原作はモノローグ文体に慣れず途中で離脱、先行した
歌舞伎版も見逃し、映画に合わせて?先月末に「歌舞伎
オンデマンド」で再配信があり、これは逃せまい、と
映画を見た後に漸く見たので、映画時点は、ほぼ知識
(ネタバレ)なしで拝見しました。
映画は、証言集だった原作を、柄本佑さん演じる
「素人探偵」総一郎が、観客に一番近い目線の、謎解き
ナビゲーターとなって、関係者の証言を引き出して
「あだ討ち」の真実に近づくと言う構成にしていて、
冒頭に何も説明なしで繰り広げられる「仇討ち」が、
後半に見ると全く違った風景が見えてくる、と言う
「カメラをとめるな!」と似た趣向
「舞台裏」を見せる意味では「ノイゼスオフ」や「ショー
マスト ゴーオン」っぽかったです
総一郎が話を聞いていく中で、一番関係者から遠い、と
思われた人物の一言を転換点にして、話は森田座に
関わる人たちによる「あだ討ち物語」の仕掛けが明かさ
れる構成は、見ながら何となくそうかな、と思い
ながらも、更に深い思いなどが描かれる事で、ラスト
まで2時間、緩急自在で、集中が途切れる事なく
見られたのは良かったです。
また、総一郎が江戸で謎解きをするのが、「あだ討ち」の
1年半後と言う設定なので、冒頭とラスト以外菊之助は
回想でしか登場せず、「TEAM森田座」のおじさん
アベンジャーズをメインに据えた、「演劇屋の矜持と
アイデアと心意気」を見せる作品でした
「アベンジャーズ」皆さん良かったのですが、特に、
なんで「下男」役なのかと思っていた北村さんの、
「いかにも、な悪党」を必死にやるギャップ?とか、
これまで比較的硬派・武闘派タイプの役柄が多かった
加藤和也さんの、繊細で柔らかい、女形で衣装係の
ほたる役が印象的でした。
また、菊之助の母役の沢口さんが「科捜研」味なく(笑)、
しっかりしたお武家の後家さまぶりも新鮮でした。
舞台(映像)版は、出来事を完全に時系列に並べての
メイキング「あだ討ち」な分、謎解きの面白みは若干
映画版より薄かったですが、菊之助(染五郎くん。
若干ややこしい)の成長と、小道具方の「小太郎の首」
話など、歌舞伎演目を知っている客が多い前提での
エピソードや台詞が、そこここにさしはさまれていて、
楽しめました
(勿論!菊之助母上役の芝のぶさんの艶やかさも!)
舞台を生で見られなかったのは惜しかったですが、
映画の直後に映像を見られた事で、比較でき、それは
それでおもしろく感じました。
特にポイントになる二つの殺人、作兵衛による菊之助の
父の不意討ち、と、菊之助の作兵衛仇討ちの扱い方が、
映画と舞台それぞれらしいやり方で、舞台の作兵衛
(中車さん)と菊之助父(高麗蔵さん)のまさに「お芝居」
ぶりが絶妙でした
(映画は「あくまで見せない」でいく「カメ止め」式)
「国宝」と同じく歌舞伎の世界を舞台にしながらも、
「国宝」が人間の「業」をこれでもか、と凝縮していた
一方、こちらは、「えんげき」の力を信じる人たちに
よる、人間の再生が描かれていて、爽やかな気持ちで
映画館を出られました
脚本・監督は、「スローな武士にしてくれ」「令和元年
版怪談牡丹燈籠」「忠臣蔵狂詩曲No.5中村仲蔵出世階段」
などで、時代劇や歌舞伎の世界を扱った実績のある
源孝司さん
ただ、今作については個人的には、同じ源さん作品
でも、人間の「思い」が詰まったロードムービー
「グレー
スの履歴」に似たテンポ感、疾走感を感じました
その後の菊之助と「森田座アベンジャーズ」の続編とか
ちょっと見てみたいですね