« シェイクスピア強化月間(笑)その2「ハムレット」を観る | トップページ | 国立劇場文楽公演「生写朝顔話」「伊勢音頭恋寝刃」を観る »

2026.06.04

シェイクスピア強化月間?(3)「リチャード三世」を観る

Richard3

PARCO劇場

ラトクリフ。
森新太郎さん×吉田羊さんによる、シェイクスピア
シリーズ「リチャード三世」で、私が一番印象に残った
のが、意外にも愛希れいかさんが演じたこの人物。
そもそもバッキンガム、リッチモンド、マーガレット、
アンと言った名前のある人物から、市長、枢機卿、
市民など、肩書きだけで語られる人物まで、矢鱈と
登場人物の多い「リチャ三」なため、ラトクリフ、と
言っても基本的には「誰?」です(笑)が、ティレル、
ケイツビーと並んで、リチャードの手先となって
汚れ仕事をしたり、ただの使いっ走りになったりと、
まあまあ報われない役割の人物で、だいたいのカン
パニーではその他大勢、文楽で言えば、一人遣いの
ツメ人形の役。
それをアンも演じる役者さんが演じるのもなかなか
珍しいのですが、今回印象に残った理由は、幕切れ
直前に、無防備な状態のラトクリはが、リチャードに
呆気なく殺されるシーンがあったため。
そもそもそんな場面あったかしら?レベルだったので、
見終わってから直ぐに、松岡先生訳版の戯曲を確認
したら、確かに結構最後の方5幕3場まで名前は出てくる
ものの、259ページを最後に突然登場しなくなる。
しかし、リチャードが殺した、とまでは指定がなく、
おそらくは森さんが読みといた上での演出。
確かに「死」を見せる事により使い捨てられた感じが
強くなりましたし、この時点で既にリチャード自身
敗戦の自覚はあったはずで、巻き込んできた部下に
永遠の任務終了を与えたか、自殺の一部なのかもとか、
考察していました。

蜷川さんもト書き、セリフには忠実が有名な方でしたが、
書いていないことは自由、と、様々な工夫をされて
いたのを思い出しました

シェイクスピアの戯曲はそもそもセリフが多く、
従って情報が多い。
日本では演出家が狙い、あるいは尺の都合などで、
無くても前後の整合性のつくもの、あるいはカット
した登場人物に関するもの、日本人観客に馴染みの
薄い、例えば宗教的、あるいは歴史的人物に言及する
セリフをカットしていくと、大体毎回同じ箇所が
カットされるのですが、時々、耳馴染みのないセリフが
語られるので、終わってから戯曲で確認すると、
当然のようにちゃんとある、と言う事が結構あります
先月のさいたま芸劇での「リア」でも、山西さん演じる
グロスター伯(リチャード三世もそう呼ばれるので
ややこしいが)が、ゴネリル、リーガンとその夫たちに、
目を潰される直前の場面で、彼らに
「私の賓客であることをお忘れなく、非道なことは
お止めください」
と言うセリフ、え、こんなセリフ言ってたかなぁ、
と思って、やはり後から松岡先生訳を見たら、ちゃんと
ある(当たり前)
ただこのセリフ、耳で聞いたときは、実はリーガンや
その夫のコーンウォールに対して、
「(あなたたちは)私の居城に滞在する客なのだから、
客としての品格節度を持ってほしい」
と諫言しているのかと勘違いしていて、
「あれ、姉さんたちは招待客だったか?」
と思ってしまい、後から
「(リアは)私の客なのだから、(他人の客に)手荒な
真似をするな」
と言っている事に気がつきました
全く主語抜きで文章が成り立ってしまう日本語、
トラップ多めです

