« 大阪松竹座「御名残五月大歌舞伎」を観る | トップページ | 「風、薫る」先週から「復帰」(笑) »

2026.05.26

シェイクスピア強化月間(笑)(1)彩の国さいたまシェイクスピアシリーズver,2「リア王」を観る

Cid317d44be3c424273a223d28fc54ea67eRose3Cid1de82d2cbe05456494196113863ccb1fCid0cb87865723e4375b32f9e5b343d836d

今月は、首都圏でシェイクスピア祭
しかも、さいたまで「リア」、日生劇場で「ハムレット」、
PARCO劇場で「リチャ3」と、どれも上演頻度の高い
作品ばかり。
勿論?コンプリートしてきました(笑)

まずは、さいたまで、鋼太郎さんの「リア」。
「リア」自体もここ最近、首都圏では「祭」状態で、
PARCOで段田さん、横浜で木場さん、新宿Milano-zaで
大竹さん。
そろそろ鋼太郎さんもやるだろうな、とは思っていた
ので、満を持して大トリの登場、と言う感じでしょうか。
(夏には芝翫さん、秋には内野さんもなさる予定)

ただ、鋼太郎さんが芸術監督になってからの鋼太郎
さん演出版「さい芸シェイクスピア」シリーズは、
個人的には「ヘンリー五世」と、「ヘンリー八世」以外は
蜷川さん版の時のようにリピートする気になれない
作品(演出)が続いています

「~五世」については、生前、蜷川さんが演出された
「~四世」の続編的位置付けだったこともあり、鋼太郎
さんにも御大への遠慮?があったのか、蜷川さん
カラーが強かったですし、「ヘンリー八世」は、完全な
台詞による政治椅子取りゲームで、阿部さん演じる
ヘンリーを取り巻く、強面オヤジたちの権謀術数の
罵りあいが面白かったのは、ひょっとすると、その
内容から、鋼太郎さんお得意の叫び、剣を振り回し
走り回る劇画的演出に持ち込めなかった?怪我の功名?(笑)

しかし、それ以外は、鋼太郎さんご自身の劇団(演出)版
から傾向で、比較的テキレジ多め、ご自身が役者さんな
だけに「役者が乗れるシーンはモリモリ」演出。
勿論、蜷川さんも巨大血糊を落とす、とか、巨大福助
登場させるとか(笑)「開始3分で観客を引き込む」
目論見で、インパクト大な演出でしたが、鋼太郎さん
版は、演技過剰演出で、私の好みとかなりずれて
いました
何より、シェイクスピア役者・鋼太郎さんを見たい
観客としては、演出を兼ねるために、肝心の「役者」
鋼太郎さんへの「演技指導」が後回しになっている感じで、
鋼太郎さんの良さが最大限まで引き出されていない、
詰めの甘さや妥協がある気がしてましたので、今回も
演目発表時は、ご自身演出だと、2幕までこちらが
持たず途中退散か、と不安だったのですが、幸い?
今回は演出を長塚さんに託して、役者に専念されると
知り、ちょっと安心(期待)して伺い、結論から言えば、
期待通りの「シェイクスピア役者・吉田鋼太郎」を堪能
させて頂きました

5月の与野本町駅前は、バラが楽しみです。
シリーズの「ヘンリー6世」で、白薔薇(派)赤薔薇
(派)の対立が物語に登場するので、シェイクスピアを
上演する劇場のある駅にぴったり。
今年は丁度満開のタイミングでした

観劇日は、ちょうど蜷川さん10年目の命日。
もう10年、とは本当に早いものです

奥行きが特徴の舞台には書割もなく、プレイエリア
には土俵状に丸く土が盛られただけ。
途中、椅子やあばら家など最小限のアイテム以外は
なく、装置の助けがない分、役者のチカラが引き立つ
舞台でした

