国立劇場文楽公演「生写朝顔話」「伊勢音頭恋寝刃」を観る
国立劇場がノマドワーカーしているお陰で?、北千住
にもここ1~2年行く機会が増え、最近漸く、場所、
アクセス、そして前後のお楽しみも判ってきました
今回は1、2部が、いつもは「大井川の段」しかやらない
ものだと思っていた(笑)「生写朝顔話」の通し、そして
3部が「伊勢音頭~」のハイライト「古市油屋の段」
3部は玉男さんの貢でしたが、個人的には玉男さんは
色男や心中に走る商家のぼんぼんより、やはり百戦
錬磨の武将や、歴史上の苦悩する英雄の方がお似合いで、
刀を振り回すだけではちょっと物足りないか(笑)
文楽では「青江下坂」は名刀だけど表立って妖刀設定が
なく、貢が意思を持って振り回している感じがする
のも一因かもで、散々殺しておいて、「お家再興成って
めでたしめでたし」はちょっとだけ後味が良くない。
「盟三五大切」の源五兵衛が実は赤穂義士の不破で、
言うラストとちょっと似た感じ
歌舞伎だと、他にも万野のキャラクターとか、お鹿も
含めて工夫があるので違和感が薄まっているのかも
ですし、やはり歌舞伎や役者と言う人間が演じるのが
一番の嫌さ回避ポイントなのかも
さて「生写朝顔話」
全体像が見えて判ったのは、これ、昭和の典型的な、
かなり甘口の「すれ違い」メロドラマの源流で、かつ、
いまなら「聖地巡礼」になりそうな、東西の名所を
織り込んだロードムービーでした。
例えば冒頭の出会いの場面は、つい先日、私も偶然
行ったばかりの京都の宇治川。
ほかに明石、浜松、島田に大井川と、何故かみな
川や海の近くですが、おそらくは江戸時代の観客も
宇治橋や島田宿に行った時には「ここなのね~」と
偲んだり、船に乗ってなりきったりしたかも(笑)
運命の一目惚れ、取り交わす象徴的アイテム、無理
矢理の別離、音信不通、誤解、ぎりぎりのすれ違い、
病気あるいは金銭的困窮による落魄、善意の第三者の
手助け、奇跡の再会、困難を乗り越えての恋の成就、
めでたしめでたし(笑) のてんこ盛り。
かつ、主人公が最後まで生きていて、犠牲者が最小限
なのは文楽には珍しいかも(笑)
スマホで24時間繋がれる令和の今となっては、すれ
違い自体が滅多には起こらない訳で、最早、ファン
タジーの世界線にしかなりませんが、駅の伝言板に
「先に行ってる」とかがせいぜいで、有楽町と日比谷の
同じ番号の出口で、延々と相手の来ないのをイライラ
して待ち、待ち合わせを諦めて結果現地で合流した
相方と大喧嘩した記憶のある(笑)昭和の人間には、
まだ感覚はぎりぎり理解可能(笑)
しかし意外にも、和生さんの遣う阿曽次郎は存在感が
薄くて、ちょっと残念。
ヒロイン深雪と深雪に献身的につくす乳母・浅香は
日程前半後半で、簑二郎さんと勘彌さんが交替で
遣われていましたが、勘彌さんの浅香が激しい動き
でも崩れず、自分が話していない時も反応したり、
動作をしていてナチュラルでした
(「菅原~」の時の八重の長刀遣いも良かったし!)
何よりは勘十郎さん。
物語一番の三枚目キャラ、萩の祐仙を全身を使って
自由自在に操り、客席は笑いが絶えず。
もともと、人形と一緒に宙乗りし、狐と一体化して
空を飛ぶ勘十郎さんに、不可能はなさそうですが、
舞台で遣う用に拵えたお人形を一度だけ触らせて
いただいた事がありますが、支えるだけでもなかなかな
重みのある人形を複雑に操作し、しかも三人息を
合わせて見せる、それを忘れる程の 自由自在さは凄い
見事な操演と、芝居の中での祐仙の小者ぶりのギャップが
なんとも、でしたが、この手の正統派メロドラマは、
主人公カップル(死語か)より、二人を取り巻く敵役や
かき回すキャラクターの個性がポイントですし、
「大井川~」だけでは絶対に登場しないキャラクター
なので、楽しませて頂きました。
何より、「大井川の段」に至る、波瀾万丈?が理解
できたのが収穫で、これで以降「大井川~」だけの
「見取り」で見るときも、ちょっとだけ経緯がワカる気が
一番わかった事は、ここまで主人公2人の行動力が
空回りするのと、運の悪さが重なると、なかなか
共感しにくい、と言うこと。
経緯わからず、深雪にラストに起きる奇跡だけを
良かったねーと思う方が良いのかも(笑)
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