さて、改めて森新×羊さんのリチャード三世です

インタビューを読むと、もともと三部作構想で、
今回が「完結編」だそう。
ブルータスの正義感が身を滅ぼしていく「ジュリアス・
シーザー」は、陰謀だらけの政治家たちを女性キャストで
演じることで、政治家=男性、がアンコンシャス
バイアスであることと、政治権力闘争が社会に普遍的な
ことと判る、画期的な「大発明」のお芝居で、これは
期待、次は、政治家の家庭問題、主人公は単なる
マザコンか!をあぶり出す(笑)「コリオレイナス」が
良いなぁ、と期待しましたが、何故か大定番にして
難易度Maxの「ハムレット(Q)」(笑) に。
羊さんの明瞭なセリフは素敵でしたが、何処か物
足りなく終わり、今回は「リチャード三世」。
今度こそ羊さんならではが見られるか?、を期待して
伺いました。

しかし「ジュリアス~」のブルータスとは真逆の、
ただでさえダークキャラのリチャードに、身体的
表現をつけて、ノーブルな顔立ちの羊さんがやるのは、
「美人なのにエグい」には見えましたが、個人的には
寧ろすべてやらずに、セリフだけで「美人」がどこまで
「悪党」になりきれるのチャレンジの方、の方がより
エキサイティングだった気はしました

この舞台でおもしろい試みだったは、幼い王子たちの
役を役者が演じるのでなく、旧・こどものための
シェイクスピアシリーズのように、人形で登場させ、
人形遣いの専門スタッフでなく、メインキャストを
演じる役者さんたちが人形を操り、セリフも言って
いたこと。
「リチャ三」における王子たちは、身内でありながら、
リチャード自身の王権の最大の脅威だが、そんな中
例えば3幕1場で王子たちが、
「雑草は良く伸びる」
とリチャードに対する皮肉ともとれるセリフを言ったり、
リチャードの背中に乗ろうとするシーンがあり、
小柄な大人の俳優さんがなさってさえ、リチャードの
背中に乗る、は難易度高く、確かに人形が合理的でした

何よりも、情報がやたらと多いこの芝居を、比較的
少人数で演じるこのカンパニーをサポートするためか、
場面ごとに、舞台上方に、ちょうど文楽劇場のように
字幕が出たこと。
しかも「忠臣蔵」の六段目「勘平切腹」や、「菅原~」の
「桜丸切腹」のように、予め起きる事を「ネタバレ」
するようなリードでした
まあ、沙翁作品、とりわけ「リチャ三」にネタバレも
ないんですけど(笑)、そもそも登場人物が多く、
人間(血縁)関係が煩雑な芝居なのを、そこまではっきり
見た目を変えないで複数人が何役もしたために、
複雑さが結局解消されなかった(少なくとも私には)
対策だったのか?
更にその字幕のためなのか、元からその高さでやると
決めていて字幕がそこに出たのか不明ですが、舞台幕が
オープニングではリチャードの下半身しか見えない
高さから始まり、リチャードが八分くらいまで押し
上げて進行し、ラストでやっと全部上がりました
意図はちょっと不明。
いつも明確なところが大好きな森さんの演出にしては
ちょっとモヤっと、でした、
結局、三部作は残念ながら最初の「ジュリアス~」が
一番羊さんがなさった意味があったな、というのが
個人的結論でした
(シルビア・グラブさん、松本紀保さんと並びも凄かった
ですけど)

因みにこちらの舞台で、初めて新しいパルコステージの
チケットシステムを利用しましたが、申込サイトと
電子チケット表示用サイトが違うのが凄く煩雑。
色々事情もありそうですが、個人的にはシンプルに
紙チケットが出せるか、電子チケットでも同じサイト
内で完結できるのが気が楽です
(たまに劇場入口の電波が悪くてイライラしたりしますし)

と言う訳で、5月の「シェイクスピア強化月間」?は、
やはり、Theシェイクスピア俳優、鋼太郎さんに
舞台を思う存分、のたうち回らせた(笑)長塚さん演出
「リア」が一番印象的でした

|

« シェイクスピア強化月間(笑)その2「ハムレット」を観る | トップページ | 国立劇場文楽公演「生写朝顔話」「伊勢音頭恋寝刃」を観る »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。