家庭内介護が社会問題として顕在化した令和の今と
なっては、ゴネリル&リーガンは意地悪姉妹、コー
ディリアがシンデレラ的な不幸な立ち位置、と言う
単純な構図ではない事が、400年経って改めて証明
された感じ。
確かに二人とも父親に対して冷酷だし、寒い野外に
放置するとか酷いとは思いますが、 おそらく姉妹は
これまでも、散々ワンマンなパパ社長のワガママに
随分我慢してきたはず。
しかし相続となれば話は別。
これまでの我慢が少しは報われるならまだしも、
リアパパ、
「本当ならコーディリアに全部相続させたいな~」な
本音をうっかり漏らしてしまい、流石にお姉様たちが
カチン、と来ても無理はない。
しかも、それぞれに家庭と統べる領地かある訳で、
いくら親が
「財産分与し(てやっ)たんだから」
と恩を売ってきたからと言って、
「今後は1ヶ月交替でそっち持ちで世話になるから。
あ、部下100人も連れていくから、よろ」
とか言われても、どうぞどうぞ、とは、流石に虫が良すぎ。
お姉ちゃんたちに物凄く同感してしまいました

更に彼女たちの逞しいのは、パパが駄目ならそれぞれの
夫、その夫も当てにならないと見限るとエドマンド、と
金と権力の匂いに非常に敏感なところで、次々と
サバイバルのためのフックを掛け替えますが、結局、
策士策に溺れ、相討ちと言うのは皮肉。
また、三姉妹それぞれの夫、エドマンドとエドガーの
兄弟、そして、エドマンドとエドガーの父親である
グロスター伯と、ケント伯と言う、リアの側近2人と
対比する何組かの人物たちが、みな等しく生き生きと
存在し、自身の思惑や決断、あるいは成行きで、
ラストに行きつくゴールが、まるでアミダくじの
ように分岐し、絡み合い、気がつけば果てしなく
離ればなれになってしまっている、人生ゲームの
ような群像劇であることが今回の発見でした

まあ「おいしい役」である筈のケント伯の山内さんの、
雰囲気はともかく、セリフお化け(鋼太郎さん、山西
さん、藤原くん)に囲まれると、どうしても声がくぐもり
セリフが聞き取りにくかったのは惜しまれましたし、
逆に、藤原くんのエドガーは、主人公レベルの力の
入りぶりで(笑)、役柄として難しいとは言え、もう
少しチカラを抜いて良かった気がする主役芝居。
リーガンの松岡さんは、先般「欲望~」でも篠井さん
演じる姉ブランチに振り回され、複雑な感情で関わる
妹ステラを魅力的に演じられましたが、今回も姉
ゴネリルとの共闘から、エドマンドを巡る対立など、
じわじわと見せる存在感が素敵でした。
身を偽ってリアを守護に徹するケント伯に対して、
息子の真意を見抜けず、不幸にズルズルと引き込まれる
グロスター伯は、子どもの真意を見抜けないお言う点
で、リアとの合わせ鏡ですが、新国立での「エンジェルス・
イン・アメリカ」でのロイ・コーン役が今でも印象的な
山西惇さんが、とにかく声が素晴らしく、賢臣ですら
身内に呆気なく足を掬われる、ままならなさが、
絶望的に素敵でした

そして、鋼太郎さんのリア
まさに正攻法のリアで、こう言う鋼太郎さんを見たかった!
THANK YOU、長塚さん!でした
叫ぶし、無茶苦茶に動き回るけど、勢いのままありったけ、
にならずに、叫ぶにも走り回るにもそれだけの理由や
動機が明確に見えたのが素晴らしかったです
長塚さんは自作品の演出もなさいますが、建て替え
前のPARCOでの、大竹さんと白石さんと言う二大
怪獣女優(誉めてます)ががっつり組んだ「ビューティー・
クイーン・オブ・リナーン」 とか、個人的には翻訳
戯曲の演出の名手、だと思っていて、今回も期待通り、
鋼太郎さんと言うモンスターをリミット一杯振り
切らせながら、国と言うマクロの視野と、家族と言う
ミクロの視点が見事にバランスよく両立された、
現代的な「リア」でした

次回は、11月「間違いの喜劇」
とにかく蜷川さん演出の小栗くん版と、萬斎さん出・
演出の「まちがいの狂言」が素晴らしすぎたので、
余り期待せずにおきます

|

« 大阪松竹座「御名残五月大歌舞伎」を観る | トップページ | 「風、薫る」先週から「復帰」(笑) »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。