平場の枡の座蒲団
席、二階は二三列、木製ベンチに座蒲団の置かれた
椅子席。
舞台の近くに座って、役者の汗や息づかいを生で
感じるのも醍醐味ですが、観るなら2階席が楽そう
(そもそも広くないので2階でも全然近い)

劇場なのに、建物自体も仕掛けを楽しめるアトラク
ションでしたし(笑)、映画のシーンを思い出しながら
妄想もできて、劇場だけで1時間余り、ずいぶん楽しま
せて頂きました。

劇場を出て、遠目で小さい割に気合の入った石垣が
気になっていたので出石(有子山)城跡へ。
坂本の穴太の石組を見たり、徳島城のかっこいい
石垣類を見てから最近、石垣はちょっと見過ごせません(笑)
下から眺めた分ではそんなでもなかったのですが、
近づくとそそりたつ城壁は、なかなかの迫力で、
最初は上まで、と思ったのですが、何しろ自然のままの
景観で、石段に手すりもなく、雨上がりもあって
斜めになったり狭い箇所もあり、最初の踊り場まで
登っただけで呆気なくリタイア。
後から調べたら、山頂まであと1時間は軽くかかる、
自然豊かなハイキングコースだったようで、寧ろ早々に
諦めて良かったです。

結局、蕎麦は勿論、お土産類にも手を出さず、乗って
来たのと同じバスで豊岡へ戻り、電車で大阪に出ました。

観劇ではなかったですが、映画のヒットのおかげで、
ただ見学するより格段に楽しめて良かったです。
因みに、ここで歌舞伎がかかる時は京都から直行バスも
出るそうですが、かなり時間もかかりそうですし、
日帰りは大変なので、前泊か後泊が妥当そうですが、
どこに泊まるのか(福知山?舞鶴?城崎?)?ちょっと本気で来年は考えようかしら

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2025.11.04

爽秋文楽公演(第三部)を観る

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国立文楽劇場
いつもは公演のない時期の文楽劇場公演。
案の定、万博がらみだったそうで、実際、インバウンド
らしいお客様が多数で、日本人が逆に目立つほどでした。
私が観た部は「重の井子別れ」と「日高川」
他の部は「心中天網島」と「曽根崎心中」。
「重の井」は名乗り会えない親子別れもの、「心中もの」は
「ロミジュリ」や「マイヤーリンク」も心中、と言えば
そうで、心情がある程度理解できれば海外の方でも
多分OKでしょうが、「日高川」は、本来なら日本の
古典芸能における「道成寺もの」のバックグラウンドの
理解も必要な気がしますが、お姫様の顔変化ビジュアルが
派手(ガブになるのはなかなかインパクト)なのが
ポイントかも

「重の井子別れ」
正式な外題は「恋女房染分手綱」
今では今回のように「重の井子別れ」ばかりが上演さ
れますから、今更、言い替える必要もないのですが、
物語の全体像としては定番のお家騒動&仇討ちもの、
のカテゴリで、写楽の最も有名な第一期の大首絵
シリーズは、この作品の登場人物が(と役者)モデル。
一応、この場の主人公・重の井も描かれていますが、
特徴ありすぎる目鼻立ちばかり目立つ、時代劇に
出てくる世話好きの大家さんみたいに描かれた自分を、
「美人」で有名だったと言う、モデルの半四郎さんが
ご覧になっていたら、どんな気持ちだったやら(汗)
(因みに同じシリーズで派手な衣装のいかにも「成田屋」に
描かれた竹村定之進は、重の井の父親。モデルは勿論、
市川鰕蔵)
丁度、先日の「べらぼう」で、蔦重が、女性をリアルと
言ってカリカチュアライズして描いた歌麿に、「ここまでリアルにしてほしい訳じゃない」
って言ってた、まさにその感じで、なので私は現時点
「べらぼう」における「写楽」は、歌麿の別ジャンル用
筆名、有名人の「裏アカ」説を採ると見てます。
因みにこの芝居がヒットしたのは、この写楽の大首絵
シリーズがバズったおかげでもあるそうですが、
現在は文楽でも「子別れ」だけ、なので、江戸兵衛
(写楽では懐手の有名なポーズの人)や、対する、
ひょろひょろでビビりながら刀を半分抜きかける
奴一平とかを舞台で見たことがなく、最近NHKの情報
番組見るまで、浮世絵の題材がこれだと気が付かなかった
くらいです(遅い)
「日高川」も文楽では「あ、またか」な大定番ですが、
歌舞伎では舞踊で時々しかかからない、と、今回、
私にはどちらも「文楽じゃないとを、な理由に納得」の
鑑賞体験になりました

「重の井子別れ」は、「先代萩」「熊谷陣屋」などと同じく、
親と(幼)子の別れを描く作品として馴染みありますが、
歌舞伎で見た記憶が多分ありません。
今回文楽で見て察したその理由は、実質この場の
キーマン・三吉と言う役が、歌舞伎ではかなりキャス
ティングが難しいからでないかな、と。
ある殿様の家で殿様の令嬢が嫁入りする事になり、
集めたフリーの馬子の中に偶々いた少年が、禁止の
社内恋愛で産んで、仕事のために手放した実子・
三吉と気がつく重の井
ませていて、馬子の一人親方で(つまり自営)稼いで
いると自慢し、未成年なので現行だと法律違反ですが、
意気がって煙管をスパスパする設定は、人形なら
ともかく人間がやるとちょっと、でしよう。
(昔なら「PTAが飛んで来る」(笑))
何より、重要な台詞は殆ど三吉くんが喋り倒すので、
歌舞伎の子役では手に余り、と言って、成人の役者
では子どもならではの無垢さと残酷さのバランスが
難しい
その点、文楽は人形だし、語りは皆さん声色?使い
分けのプロなので、年齢に左右されないので、できる
と言う差、とみました。
重の井は息子に気がつくも、別れて自活してる息子
(の仕事)の事を周囲に知られて、令嬢の名誉に傷が
つくと、塩対応
一方、事実を聞かされた三吉くんは生活がかかっても
いるので
「ママの口添えでなんとか僕の待遇改善とりなして」と
堂々言えたりする強心臓
しかし結局、三吉は「大人の事情」を飲み込んで泣き
ながら馬子歌を歌って去るところが、太夫の聴かせ
どころ。
「先代萩」「熊谷陣屋」のように目の前で死なれる訳では
ないので、「そこまでしなくてもっ」にはならない
ですが、嫁入りを「嫌」と言え、また、双六くらいで
機嫌よく「行くわ~」と前言を翻す、自由のあるわが
ままお嬢様のために、実子を突き放すってどうなの、
とは思いながら、勘十郎さんの遣う重の井の、ややも
するとダダ漏れになる愛情をひたかくす仕草に泣け
ました。
こう言うのを究極のライフワークバランスと言うの
でしょうか、
因みに物語は、最終的に嫌疑は晴れてめでたしめでたしに
なるそうですが、ここまで全体像が見えにくい芝居も
珍しいかも。

「日高川」はいつもながら、情念で清姫ちゃんの顔が
いつ「ガブ」になるのかだけを「来るぞ来るぞ」ってなる
感じですが(笑)、何回見ても気がつけば「なってる」
のが人形遣いさんのすごいところ
これだって、人間ではさすがに一瞬で顔は変わらない
ので、文楽ならでは。

ならでは、を存分楽しませて頂きました

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