爽秋文楽公演(第三部)を観る
いつもは公演のない時期の文楽劇場公演。
案の定、万博がらみだったそうで、実際、インバウンド
らしいお客様が多数で、日本人が逆に目立つほどでした。
私が観た部は「重の井子別れ」と「日高川」
他の部は「心中天網島」と「曽根崎心中」。
「重の井」は名乗り会えない親子別れもの、「心中もの」は
「ロミジュリ」や「マイヤーリンク」も心中、と言えば
そうで、心情がある程度理解できれば海外の方でも
多分OKでしょうが、「日高川」は、本来なら日本の
古典芸能における「道成寺もの」のバックグラウンドの
理解も必要な気がしますが、お姫様の顔変化ビジュアルが
派手(ガブになるのはなかなかインパクト)なのが
ポイントかも
「重の井子別れ」
正式な外題は「恋女房染分手綱」
今では今回のように「重の井子別れ」ばかりが上演さ
れますから、今更、言い替える必要もないのですが、
物語の全体像としては定番のお家騒動&仇討ちもの、
のカテゴリで、写楽の最も有名な第一期の大首絵
シリーズは、この作品の登場人物が(と役者)モデル。
一応、この場の主人公・重の井も描かれていますが、
特徴ありすぎる目鼻立ちばかり目立つ、時代劇に
出てくる世話好きの大家さんみたいに描かれた自分を、
「美人」で有名だったと言う、モデルの半四郎さんが
ご覧になっていたら、どんな気持ちだったやら(汗)
(因みに同じシリーズで派手な衣装のいかにも「成田屋」に
描かれた竹村定之進は、重の井の父親。モデルは勿論、
市川鰕蔵)
丁度、先日の「べらぼう」で、蔦重が、女性をリアルと
言ってカリカチュアライズして描いた歌麿に、「ここまでリアルにしてほしい訳じゃない」
って言ってた、まさにその感じで、なので私は現時点
「べらぼう」における「写楽」は、歌麿の別ジャンル用
筆名、有名人の「裏アカ」説を採ると見てます。
因みにこの芝居がヒットしたのは、この写楽の大首絵
シリーズがバズったおかげでもあるそうですが、
現在は文楽でも「子別れ」だけ、なので、江戸兵衛
(写楽では懐手の有名なポーズの人)や、対する、
ひょろひょろでビビりながら刀を半分抜きかける
奴一平とかを舞台で見たことがなく、最近NHKの情報
番組見るまで、浮世絵の題材がこれだと気が付かなかった
くらいです(遅い)
「日高川」も文楽では「あ、またか」な大定番ですが、
歌舞伎では舞踊で時々しかかからない、と、今回、
私にはどちらも「文楽じゃないとを、な理由に納得」の
鑑賞体験になりました
「重の井子別れ」は、「先代萩」「熊谷陣屋」などと同じく、
親と(幼)子の別れを描く作品として馴染みありますが、
歌舞伎で見た記憶が多分ありません。
今回文楽で見て察したその理由は、実質この場の
キーマン・三吉と言う役が、歌舞伎ではかなりキャス
ティングが難しいからでないかな、と。
ある殿様の家で殿様の令嬢が嫁入りする事になり、
集めたフリーの馬子の中に偶々いた少年が、禁止の
社内恋愛で産んで、仕事のために手放した実子・
三吉と気がつく重の井
ませていて、馬子の一人親方で(つまり自営)稼いで
いると自慢し、未成年なので現行だと法律違反ですが、
意気がって煙管をスパスパする設定は、人形なら
ともかく人間がやるとちょっと、でしよう。
(昔なら「PTAが飛んで来る」(笑))
何より、重要な台詞は殆ど三吉くんが喋り倒すので、
歌舞伎の子役では手に余り、と言って、成人の役者
では子どもならではの無垢さと残酷さのバランスが
難しい
その点、文楽は人形だし、語りは皆さん声色?使い
分けのプロなので、年齢に左右されないので、できる
と言う差、とみました。
重の井は息子に気がつくも、別れて自活してる息子
(の仕事)の事を周囲に知られて、令嬢の名誉に傷が
つくと、塩対応
一方、事実を聞かされた三吉くんは生活がかかっても
いるので
「ママの口添えでなんとか僕の待遇改善とりなして」と
堂々言えたりする強心臓
しかし結局、三吉は「大人の事情」を飲み込んで泣き
ながら馬子歌を歌って去るところが、太夫の聴かせ
どころ。
「先代萩」「熊谷陣屋」のように目の前で死なれる訳では
ないので、「そこまでしなくてもっ」にはならない
ですが、嫁入りを「嫌」と言え、また、双六くらいで
機嫌よく「行くわ~」と前言を翻す、自由のあるわが
ままお嬢様のために、実子を突き放すってどうなの、
とは思いながら、勘十郎さんの遣う重の井の、ややも
するとダダ漏れになる愛情をひたかくす仕草に泣け
ました。
こう言うのを究極のライフワークバランスと言うの
でしょうか、
因みに物語は、最終的に嫌疑は晴れてめでたしめでたしに
なるそうですが、ここまで全体像が見えにくい芝居も
珍しいかも。
「日高川」はいつもながら、情念で清姫ちゃんの顔が
いつ「ガブ」になるのかだけを「来るぞ来るぞ」ってなる
感じですが(笑)、何回見ても気がつけば「なってる」
のが人形遣いさんのすごいところ
これだって、人間ではさすがに一瞬で顔は変わらない
ので、文楽ならでは。
ならでは、を存分楽しませて頂きました
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